裁判で争うのは相手ではなく裁判官
ネットがなかった頃は、誰かの紹介がないと、弁護士事務所のドアをノックするのもなかなかの勇気が要りました。しかも、かつては電話で30分相談していくら、対面で1時間相談していくらという料金が定められていたので、弁護士さんに相談するとなると、ちょっと構えてしまいがちでした。
でも、今はネットで弁護士事務所を検索してホームページのメールフォームから気軽に問い合わせもできます。
問い合わせや初回の対面相談は無料であったりするし、裁判になった場合、どれくらいの費用がかかるのか? 一度に支払えない場合は分割にできるのか? そんなことも最初から気軽に相談できるようになりました。
なので、取り返しがつかないという状況になる前に、弁護士さんに相談して先手先手を打つことはとても大事です。
トラブルの沼にはまって抜け出せなくる前に、余裕をもって、相談に行く方が賢明といえるでしょう。
余裕は時間だけでなく、お金にも言えます。
たとえば、多額の借金が返せない債務超過に陥って、ついに自己破算しようとなった場合でも、「三途の川を渡ってあの世に行くにも六文銭て、昔の人はいいましたけど、今の時代、すっからかんになっても、お金を払わないと破算すらできないんですよ」と、野島さん。
「すっからかんといわれたら、弁護士費用は分割で、または待ってあげることもできるけど、裁判所に払う予納金(=破産管財人への管財費用など)は待ったなしですから」と。
予納金もケースバイケースだが、少なくとも20万円はかかると見ておくべきで、
法人の社長さんの場合は、負債総額が5000万未満でも120万円の管財費用が必要になるとか。
要は、本当にすっからかんになる前に自己破算の手続きは必要で、それを考えたらもっと前の段階で、「たとえば、赤字が続いてこのまま行くと3年後は借金が返せないかも、というくらいのうちに、弁護士に相談すれば、あるいは、自己破産まで至らず、任意整理で元金は返済できるようにもっていけるかもしれない」と、野島さんはいいます。
そう、やはり、何事にも余裕を持って対処することはとても大事なのですね。
そして、もう一つ、裁判で争うとき、泥沼化を防ぐために、野島さんは「何を獲得目標にして訴訟するかを明確にすることが大事!」だといいます。
男女問題は、感情が先行し、裁判では争う双方が「いいたいことを全部いう」形で互いを罵り合う場面も。
「いいたいことをいえば、一瞬憂さが晴らせ、すっきりするだろうけど、その言葉で互いが深く傷つき、嫌悪感に苛まれ、救われるものは何もないです」と野島さん。
しかも、裁判の結果、慰謝料もとれず、親権もとれず、あるいは望んだ離婚さえできないとなったら、獲得目標はゼロ!
野島さんは「裁判で勝ちたいなら、争うのは相手でない、闘いを挑むのは裁判官だ!」と依頼人に説明するそうです。
たしかに、感情的になっても、徒労に終わるなんて虚しいし、エネルギーの無駄遣いにすぎませんね。
そんなことも、弁護士さんが傍にいたら、はっと気づかせてくれるわけです。
相手を変えるのではなく、自分を変える
「世の中にトラブルがあったとして、法律家が扱えるトラブルなんて、ほんの氷山の一角です。弁護士の仕事は、その一角を解決できたら終わりですが、その解決がきっかけで、依頼人が元気になって幸せに生きていってくれたら、ああ、仕事をしてよかったなあと思います」と野島さん。
たとえば、頑なに離婚を拒んでいた妻が、弁護士が介入したことで、考えを変えて、離婚が成立。その後、妻は新しい人生を歩み、結婚していたときよりも、自信を持って「幸せです」といってもらえたら、嬉しいと。
「弁護士と出会ったことで、人生を変える=幸せな方向に舵をとることが出来た、といってもらえたら」……それは、弁護士冥利に尽きることだと。
野島さんは、弁護士によるトラブルの解決は、医師による病気の治療に似ているといいます。
「血液検査の結果、コレステロールが高いとしたら、医師からは生活習慣を改めるように指導されますよね。それと一緒で、弁護士はトラブルの原因をつきとめ、
相談者さんの生き方、生活を変えるようにアドバイスします」
そうですね!
かかりつけ医に定期健診で体調管理を指導してもらえるように、日常生活に潜むトラブルの元を、まだ小さな芽のうちから、摘み取って気をつけるよう相談にのってもらえる弁護士さんがいたら、理想的だと思います。
そして、「トラブルにならないように相手を変えようと期待してもだめ。原因は自分にあると自覚し、自分を変えることで、トラブルを回避できることができると思うんです」と野島さん。
自分を変える!
確かにそうかも。
相手を変えることは、とても難しい!
それなら、自分を変えてしまう。
ああ、なんだか、目から鱗が落ちますね!
野島さん曰く、トラブルに巻き込まれやすい人の多くは、騙されやすい人(=疑うことを知らない人)、意志の弱い人(=NOがいえない人)。
明らかに詐欺としか思えない巧みで怪しい投資話に乗ってしまったり、押し切られて断れずに契約書にサインをしてしまったり、アプリで知りあった異性の甘い言葉にほだされて、大金を貸してしまって、揚げ句にとんずらされてしまったり……。
でも、その人が自分を変えない限り、トラブルは二度三度とまた巡ってくると、野島さんは警告します。
「もうひとつ、人は、手放すと成長するんですよ」と野島さん。
手放すものは、人によって違うでしょう。
お金、愛情、地位、名誉……。
でも、それはすべて「執着=こだわり」の化身。
執着に囚われていたことが、トラブルの原因なら、それはきれいにうち捨てて、すっきり身なりを整えて、新しい人生を歩みたい!
野島さんの話を聞きながら、そう思いましたし、話を聞いただけで、肩が軽くなった気分でした。
アフターコロナに備えて、ステイホーム中に断捨離する人が増えていますが、まず、最初に捨てるべきはトラブルの元凶になる執着かなと切に思いました。
弁護士さんのお話を聞くということで、小難しい法律の解釈の話かと思いきや、人生を大きく変える、潔い気持ちを発見できました。
これぞ、未来に向けた、新しい自己投資の光ですね!