本連載では第1回、第2回と副業を猛プッシュしてきましたが、今回は副業で稼いだお金の使い道を考えていきます。
副業収入の平均収入額は月4万円程度と再三申し上げてきました。月4万円収入が増えるのは確かにうれしいものです。しかしよく考えれば、月4万円とは、ちょっといいもの食べて、欲しかったものを買って、余った分を貯金に回しておしまい、という金額です。月4万円の力はたかが知れています。なくても生きていけます。
それでは、副業で得た収入をすべて投資に回してしまうのはいかがでしょうか。
正しい知識で投資を味方に
投資未経験の方は、投資と聞くと、ほんの一握りの成功者を除いて大多数が損をしているのではないかという懸念が頭をよぎるかもしれません。
確かに、投資で莫大な資産を築ける人は限られています。
しかし、すべての投資が一部の限られた人のためだけに存在するわけではありません。
欧米では、投資は一般庶民の間でも広く行われています。
2018年8月に日本銀行調査統計局が公表した「資金循環の日米欧比較」によると、日本人は家計における金融資産の半数以上を「現金・預金」に回しています。これに対してアメリカ人は13.1%、ユーロエリアの人は33.0%です。
一方、「投資信託」と「株式等」を合わせた割合を見ていくと、日本は約15%とかなり少ないのに対し、アメリカは48%、ユーロエリアは29%と、日本と比べて投資への割合が大きいことがわかりす。
日本人の資産が投資に回されないのは、金融教育の不足が要因ではないかと、多くの識者が指摘しています。正しい知識で投資を活用できるようになれば、投資は私たちの資産形成の大きな味方になるはずです。
しかし、残念ながら金融教育の機会に恵まれなかった私たち日本人にとって、金融の知識はすぐに取得できるものではありません。
そこで私がおすすめしたいのが、積立定期預金のような感覚で投資を行う“積立投資”です。なかでも、「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」は未経験の方でも始めやすいと思います。
積立投資の基礎とつみたてNISAのメリット
その理由を説明する前に、まずは積立投資の基本を押さえておきましょう。
積立投資とは、「あらかじめ決まった金額」を「続けて」投資することです。定期的に積立投資をすることで、相場の安い時に買い逃したり、高い時にだけ買ってしまったりすることを避けることができます。また、「毎月2万円ずつ」「毎週火曜日」「2カ月に1回」「年2回のボーナスの月だけ」など、ご自身にあった買い方が選べます。
続いて、つみたてNISAの仕組みを確認していきましょう。
つみたてNISAは、国民の中長期的な資産形成を促進するために、政府が税制優遇措置を設けた制度の一つです。「投資はまとまった資金がないから行えない」と考える投資未経験者が7割を超えたことを受け、金融庁は、“少額”から“長期”で投資ができる「つみたてNISA」を創設し、2018年1月からスタートしました。
つみたてNISA専用の口座で購入した投資信託などの値上がりや分配金による利益はすべて非課税となるのが特徴です。年間最大40万円まで投資が可能で、運用期間は最長20年。つまり、40万円×20年=800万円まで非課税で運用することができます。
つみたてNISAは、月5000円や月1万円など少額から無理なく始められます。投資対象は、長期投資に向かないと考えられる商品や、値動きの大きい商品はあらかじめ除外されているので、投資がはじめての方でも商品を選びやすいのも特徴です。
また、予期せぬ病気やケガでまとまった費用が必要になった場合など、いつでもお金を引き出せる点もメリットといえるでしょう(例えば、類似の税制優遇制度である「iDeCo(イデコ)(個人型確定拠出年金)」は、原則として60歳まで引き出せません)。
長期で運用すればするほどお得?
金融庁の分析では、長期で運用すればするほど収益が安定するという結果が算出されています。国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布を、1985年以降の各年に投資を行った場合で、保有期間を5年間と20年間で比較したとき、5年間では100万円が72万円~173万円とばらつきがあったのに対し、20年間では185万円~321万円と、すべてプラスの運用成果となっています(金融庁「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」(第1回)参考資料)。
また、通常の株式や投資信託などへの投資では、利益に対して「20.315%(復興特別所得税含む)」の税率を乗じた税金を納めなければなりません。
非課税制度のつみたてNISAを活用した場合は、下図のような節税効果が期待できます。
【図表】つみたてNISAの節税効果(月33,300円×20年=799.2万円積立投資した場合)
年利回り | 1% | 3% | 5% | 7% |
---|---|---|---|---|
最終資産 | 884万6382円 | 1091万1096円 | 1356万8344円 | 1699万6522円 |
利益 | 85万4382円 | 291万9096円 | 557万6344円 | 900万4522円 |
節税金額 | 17万3568円 | 59万3014円 | 113万2834円 | 182万9269円 |
※上記は概算です。実際の投資では運用利回りが変動するため、平均利回りが等しくても、利益などの数値は運用期間中の値動きによって変わります。
将来のための長期的な資産形成の訓練に、副業収入でつみたてNISAで投資するのは一つの手です。元手が副業収入のみでも、年平均利回り3%程度の運用ができれば、20年間で1000万円以上の資産を形成することはじゅうぶんに可能です。大きな金額でもなく、日々の生活費のベースとなる本業の稼ぎを削って用意した資金でもないので、仮に市場が下落しても精神的なダメージは少ないはずです。はじめから長期投資と構えていれば、一時的な下落局面はもちろん、数年程度の不景気であっても、不用意に慌てることはないでしょう。
投資がはじめての方がつみたてNISAを活用する際に注意したいのは、いくら貯金感覚ではじめられる初心者向けの投資方法であっても、元本保証はされていないという点です。あくまでも投資であることを、しっかりと認識しなければなりません。