積立投資でパフォーマンスを上げるには……「低迷の期間」
実際には、積立投資でパフォーマンスを上げるためには、ただ「長期」に投資すればいいというわけではありません。
例えば、あり得ないお話ではありますが……。もし、基準価額がひたすら右肩上がりの投資信託があったとしたら。その投資信託には積立投資は向いていません。むしろ、一括投資の方が効率良くパフォーマンスを挙げることができます。
表2のDファンドのシミュレーションでは、合計152回の積立投資を行っていますが、そのうちの80回が10,000円を下回る基準価額で積立投資を行っています。同じく表2のCファンドでは、同じ152回の積立投資で、10,000円を下回る積立投資は20回あります。
この基準価額の低迷の期間があればこそ、損益分岐点を引き下げることができるわけです。
「積立投資を行っているが、プラスのパフォーマンスを上げることができず、不安」とおっしゃっていた方、いかがでしょうか?
むしろ、「これからの株価低迷に期待」という、心の余裕をお持ちになることができましたでしょうか?
もっとも、基準価額が低迷したままでは、プラスのパフォーマンスにはならない場合もあります。売却時の基準価額が、損益分岐点を1円でも上回っている必要があります。
積立投資のファンドをどうやって選ぶのか
では、積立投資のファンドは、どうやって選ぶのでしょうか?
筆者は先ほど、基準価額について「右肩上がりが続くファンドは積立投資には向かない」と述べました。また、「長きに渡る低迷が必要」としつつも、「(最後には)低迷したままではダメで、売却時の基準価額は、損益分岐点を1円でも上回っている必要があります」と結びました。
ということで、ひと言!
積立投資に向くファンドとは「ボラティリティが大きなファンド」だと言えるのではないでしょうか?
「ボラティリティが大きいファンド」とは「基準価額の変動の幅が大きなファンド」という意味になります。
ということは、今、積立投資をなさっているファンドのパフォーマンスがプラスでなかったとしても、焦ったりしないことですね。
表1の中で、ボラティリティが大きなファンドは、どれでしょうか?
公社債などの債券に比べると、概して株式の方がボラティリティが大きい傾向にあるようです。ですので、表1では、Aファンド(世界成長株)とDファンド(日本株)が「ボラティリティが大きい」ファンドですね。
ではEファンド(バランス)はいかがでしょうか?
バランスファンドは株式と債券をミックスした、いわばハイブリッドなファンドです。株式のボラティリティを、債券で抑えようという狙いがありますから。
筆者はEファンドのようなバランスファンドは、積立投資にはおすすめしません。
が、ご年齢やご家族の状況、それにライフイベントなどによっては、バランスファンドによる積立投資もありかな、と思っています。
さて、Bファンド(リート)は、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に評判がよろしくない毎月決算型ファンドです。売却価額が投資金額を大きく下回っているのは、まさに専門家の評判を裏付けているようにも思えます。が、この表では分配金を考慮していません。また、毎月決算型のファンドでも、分配金を受け取らずに同じファンドの買い増し(再投資)に充てることも可能です。
分配金を再投資に充てていれば、表1とは、また異なったパフォーマンスを描くことが期待できるかもしれません。
さて、毎月決算型ファンドの評判の良し悪しはともかく。
毎月決算型のファンドで積立投資は……筆者は向かないと思うのですが、実は、筆者は自らはもちろん、お客様でも毎月決算型のファンドでプラスのパフォーマンスを挙げたことがあり、「噂ほど悪くないのでは」と思うことがあるのです。とはいえ、毎月決算型のファンドでの積立投資を筆者は試したことがありません。
Cファンド(公社債)は、「ボラティリティが小さい」典型ともいえるファンドです。積立投資よりも、一括投資の方が適任だと思います。
まとめに代えて……焦ることはない、むしろ、余裕をかますくらいでちょうどいい?
積立投資をなさっていらっしゃる方、いかがでしょうか?
少しは安心していただけましたでしょうか?
今は焦る時期ではなく、むしろ余裕をかますくらいでちょうどいい時期だと筆者は思っています。
それが「積立投資の実力」です!
が、この先およそ3年前後で「定年などで収入の減少が確実に見込まれる方」や、「ご自身もしくはご家族で大きな支出を伴うライフイベントのご予定がある方」は、積立投資とともに、その他の資産、そして家計のキャッシュフローを、今一度じっくり振り返ってみることをおすすめいたします。
飛行機に例えるのでしたら、そろそろ着陸の態勢に入るタイミングといえます。
(次回は7月20日を予定しています)