「断捨離」はおひとりさまの生前整理のためだけでなく、定期的に行うことで生活の質の向上にもつながります。ところで、断捨離の一環でネットオークションなどで服や雑貨を他人に売ったときの「儲け」は、課税の対象になるのでしょうか?
- 家具や衣服などの「生活用動産」の譲渡(売却)は、その譲渡所得は課税されない
- 貴金属や美術品などは、売却金額が30万円を超えると課税対象となり申告が必要
- どこまでが生活用動産かは判断が難しいので、迷ったら税理士などに相談する
「生活用動産の譲渡」は課税されない
今までの連載の中で「おひとりさまは元気なうちに身の周りの整理をしておきましょう」と何度かお話ししましたが、今回は「断捨離」と税金のお話です。
身の回りの雑貨や服、コレクションを整理するとき、最近ではメルカリやジモティー、Yahoo!オークションなどで売れるものは売ってしまおうという方が増えています。
一昔前なら知り合いに譲ったり、もらっていただくことで身の回りの整理をしましたが、やはりそれも知り合いが相手だとお互いに気を使うから、知らない人に使ってもらった方がラクという考え方が主流になってきているのだと思います。
ところで、身の回りの要らないものを売却した時、全部合わせたらそれなりの金額になったのだけれど、所得税はかかるのかしら?と心配される方はいませんか?
ここで簡単にご説明します。
税金の世界ではモノを売ることを「譲渡」と言い、土地や建物、機械装置、特許権などを他人に譲渡すると「譲渡所得」とされ、所得税がかかります。
しかし課税されない「譲渡所得」もあります。それは生活用動産の譲渡というものです。
ここに言う「生活用動産」とは、「自己または配偶者その他の親族が生活の用に供する、家具、じゅう器(家電・家具等)、衣服など」を指します。
ただし、1個または一組の価額が30万円を超える貴石、半貴石、貴金属、書画、骨董および美術工芸品などは、その譲渡による所得は課税されます。
ということは身の回りの生活用品で、1つあるいは一組の値段が30万円以下である場合は、それを合計した金額が何百万円になっても所得税は課税されないことになります。
衣服や雑貨類など、ちょっとした高級品を日常的に生活に使っている方が、メルカリやオークションにそれらを出品したら、全部で100万円を超えることも珍しくないとは思います。これらはすべて税金の心配はいりません。
1つ30万円以上で売れると申告義務が発生する場合もある
しかし貴金属、時計やジュエリー、ブランド品、書画骨董など1つで30万円以上で売れるモノももちろんありますよね。この売れたモノが課税されない生活用動産とみなされるかは判定が難しいところです。実際に生活に使用していたら課税されませんが、生活には使っていないコレクションであれば、課税の対象になり申告義務が発生します。
例えば「昔から持っている腕時計を売ったら200万円で売れました」という場合、この方はこの一つしか腕時計を持っておらず、生活に使っていた時計であれば生活用動産となり、税金はかかりません。しかしいくつも時計をコレクションしているうちの一つであれば、生活用動産の範疇には入らず課税されることになります。
一般的に普段使いの腕時計をいくつまでなら生活用動産とみなし、いくつ以上なら生活用動産とみなされないのか、これはその方の生活スタイルにもよりますし、判定はかなり難しいところです。
また、メルカリなどのネットオークションで普段使っていた私物を売るのなら課税されませんが、オークションで売れそうな雑貨を購入して販売することは商売、事業と同じですから、その利益は課税されることに気をつけましょう。
このように、断捨離のために身の回りを整理し、使わないものを売却して処分する場合には、税金の問題で難しい判断が必要な場合もあります。
とりあえず、1つまたは一組の売却額が30万を超える場合には、ご自身の所轄の税務署や税理士などの専門家にご相談ください。