現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第28回は、「ファッションセンターしまむら」で有名なしまむら(8227)を取り上げます。

  • しまむらは衣料小売りの大手。国内外で約2200店のチェーンストアを展開
  • しまむらの強みは、高品質・低価格を兼ね備えた「商品力」と「販売力」
  • 上半期(3〜8月期)の売上高、営業利益はともに過去最高を更新

しまむらはどんな会社?

しまむらは衣料小売りの大手です。低価格で良質な品揃えが多く、全国に店舗を展開し、消費者にも広く知られています。

創業は1953年(昭和28年)で埼玉県の小川町で呉服店を営んでいた個人商店を株式会社とし、「島村呉服店」を設立したのが礎となっています。

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しまむらは6つのブランドを持ち、国内外で約2200店のチェーンストアを展開しています。主力は20代〜60代の女性とその家族をターゲットとする総合衣料品の「ファッションセンターしまむら」です。

その他、ヤングカジュアル衣料専門の「アベイル」、ベビー・子ども用品専門の「バースデイ」、雑貨&ファッションの「シャンブル」、靴を中心とした婦人向けの「ディバロ」、台湾版ファッションセンターしまむらの「思夢樂」などを手がけています。

しまむらの店舗
全国に店舗を展開する「ファッションセンターしまむら」が主力
Tooykrub / Shutterstock.com

しまむらの強みは?

しまむらの強みは高品質・低価格を兼ね備えた「商品力」と「販売力」です。これらを支える要素として、徹底した「ローコストオペレーション」が挙げられます。

しまむらは設立まもない時期、自社の配送をアウトソーシングする流通業が主流の中、物流システムの構築を早くから始めており、自社運営の物流センターを設営し、合理化などに取り組んできました。

人材の育成にも注力しています。しまむらの従業員の8割以上はM社員と呼ばれるパート従業員で構成されています。能力があってもフルタイムで働きにくい従業員を想定した時間シフト制、マニュアルに基づいた店舗運営で少人数での店舗運営を実現しています。

公正な人事評価や教育システムも充実しており、グループ店舗の店長の7割はM社員から登用されています。

デジタルマーケティングによる販売力の強化も進めています。「LINEチラシ」へのチラシ掲載や「TikTok」のしまむら公式チャンネルの活用などZ世代のアプローチも積極的に進め、SNS会員数は足元で3000万人を超えています。バースデイ事業ではママインフルエンサーとの共同開発商品のインスタライブ配信などにも取り組んでいます。

しまむらの業績や株価は?

しまむらの今期2023年2月期は売上高が前期比4%増の6060億円、営業利益が5%増の520億円と増収増益を見込んでいます

10月4日に発表した上半期(3〜8月期)の売上高は前年同期比6%増、営業利益が14%増となりともに過去最高を更新しました。

猛暑が続いたことで夏物の販売が伸び、しまむら事業では「クロッシープレミアム」などのプライベートブランドやインフルエンサーとのキャラクター商品なども好調でした。バースデイ事業では行楽・帰省需要でベビーカー、スイム用品、浴衣の販売が伸びました。

賃上げにより、人件費は増えたものの、デジタル販促の拡大や新聞折り込みチラシの見直し、DXの推進でコストをコントロールできました。

10月7日の終値は11750円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約118万円です。しかし中期の週足ベースでは2021年末に付けた9130円、22年6月の10430円を下値とした上昇トレンドが続いています。

しまむら(8227)の株価(2021年10月~、週足、終値)

世界的なインフレや人件費などコストの上昇でファッションのみならず、さまざまなモノが値上げの局面を迎えています。こうした中ではより良い商品をリーズナブルに提供できる商品力やデジタルマーケティングなどで消費者のニーズを捉えることのできる企業とそうでない企業の選別が進みそうです。

業績も足元で善戦していることもあり、株価についても下値固め後の反騰に期待しています。

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