本連載では、税理士に寄せられた相談者からの質問をもとに、主に「おひとりさま」の相続に関するさまざまな疑問に答えていきます。第11回は、年齢が離れたパートナーが先立っておひとりさまになった場合に、住み慣れた自宅にずっと住み続けることを希望するケースについて考えます。

増え続ける空き家問題

総務省が5年ごとに発表している「住宅・土地統計調査」の平成30年版によると、日本の総住宅件数のうち13.6%にあたる848万9千戸が空き家になっているそうです。
7.8戸に1つの空き家と考えると非常に大きな割合ですね。

【図表】住宅・土地統計調査における「住宅」の区分(数値は平成30年調査結果)
住宅・土地統計調査における「住宅」の区分
出所:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査特別集計」

空き家の増える原因としては「少子化」があげられますが、空き家になってしまうきっかけとして、「相続」を機に誰も住む人がいなくなり放置されることが多いようです。

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おひとりさまの場合には、現在お住まいの住宅をその後誰かが引き継いで住んでくれるのは稀なことだと思います。自分が亡くなる前に、住んでいる住宅の処分の方法なども考えておく必要があるようです。

リースバックとリバースモーゲージ

Q.
10歳年上の夫と2人で暮らしています。子どもがいないため、年齢の順番通り夫が先に亡くなれば、私もおひとりさまになることは覚悟しています。
おひとりさまになった後も住み慣れた現在の家に住み続けたいと考えていますが、私たちの財産といえば夫が住宅ローンで購入したこの自宅のみで、年金収入は多少ありますが、貯蓄などはあまりありません。
将来の生活費が心配です。自宅を売却した資金で賃貸住宅に住み替えなければならないでしょうか?

A.
自宅を売却しても、同じ家に住み続けることができます。「リースバック」と「リバースモーゲージ」いう2つの方法があります。

リースバックとリバースモーゲージについて簡単に説明すると、以下のとおりです。

トラリピインタビュー

リースバック
自宅を売却した後にそのまま賃貸として家賃を支払い、同じ家に住み続けること。

リバースモーゲージ
自宅を担保として融資を受けて、生活資金を調達するという金融商品。その融資利息と、自宅の固定資産税の支払いは続きます。その方がお亡くなりになった時点で自宅は売却され、資金の清算が行われるという契約を結びます。

共通点として、「どちらも住み慣れた同じ家に住み続けながら、まとまった生活資金が得られる」というメリットがあります。反対に金利変動や地価変動のリスクを受ける可能性があり、当初の設定よりも長生きをすると資金が足りなくなるというデメリットもあります。

一方、両者の異なる点としては、リースバックは現在価格での不動産売却相当額が手元に入り、その資金の中から家賃を支払う仕組みですが、自宅の売却により得た資金は老後の生活費のほか、事業資金や投資など使途は自由です。
それに対しリバースモーゲージは融資ですので、資金の使途には制約があり、使えるのは生活費や住宅の補修費などに限られます。

日本の住宅
自宅を売却するか、あるいは自宅を担保に融資を受けることで、住み慣れた家にずっと住み続けることができる

不動産会社や金融機関と交渉を

短期的な社会現象による不動産の価格変動は予測がつきませんが、東京、大阪など一部の大都市圏を除けば、日本は人口減少による供給過多から、不動産の価格相場は下落する傾向にあると言われています。
もしも自宅の価格が下がる傾向にあるなら、価格の高いうちに売却し多額の資金が得られるリースバックの方が有利になると考えられますし、住宅価格が下がれば、交渉により支払う家賃も下げられるかもしれません。

リースバックは基本的に不動産会社との契約となりますが、リバースモーゲージは金融機関との契約となります。いずれにしても交渉に余地のある契約となりますので、実際に行う場合には複数の業者に見積もりを出してもらい、より有利な条件を選ぶようにしましょう。

「私は素人だから」と契約を他人にお任せにせず、老後の安定した生活を守る大事な選択となりますので、しっかり考えて判断しましょう。

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