「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回からは「50歳以上の方のためのNISA」をテーマに、その序論として「50代の方を取り巻く現在と未来の環境」について確認します。

  • 50代を迎えたら気にすべき「人間関係」。身内には介護が必要になる人も
  • 両親やきょうだいに介護が必要になったら、大きな負担が生じる可能性がある
  • 手元資金を投資に充てて、身内を支援すべきときに金融危機が起きたら……

読者の皆さま、こんにちは。来月から「新しいNISA」が始まります。そこで、本稿では新しいNISAの効果的な活用法をご紹介すべく、連載してまいります。
筆者は51歳ですので、本稿は筆者と同じ昭和生まれで、昭和の義務教育を受けたであろう方を意識しています。あらためて、よろしくお願いいたします。

まずは私たちを取り巻く環境の振り返り

本稿では、まず私たちを取り巻く環境の振り返りからです。と申し上げても、「コロナ禍以後、ICTの活用が目覚ましい」とか、「定年が事実上、なくなるかもしれない」という話題は、他稿に任せるとしましょう。

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私たちが気にするべきは「人間関係」です。

「団塊の世代」と言われる、私たちの「親世代」が「後期高齢者」と言われる75歳以上の年代に突入しています。皆さまの親御様はいかがでしょうか? もし、今もお健やかにいらっしゃるのでしたら……将来、介護が必要になるかもしれません。

そして、私たちは「団塊世代」を親に持つ「団塊ジュニア」の世代です。特に、私の年代に近しい方ですと「団塊ジュニア」に加えて、「就職氷河期世代」という言葉で形容された最初の世代でもあります。読者の方は順調にキャリアを積むことができたとしても、「ごきょうだい」の中に、十分なキャリアを積むことができない方がいらっしゃるかもしれません。中には、ながらく引きこもりになっている方もいるかもしれません。

身内の方を振り返ってみましょう

新しいNISAと何ら関係のないお話のように感じましたか? 実は、大いに関係があるのです。

例えば、もし、親御様に介護が必要になった時に、親御様に十分な資力がなければ、そのお子様が支援をしなければならないかもしれません。また支援の必要がなくとも、介護そのものを担う、あるいは手伝うことになれば、仕事で制約を受け、収入に影響するかもしれません。

もし、ごきょうだいで十分なキャリアを積むことができていない方がいらっしゃれば、そのごきょうだいの老後の生活資金や、場合によっては親御様と同じく介護費用や介護そのもの負担が生じるかもしれません。

【図表1】介護に要した費用
介護に要した費用
出所:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度

お子様がいらっしゃる方でしたら、お子様には意識が届いていると思います。
しかし、親御様やごきょうだいについてまで、意識された方はいらっしゃるでしょうか? 親御様の介護やごきょうだいの老後や介護まで、もし10年以上の時間的な余裕があるのでしたら、そのために必要な資金を投資で準備する、という方法も考えられます。が、5年程度ということですと、投資で準備するには慎重な計画が必要です。

まずは介護保険制度の十分な理解と、親御様やごきょうだいがお住いの自治体の介護支援などの情報を収集することが優先かもしれません。

「いつ?」「どんな時に?」お金が必要になるか? そして、その時までの時間は?

本稿でお伝えしたかったのは、手元の資金を投資に充てることができるのか?ということです。インフレが現実味を帯びた時代だからと、手元の資金の多くを投資に充てたところ、親御様やごきょうだいの支援が必要になった時に、それこそリーマン・ショック等のような事態が重なってしまったら、いかがでしょうか? 親御様やごきょうだい共々、生活が破綻してしまうというのも、決して大げさな想像ではないと思います。

と申し上げても、そもそも親御様やごきょうだいの懐具合というのは、身内といえども、知るのはなかなかに難しいことです。ましてや、介護などについては「いつから始まる」のか、全くわかりません。

ですので、本稿では生命保険文化センターの資料をお示ししておきましょう。85歳以上の方は過半数が、また80歳代前半の方であっても4人に1人が介護が必要な状態です。

【図表2】年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合
年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合
出所:厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」(2023年1月審査分)、総務省「人口推計月報」(2023年1月確定値)を元に生命保険文化センター作成

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