昇進に興味がないひとが増えている

「昇給に興味はあるか」と尋ねられたら、多くのひとは前向きに条件を確認したいと思うでしょう。では、「昇進に興味はあるか」と問われた場合はどうでしょうか。世の中には、昇給なしの昇進というケースもあります。前者の質問と比べて、大半のひとは慎重に上司の話に耳を傾けるかと思われます。

日本生産性本部が1969年から毎年実施している「新入社員 働くことの意識」の2018年度の調査結果において、「どのポストまで昇進したいか」という質問に対して最も多かった回答は「どうでもよい」の17.4%でした。「役職にはつきたくない」「どうでもよい」と回答したひとは、あわせて35.8%。10年前の2008年(18.4%)よりも増加しています。また、社長まで昇進したいひとは10.3%と過去最低を記録。出世意欲があるひとが目指すポストは、男性は「部長」との回答が最多で23.1%、これに対して女性は「専門職」との回答が最多の21.7%と、性別により目指す方向性に違いがみられました。

【図表】昇進が「どうでもよい」ひとが増えている
昇進が「どうでもよい」ひとが増えている
出所:日本生産性本部「平成30年度 新入社員 働くことの意識」

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「人並み以上に働きたいか」という別の設問では、「人並み以上に働きたい」が3割に対して、「人並みで十分」は6割。ほかにも、「若いうちは進んで苦労すべきか」という設問の回答は「好んで苦労することはない」が過去最高の34.1%まで上っています。近年のプライベート重視時代において、とくに若手社員の間では、働くことに対して“ほどほど”がベストと考えるひとが多いようです

昇給しても、手取りはあまり変わらない

話は冒頭に戻り、「昇進」には興味ないものの、日々の生活に影響を与える「昇給」を気にするひとは多いでしょう。では、世の中の平均昇給額はいったいどのくらいなのでしょうか。
転職支援サイト「転職活動の歩きかた」では、経済産業省の賃上げ動向の調査を基に、2017年の平均昇給額を以下のように割り出しています。

2017年の中小企業の平均昇給額
月給20万円 3,980円
月給25万円 4,975円
月給30万円 5,970円
2017年の大企業の平均昇給額
月給20万円 4,600円
月給25万円 5,750円
月給30万円 6,900円

上記を参考にすると、例えば月給20万円のひとが昇給せずに同じポストにいたとして、単純計算で10年後の給与は月給24万円になります。10年働いても4万円しか増えないと聞けば、昇進を目指したくなるかもしれません。
しかし、忘れてはならないのが「税金」です。仕事で成果を出し続け、社内の昇進競争を勝ち抜いて昇給できたとしても、下記のように、年収が上がれば上がるほど税引き後の手取りへの影響が大きくなることがわかります。

年収300万円 → 手取り231万円
年収400万円 → 手取り305万円
年収500万円 → 手取り377万円
年収600万円 → 手取り439万円
年収700万円 → 手取り499万円
年収800万円 → 手取り563万円

人並み以上に必死で働き続けて出世できたとしても、実生活にあまり反映されないとなれば、私生活を犠牲にしてまで会社に貢献することを選択できるひとがどれほどいるでしょうか。

昇給を諦めて10年間働き、月給がプラス4万円になるのを待つか。それとも、なれるかもわからない経営層を目指して社内競争の荒波に果敢に挑んでいくのか。収入アップを会社頼みにすると、取れる行動は限られてしまいます
一方で、前回の記事でも触れたように、副業の平均収入は月4万円程度といわれています。副業収入は「経費」にすることで税金がかからない利点もあります。副業で月に1万~5万円未満を稼いでいるひとは全体の3割です。「課長・部長などの管理職の比率は、社員全体の1割程度にすぎない」という説もあり、副業で月4万円稼ぐことを目指すほうが現実的なのかもしれません。

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