前回の記事で、失業などにより保険料の納付が困難な場合は、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度が使えることを説明しました。今回は、その2つの制度について詳しく解説します。
- 保険料の納付期間中ずっと全額免除になった場合でも、年金は一部受け取れる
- 「免除」と「猶予」で迷ったら、受けとれる年金額の多い「免除」がおすすめ
- 国民年金の保険料を未納にすると、遺族年金や障害年金が受け取れなくなる
※本記事は令和2年度時点の年金制度や年金額などを参考に作成しています(年金制度は5年に1度見直し=制度改正が行われます)
国民年金保険料の免除制度には4段階ある
「失業や病気で、国民年金が払えなくなったらどうしよう? その場合、年金は受け取れるの?」
生きていれば、いつ何が起きるかわかりません。やむにやまれぬ事情で働けなくなって収入が途絶えてしまい、国民年金保険料を支払えなくなることもありえます。いざという時のために、国民年金保険料の免除制度について事前に知っておくことが大切です。
本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料(以下:保険料)を納めるのが困難な場合、本人が申請し国が承認すると保険料が免除されます。
免除制度は、年間の所得基準により「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4段階に分かれます。
免除の種類 | 所得基準 |
---|---|
全額免除 | (扶養親族等の数+1) ×35万円+22万円 |
4分の3免除 | 78万円+扶養親族等控除額 +社会保険料控除額等 |
半額免除 | 118万円+扶養親族等控除額 +社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 158万円+扶養親族等控除額 +社会保険料控除額等 |
出所:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
所得審査では、本人以外に世帯主や配偶者がいる場合はその方の所得も審査されます。そのため、本人の所得が所得基準内であっても承認されない場合がある点に注意が必要です。また学生は免除制度の利用ができないため、「学生納付特例制度」を利用することになります。
40年間全額免除になった場合に受け取れる年金額は?
保険料納付期間である20歳~59歳の40年間ずっと全額免除になった場合、受け取れる年間の年金額は390,850円になります。これは、老齢基礎年金支給額の半分を国が負担するからです。
したがって、40年間全額免除で本人が一銭も納付できない場合でも、満額支給(781,700円)の半分を受け取ることができます。ただし、平成21年3月までは支給額の3分の1を国が負担していたため、平成21年4月以前に免除を受けた場合は受け取れる年金額は半分を下回ります。
免除の種類 | 受け取れる年金額 |
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全額免除 | 全額納付した場合の1/2(1/3) |
4分の3免除 | 全額納付した場合の5/8(1/2) |
半額免除 | 全額納付した場合の6/8(2/3) |
4分の1免除 | 全額納付した場合の7/8(5/6) |
注:()内は平成21年3月分までの数字
出所:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
国民年金保険料には納付猶予制度もある
国民年金保険料の納付猶予制度とは、20歳~50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得が一定以下の場合、本人が申請し国が承認すれば保険料の納付が猶予される制度です。
猶予制度には学生向けの「学生納付特例制度」とそれ以外の方向けの「納付猶予」があります。「学生納付特例制度」では所得審査は本人のみになります。
免除の種類 | 所得基準 |
---|---|
納付猶予 | (扶養親族等の数+1) ×35万円+22万円 |
学生納付特例 | 118万円+扶養親族の数×38万円 +社会保険料控除額等 |