テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第38回は、放送作家・脚本家・CMプランナーとして多方面で活躍する沖縄在住のキャンヒロユキさん。

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「放送作家? なにそれ?」からはじまった

キャンヒロユキさんの写真
キャンヒロユキ
放送作家・脚本家・CMプランナー
日本放送作家協会会員

沖縄の放送作家、キャンヒロユキです。

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ここ沖縄で、大学2年生の時に放送作家となりました。大学には気に入ったサークルがなく、「なにか本当にやりたいこと、見つけたい」と思っていたところ、暇つぶしにフラッと入ったちいさな劇場でやっていたお笑いライブ。そこで手にした「第一回FECお笑いオーディション」と書かれたチラシと「来たれ!お笑い芸人 スタッフ 構成・放送作家」の文章。テレビで流れるバラエティ番組のエンドロールで見かけて少なからず興味を持っていた放送作家。その文字をTV画面以外ではじめて見た瞬間でした。
日曜日、いざお笑い事務所FECのオーディションに行ってみると、面接で当時の代表・山城達樹さんに「沖縄には放送作家がいないんだよ、だから君が第一号だ! おめでとう!」と言われ、気を良くした僕は現役大学生ながら「沖縄放送作家の第一人者」として活動することに。

ただし放送局の人間でも「放送作家? なにそれ? そんな仕事あるの?」と発言するような当時の沖縄。「これまで居なかったんだから、別にこれからも必要ないサー」「そうサー!」という雰囲気がどの局に行ってもありました。
事務所からあてがわれたラジオ番組やライブや新聞のエッセイなどをやってはいましたが、新聞のエッセイ以外はほぼノーギャラ。「このまま仕事がくるのを待つより、放送作家としての武者修行に出よう!」と思い立ち、大学を卒業した1年後によしもとの養成所、東京NSCへ。

沖縄のシーサー
沖縄放送作家の第一人者になるも、どの局にいっても「別に必要ないサー」「そうサー!」という雰囲気があった

ただし、そこでも悲劇が。当時はまだ放送作家コースがなく、芸人コースのみ。面接でそれを知ったのですが「芸人として活動してもらって、実力があれば作家としてひきあげるから」と、のちに校長になるスタッフの鈴木さんに言われ、まずは芸人として授業でネタ見せをしたり舞台に立ってみたり。その努力を買われて、在学中から同期で唯一の作家として活動することに。

卒業後も講師アシスタントや舞台演出をやるために養成所に残り、芸人育成や舞台脚本・演出をしながら3年が過ぎたころ、東京のお笑いのノウハウや経験を手土産に、いざ沖縄へ……

値札がついていないお仕事って、交渉が大変

が、「放送作家? それ必要?」な状況はなにも変わらず。でしたが、放送局の中でも「これから沖縄のTVやラジオには、放送作家が必要だ」と言ってくれるディレクターやプロデューサーが現れて、「こんな番組はじめるんだけど、どう?」などと仕事を振っていただけるように。

ただ、その時に困るのが、ギャラの交渉。僕が第一人者なわけですから「これぐらいの番組なら、これぐらいのギャラ」という前例がない。プロデューサーと僕で「うーん、どうする?」「どうしましょう……」「どうしたいか言ってよぉ」と初めてお泊まりしようとするカップルではないですが、お互いモジモジとして相手の意見を待って一向に決まらず、なんてことも。

その後、さまざまな現場の仕事をいただけるようになったんですが、「じゃあこれで」指5本出すので、「(5万か……)」と思って受けたら、まさかの5000円だった、なんてことも(残念ながら逆はありません)。
それからは「じゃあキャンさん、今回は5でいいですか?」と言われたら、「5万ですか? それとも50万ですかっ?」と確認するようにしています。あと放送作家の仕事って労働時間で決めることも難しく、なかなか値札がつけにくいんです。値段って、値札をつけるって、大切です。

五本指のイメージ画像
「じゃあこれで」と指5本を出され「(5万か……)」と思って受けた仕事が、まさかの5000円だった

値札で思い出しました。お笑いやエンタメや芸能界って「銀座の超一流寿司屋」みたいに「時価」が当然の、「値札」のない世界だな、と前から思っていたんです。まぁ、超一流の芸能人が所属する事務所のホームページに「CM出演料 〇〇〇万円から」とあると、興醒めしちゃいますし。ただ、若手などに関しては「僕、こんなことをいくらでやります!」と値札も一緒に貼っていた方が分かりやすいし、仕事に繋がるんじゃないかなー、なんて考えています。

という思いから現在、芸人やエンタメの面白い商品が買える「lolbox」というサービスを作っています。「あなたの人生を、漫才にして披露します」「プロレスラーが、あなたが考えた技と名前をリングで披露します」のような、購入してくれるお客さんが楽しめ、芸やエンタメをより身近に感じられるユニークな商品が買えるんです。面白そうでしょう? 
12月12日に沖縄からスタートさせますが、全国の芸人さんやエンタメのみなさんにもぜひぜひ使って欲しいです。

という文章を11月1日に那覇市松山でオープン予定の、僕がオーナーのお粥屋さん「日々青天」で書いております。よしもとの芸人さんがアルバイトで入ってくれ、名前通りの明るいお店になりそうです。メニューは決めたのですが、いまだ価格が決まってない。うーむ、「時価」だとダメですか?

次回は脚本家の香取俊介さんへ、バトンタッチ!

是非チェックしてください!

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12月12日サービス開始!
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お粥屋さんをはじめます! 優しいお味のお粥です!
「日々青天」
(11月1日オープン)
〒900-0032
沖縄県那覇市松山2丁目22番15号102室

「日々青天」店舗外観画像
「日々青天」店内画像
一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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