米国の利上げやロシアによるウクライナ進攻などの影響で「有事の金」と呼ばれる金(ゴールド)への投資に注目が集まっています。しかし、いくら金投資に興味があっても、金貨や金の延べ棒を購入するとなるとまとまった資金が必要なうえ、保管が難しいという難点があります。そこで今回は、少額から始められ、自分で保管する必要のない金投資の方法のひとつ「金ETF」を紹介します。

  • 注目集まる金投資。少額から始めるなら金ETFが有力な選択肢になる
  • 金ETFの中には金の現物と交換できる銘柄もある
  • 金投資はポートフォリオの「守り」。投資は資産の一部に留めることが肝心

金ETFとは何か?

前回、「有事の金」という投資の格言について説明しました。世はまさに有事です。足元の金価格はやや落ち着いていますが、今後の世界情勢によっては、再び金価格が高まっていく展開もあるかもしれません。

投資の格言「有事の金」は正しい選択だった!?

さて、「金ETF」とは何かについて説明する前に、まずはETFの仕組みについて解説します。ETFとは「Exchange Traded Fund」の略語です。日本語では上場投資信託と言われます。その名の通り、取引所に上場している投資信託のことです。

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日本株や海外株、債券、商品先物指数など、ベンチマーク(基準)となる特定の指数と連動した値動きを目指すのが特徴です。例えば、日経平均株価に連動するETFであれば、日経平均株価とほぼ同じような値動きをします。特定の指数と連動する仕組みは、投資信託のインデックスファンドと同様です。

インデックスファンドとの違いは、ETFは株式市場に上場しているので、証券取引市場で売買できる点です。取引時間中なら値動きを見ながらいつでもタイムリーに取引できます。ただし、株式の個別銘柄と同じく、ETFを取り扱う金融機関は証券会社のみです。銀行などでは投資することができません。

ETFとインデックスファンドはどちらを選ぶべき?

数あるETFの種類の中でも、金の値動きに連動するのが金ETFです。少額から始められるうえ、金貨や金の延べ棒を自宅の金庫に保管する必要もないので、盗難リスクもありません。株式と同様、証券取引所が開いている時間であれば、証券会社経由でいつでも売買できます。

手軽に取引できるイメージ
少額から手軽に始められるのが金ETFのメリット

ちなみに金ETFは個人投資家だけではなく、プロの投資家(=機関投資家、年金基金や保険会社など)も多く投資しており、国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金ETFは2022年3月に118億ドルの流入超過となり、単月として統計をさかのぼれる2003年以降で最高額となりました。3月の上旬に金価格は史上最高値に迫る1トロイオンス=2050ドル台に達しましたが、それをけん引したのが機関投資家による金ETFの買いだったのです。

金ETFのメリット

あらためて金ETFの代表的なメリットを5つ紹介します。

メリット1~現物を保管する必要がない

金は現物資産として金貨や金地金で持つことも可能です。しかし、現物の金を保有すると紛失や盗難にあうリスクがあります。一方、金ETFであれば、自分で保管する必要はありません。

金の現物のイメージ
現物を保有しなくていいので、盗難のリスクもない

メリット2~少額から始められる

金ETFは購入した口数に応じて、受益証券を保有する点が特徴です。そのため、現物の金を買う場合に比べて最低購入価格が小さく、少額でもはじめられます。2022年5月時点の金ETFの価格は、最も低いもので1万円以下となっています。金ETFは、投資初心者の方にも適した投資方法といえるでしょう。

メリット3~価格を把握しやすい

金ETFは、新聞や証券会社のサイトなどで価格を毎日確認できます。現在の価格と口数をかければすぐに金額を把握することが可能です。現物の金よりETFの方が現在価格がわかりやすいため、追加購入や売却の判断もしやすいといえるかもしれません。

メリット4~株式など他の有価証券と同じ口座で取引できる

金ETFは証券会社で購入するため、株式の個別銘柄やJ-REITと同じように取引することが可能です。そのため、他の保有資産とあわせて損益状況などを把握しやすいでしょう。また、特定口座で取引を行えば、利益が出たときに確定申告をする必要もありません。NISA口座であれば5年間は利益が非課税となります。

金と株式を取引するイメージ
金ETFなら株式や投資信託と同じように取引できる

メリット5~現物の金を裏付け資産としている

金ETFは金関連の企業に投資をしているわけではなく、現物の金を裏付け資産としています。ETF自体は金ではありませんが、実質的に金そのものに投資するのと同じ効果が得られるというわけです。

東証に上場している金ETF

東証に上場している金ETFには、どのようなものがあるのでしょうか。上場している金ETFの銘柄を具体的にみていきましょう。

銘柄
コード
銘柄名 最低購入
価格(円)
1年
リターン
3年
リターン
信託報酬
(年率・税込み)
運用会社
1328 NEXT FUNDS
金価格連動型
上場投信
59,340 24.27% 57.57% 0.55% 野村アセット
マネジメント
1540 純金上場信託
(現物国内保管型)
7,241 24.30% 61.90% 0.44% 三菱UFJ信託銀行
1326 SPDR
ゴールド・シェア
22,065 25.14% 62.46% 0.40% ワールド・ゴールド・
トラスト・サービシズ・
エルエルシー
1672 WisdomTree
金上場投資信託
22,285 24.42% 53.66% 0.39% ウィズダムツリー・
マネジメント・
ジャージー・リミテッド

※最低購入価格は2022年5月30日の終値に基づく。1年リターン・3年リターンは2022年3月末時点(出所:東京証券取引所)

NEXT FUNDS 金価格連動型上場投資信託(1328)

『NEXT FUNDS 金価格連動型上場投資信託』は、野村アセットマネジメントが管理する金ETFです。上場日は2007年8月10日で、今回取り上げる金ETFの中では最も長い歴史を持ちます。

ロンドンの金取引価格への連動を目指す金ETFです。

純金上場信託(現物国内保管型)(1540)

三菱UFJ信託銀行が「愛称:金の果実シリーズ」として運用している金ETFが、『純金上場信託(現物国内保管型)』です。2022年5月30日時点の最低購入価格は7,241円で、現時点において金ETFの中では最も少額で購入できます。

純金上場信託は、日本人になじみのあるグラム単位での金価格に連動する投資信託です。ETFの受益権と引き換えに、現物の金と引き換えられるという特徴があります。

SPDRゴールド・シェア(1326)

『SPDRゴールド・シェア』はワールド・ゴールド・トラスト・サービシズ・エルエルシーが管理している金ETFで、ロンドンの金現物価格への連動を目指します。信託報酬は0.40%と比較的低いのが特徴で、2022年3月末時点での過去1年・3年リターンはいずれも最も高くなっています。

ただし、『SPDRゴールド・シェア』は「外国投資法人の発行する投資法人債券に類する証券」(外国投資法人債券)に分類され、国内株式や国内ETFとは課税上の扱いが異なる関係で、取引には外国証券取引口座が必要となります(取引の方法自体は通常の株式やETFと同じです)。外国投資法人債券を取り扱っていない証券会社もあるので、注意が必要です。

WisdomTree 金上場投資信託(1672)

『Wisdom Tree金上場投資信託』は、米国のウィズダムツリー・マネジメント・ジャージー・リミテッドが管理する金ETFです。信託報酬は0.39%と、今回取り上げるETFでは最も低くなっています。ロンドン地金市場協会の規格による金価格をもとに、価格が決定される点が特徴です。

こちらも『SPDRゴールド・シェア』と同じく外国投資法人債券に分類されるETFであり、取り扱いのない証券会社もあります。

金ETFは投資資産の一部にとどめる

金ETFは、先行きが不透明な今の世の中においては有効な投資対象として、検討に値する資産といえるでしょう。しかし、金は金利が付かず、それ自体が成長しない資産であるため、資産形成の中心にはなりえません。あくまでも分散投資の一環として、投資資産の一部にとどめるようにしましょう。

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