レポート提供:ニッセイアセットマネジメント(2019年8月29日)

  • 米中貿易摩擦に端を発した世界景気の不透明感などの影響が、欧州の経済大国ドイツにも波及。
  • ドイツ連邦銀行は月次報告書において7~9月期もマイナス成長となり景気後退に陥る可能性を警告。
  • 財政の健全性を重んじるドイツが、適切な時期を見極め財政出動を行うか否かが注目される。

米中貿易摩擦をめぐる世界景気の不透明感に加え、英国が合意なき欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に踏み切る可能性が濃厚となるなか、これらの影響が欧州最大の経済大国であるドイツにも波及しつつあるようです。

2019年4~6月期の実質国内総生産(GDP:速報値)は前期比マイナス0.1%となり、3四半期ぶりのマイナス成長となりました(図表1)。また、8月19日にドイツ連邦銀行(中央銀行)が公表した月次報告書では、7~9月期に2四半期連続のマイナス成長となり景気後退(リセッション)に陥る可能性があると警告しています。ドイツは欧州のGDPの約20%(*)を占めることから、ドイツ経済の減速は欧州経済に影響を及ぼすことも懸念されています。

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【図表1】4~6月期のGDPは3四半期ぶりのマイナス
ドイツGDPの推移
※ドイツGDPの推移
出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ドイツは、GDPに占める経常黒字の割合が約7.4%(*)と他の先進諸国と比べても高い国です。また、同国の輸出の中心である製造業が国内産業の中心であり、経済成長を支えているため他の欧州諸国に比べ、米中貿易摩擦の影響を大きく受けていると考えられます(図表2)。

【図表2】他国に比べドイツの製造業は落ち込みが顕著
ユーロ圏諸国の製造業PMI(購買担当者景気指数)の推移
※ユーロ圏諸国の製造業PMI(購買担当者景気指数)の推移
出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

欧州中央銀行(ECB)は欧州経済の景気下支えのため、市場では9月12日の理事会において追加の利下げや量的緩和政策の再開などのさらなる追加緩和に踏み切るものと見られています。しかし金利はすでに十分に低く、利下げの効果は限定的であるという見方から、国内外からはドイツ政府に財政出動を求める声があるようです。

ドイツのGDPに対する政府債務残高は約60%(*)であり、他の欧州諸国と比べても低いことから財政出動の余力は大きいと考えられます。メルケル首相は「困難な局面に向かっている」との認識を示し、ショルツ財務相は「500億ユーロの追加支出が可能」と示唆していることから、両氏は厳しい現状を認識したうえ財政出動も厭わない考えを示しています。今後は、財政の健全性を重んじる欧州の経済大国ドイツが、適切な時期を見極め財政出動するか否かに注目が集まりそうです。

* IMFデータ(2018年時点)

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