資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第7回のテーマは小型株の「損切り」。投資で成功するために避けて通れない、損切りのやり方について考えていきます。

  • 会社の業績が伸び悩んでいる背景が重要。本質的な要因なら損切りを検討する
  • 「創業者が自社株を手放す」など、経営体制の変化も判断基準のひとつ
  • 株価が下落する要因を想定しておくと「想定外」がなくなり、損切りでの失敗が減る

業績が伸び悩むのは一時的か、本質的な要因か

遠藤洋
遠藤 洋
投資家
投資コミュニティixi主宰

「損切りはどうすればいいの?」とよく聞かれます。僕は、損切りも利益確定も「投資した会社に見切りを付けるタイミング」であり、考え方としては全く同じだと思っています。

損切りが利確と異なるのは、損切りは「損失が出ているのにも関わらず株を売ること」です。ここからは損切りのポイントについてお話をしますが、ほとんどは利確の場合でも当てはまることです。

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まず、投資している会社の業績が伸び悩んでいるときが、損切りを検討するタイミングだといえます。問題は伸び悩んでいる理由で、たとえば商品が売れなくなったのは一時的な要因なのか、あるいはその商品の需要がなくなった、市場が飽和してきたといったクリティカルな要因なのか、そこを見極める必要があります。クリティカルな要因で業績が悪くなったと判断すれば、損切りの対象になります。

初心者の方にもわかりやすい判断軸として、投資コミュニティのメンバーにもよく話しているのが「今このタイミングで、この株に投資したいと思えるか?」という考え方です。
たとえば、ある株を100万円で買って、80万円に下がりました。20万円の含み損です。もし今80万円の現金があったら、同じ株をこのタイミングで買いたいでしょうか?
買いたいと思うのなら売らなくてもいいですし、買いたいと思えないのなら、損切りを検討すべきでしょう。

創業者が自社株を売ったのを見て損切り

僕も、投資した企業が自分の思い描いたような成長をせず、損切りに至ったことはたくさんあります。

ひとつの例として、メタップスという会社があります。創業者の佐藤航陽さんの本を読んで、「この人の考え方はおもしろいな」と思って投資をした時期があったのですが、そこから株価がずるずると下がってしまったので、損切りをしました。

損切りをした理由は、創業者で社長の佐藤さんが自社株を売り始めて、そのお金を別会社に投資するなど、メタップスと距離を取り始めたように見えたことです。前回、僕が小型株を選ぶ基準として、「経営者が筆頭株主かどうか」を第1のポイントとして挙げましたが、メタップスはこれと逆のことをしたわけです。

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僕がメタップスに投資したときと状況が変わってしまい、これ以上自分のお金を預けられないと考えたので、損切りをしました。
業績が伸び悩む、商品が売れなくなるといった事情のほかに、会社の経営体制が変わることも、株を手放すきっかけになりうると思います。

【図表】メタップス(6172)の株価の推移
メタップス(6172)の株価の推移
※2017年1月~2021年10月15日、週足・終値

損切りを決断するもうひとつのパターンとして、「より良い銘柄が見つかったとき」というのもあります。

先ほどの例で、100万円で投資した銘柄が80万円になり、確かに今の状況でもこの会社を買いたいと思うけれど、この会社よりさらに買いたい会社が見つかれば、下がった20万円を損切りして、80万円のお金でそちらの株を買った方が、効率的にお金を増やせることになります。

株価が下がる要因をあらかじめ想定しておく

株式投資で成功するために損切りは避けられないことですが、適切なタイミングで損切りするのはなかなか難しいもの。
大切なのは、投資する前にダウンサイドを想定しておくことです。

投資家はみんな、上がると思って株を買います。下がると思って買う人なんていません。だからどうしても「上がる可能性」にばかり目が行きがちです。下がることを想定していないと、実際に株価が下がったときに正常な判断ができなくなります。業績の悪化は一時的な要因なのにあわてて損切りをしてしまう、あるいは逆に致命的な要因なのに「まだ大丈夫」と考えて損切りできないようなことも起きてしまいます。

損切りでの失敗を防ぐためには、株を買う前に自分が想像できる限り、株価が下落する要因を箇条書きにして書き出しておくといいと思います。
たとえば社長が逮捕されたり粉飾決算があったりしたときに損切りするとか、業績が20%鈍化したら売るとか、損切りが必要になりそうなパターンを想定しておけば、たいていのことは想定内になり、焦らなくてすみます。

リスクを箇条書き
小型株を選ぶときは、会社が大きく成長する要素に目を向けるだけでなく、株価が下がる可能性も想定してリストアップしておくことが必要

そして、損切りをしたあともその銘柄をしばらく眺めることが大事です。損切りしたあとも株価が下がっていくのか、逆に損切りのタイミングが底値で、そこから株価が上がってしまったのか。自分の判断が正しかったかどうかを確認して、損切りのルールやタイミングをチューニングしていくと、損切りでの失敗は減っていくと思いますし、そもそも損切りが必要になる銘柄をつかむことも減っていくでしょう。

あと、よくある損切りの基準として「株価が10%下がったら」というような、株価を基準にするケースがありますが、これには注意が必要だと思います。
次回も損切りや利確について考えていきます。

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