テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第94回は、湘南でまあまあ好きなように生きているシナリオライターの仮屋崎耕さん。

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ディチェコ信者

仮屋崎耕さんの写真
仮屋崎耕
放送作家
日本放送作家協会会員

「カーリィ、学生時代と部屋の広さ変わらんやないか」
「まあそやけどな、30年以上ひとり暮らしを続けてると、独自の進化を遂げるもんやで」
そんなガラパゴスならぬカリパゴスなひとり暮らしをちょっぴり紹介します。

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ひとり暮らしの最大のメリットは「冷凍庫に備蓄したアイスを知らぬ間に食われる心配がない」ということです。

20代前半の頃、シナリオライターになろうと決心したとき、もうひとつ大きな決断をしました。「主食はパスタでいこう」
銘柄はディチェコで、おもに1.4ミリのフェデリーニ。ざらついた表面がソースに絡み食感がよいのです。

週の半分はパスタ料理を作ります。そして、食後は洗い物をしません。のんびりとアイスを楽しみたいのです。洗い物をする最適なタイミングは、ズバリ、次に食事を作る直前です。「食後すぐに洗い物をしなければならない」という固定観念から解放され、しかも清潔な手で調理にのぞめるのです。洗い物から続けざまにパスタのお湯を準備するので給湯器の負担が減ります。ちなみに、食後のお皿やカップに残ったオイル系と乳製品系を流す程度にも混ぜておくと汚れが落ちやすくなります。

食器類は2セットが必要です。その日に使うぶんと洗って乾かしているぶんです。フキンで拭いたりなんかしません。自然乾燥主義です。洗剤は中性と弱酸性の2種類を使い回すのが良きです。種類によって得意な汚れと苦手な汚れがあるのですが、苦手なほうを補い合うことができます。メガネは必ず中性洗剤で洗います。

洗濯用洗剤も2種類。屋外干しは中性、部屋干しは弱アルカリ性で。洗濯用ネットを多く使い、生地を伸ばさないように心がけます。歯ブラシも2本。パートナー用ではなく、自分の朝・夜用です。歯ブラシって半日置いただけでは生乾きだったりするんです。

テレビも2台、パソコンも2台。メインとサブを。乗り物はバイクと自転車を所有。バイクのヘルメットは5~10月に使う軽めのと、11~4月および雨天用のしっかりしたタイプを併用。メガネは屋外用と部屋用。波乗りの板はボディボードとSUP。アイスは冷凍庫に常時5種類以上。釣り道具は数えきれないほど持っています。

夏はソーメンを食べる人が多いと思うのですが、私は0.9ミリのカッペリーニにしています。ソーメンってなんかフニャフニャしててそれでいて意外と高価です。300グラム300円くらい。カッペリーニは500グラム300円くらい。しかもソーメンにくらべてかなり食べ応えがあり満足感高めです。沸騰させて塩を入れ、2分ゆでて氷水でしめ、ザルにあげ、めんつゆで食べます。カッペリーニはイナカッペのイメージかもしれませんが、私は鹿児島の田舎の出身なので気にならないです。

カッペリーニパスタのイメージ
主食はパスタ。夏はカッペリーニと決めている

日めくりランチョンマット

食後のデスクを拭きません。
部屋の真ん中に大きなデスクがあり、食事も執筆も兼ねています。デスクは壁際に配置する人が多いと思いますが、うちは真ん中です。狭い部屋なので、そうすることでたいていのものに手が届いて便利です。アイランドキッチンならぬアイランドデスクです。

そのデスク上に『テレビステーション』という雑誌をいつも開いています。ちょうどいい大きさの見開きで1日の番組表が載っています。メモや予定を書き込めるし、食事のシミがついてもその日かぎり、2週間で新しい号にチェンジです。30年以上、日めくりランチョンマット状態です。京都の学生時代は『関西版テレビステーション』でした。

ひとり暮らしに不要なもの。おはし、ヤカン、炊飯器
私はフォークで食べるので、おはしはないです。「納豆はどうするの?」とたまに聞かれますが、ゴメンナサイ、納豆は食べないんです。フォークは耐久性抜群で、平成元年に実家から持ってきたフォーク2本がいまだに健在です。スプーンみたいに余興で曲げられるおそれもありません。

ヤカンの弱点は用途が限られるくせにやたらと場所をとることです。重ねるのも難しい。注ぎ口の内部を洗いにくい。お湯を沸かすのは雪平鍋でじゅうぶんです。「雪平鍋とは」でググるとすごいですよ。何にでも使える、万能、便利、ほめ言葉のオンパレードです。また、ヤカンは頭にかぶれません。雪平鍋は視界をさえぎることなくピッタリとかぶれるし、左右の注ぎ口が耳にフィットして痛くならず、柄を後ろに回すとムエタイの選手みたいでかっこいいです。

雪平鍋のイメージ
ヤカンは使わない。お湯を沸かすときは雪平鍋を使う
© photosku.com

パスタが主食なので、炊飯器はないです。1人分を炊くには時間も電力も使いすぎるような気がします。マニュアル本で「たくさん炊いて小分けして冷凍保存しといて電子レンジでチンしましょう」などと推奨されていますが、各工程において、時間と電力の消費がはなはだしいです。最悪なのが「小分けして冷凍保存」のくだり。そんな熱々なのを冷凍庫に大量投入したら、大切なアイスたちが温度変化で緩んでしまうじゃないですか。再凍結したアイスは食感が落ちます。

炊飯器でご飯を炊くのイメージ
パスタが主食なので、炊飯器も必要ない

なんか悪口ばかりになっちゃいましたが、ひとり暮らしを始めた頃は、イタリアの高級ブランド・アレッシィのヤカンに憧れていたんです……。

次回は佐伯紅緒さんへ、バトンタッチ!

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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