宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは、つみたてNISAで利益を出した方が初めての株式投資にチャレンジする場合などに陥りやすい、投資初心者ならではの失敗と対策について、小田さんの経験をもとに考えていきます。

  • 日本政府の株価を上げる政策に期待。ただし初心者の株式投資にはリスクがある
  • 集中投資は避ける。銘柄を分けて、売買の時期も分ける
  • 欲を強く持たないことが大切。「まだ上がるかも」と思っても、売る決断をする

2022年は株価が上がる?

【質問】
数年前から始めたつみたてNISA、順調に運用成績も上がってきたので、今年は株式投資にチャレンジしてみるちゃけど、株価は上がっていくのか? 株はどんな銘柄がいっちゃろうか?

そうですか! つみたてを始めて3年ということで、まさに時代に乗った運用を開始しているのですね。
つみたてNISAで、日本株式のインデックスファンドに月々1万円の積立投資ですと、数年で約20%近くは利益が出ているのではないですか? バッチグーです。できればこのまま20年間ほったらかしで運用をしていただきたいなぁと思っています。

アクサ・インベストメント・マネージャーズ 未来の世界を見据えて、持続的な成長が期待される企業に厳選投資

昨年度は、米国株式が史上最高値を更新しながら世界の株式市場をけん引してきましたが、日本市場は世界からみても、まだ後れを取っているのが現状です。
とはいえ、バブル崩壊から30年を過ぎて、ようやく日経平均株価が3万円に到達することができました。
これからどうなっていくのか?

私の予想では、日経平均株価は多少の波はありますが、コロナと付き合いながら3万3000円は超えていくと考えています。下限は2万6000円としますが、紛争、天災などの有事的な要因が加われば別問題となるでしょう。
3万3000円と予想したのは、政府が金融緩和政策も当分継続しながらお金を回し、働き手を増やして国民の所得を上げることを重視させると考えられるからです。その一つの指標である企業の株価を上げることが、経済を安定から、成長させていくことにつながります。

また、今年4月には東京証券取引所が4市場から3市場に再編されます。投資家にとっては慣れ親しんだ「東証一部」がなくなることへの混乱がありそうですが、少なくとも市場の活性化にはつながりそうです。

6つの注意点を心がけて株式投資のリスクを軽減する

日本の株式市場はまだまだこれからだと思いますが、そんな市場環境の中で、今回は株式投資初心者にとってこれから起こりうる、いわゆる「運用リスク」について、リスク軽減の方法などを考えていきたいと思います。

トラリピインタビュー

2020年度の日本株式市場は、年度末の昨年3月に高値を更新して終了したものの、日経平均が3万円を超えてからは、他国と比べると値幅は低調なものとなり、2021年は日経平均が3万1000円を超えませんでした。新型コロナウイルスがなかった前々年度と比べてしまうからか、「これから日本のマーケットはどうなのか? 日本はインフレなのか?」と質問を受けることが多くなってきました。

ガソリンスタンド
ガソリンも値上がり。日本はインフレが進んでいるのか?

実際に、食品の値上げ、エネルギー価格の高騰などで家計への打撃が長く続きつつあります。これがインフレの兆候なのか?というと、インフレというより、日本はようやくデフレ脱却が進んでいる段階といえます。正当なインフレとは、物価上昇と同じく家計の所得も上昇することです。だから政府は躍起になって経済界に賃上げを働きかけているのです。それには株価の安定は欠かせないので、是が非でも株価を上げる政策をとっていかないといけないのです。

さて、今回の相談者はつみたてNISA(投資信託)での運用から株式投資にチャレンジということですが、株式投資には、特に初心者が陥りやすい失敗が必ずやあります。

私の経験から、6つの注意点をお話しします。

①新聞・雑誌などで取り上げられた銘柄への投資は慎重に

新聞や雑誌などで取り上げられた銘柄にはすぐ手を出してはいけません。どうしても購入したいときは、チャートの値動きが下降した後、上昇に向かう過程で買うことを心がけてください。このような銘柄は、雑誌で取り上げられた時点で上昇してからすでに時間が経っていて、上がりきっているのが大半です。

雑誌を読む男性
雑誌で紹介された銘柄は、すでに株価が上がりきっていることも多いので投資は慎重に

②新興市場の銘柄は短期で売って利益を確保する

東証マザーズやジャスダックなどの新興市場(東証再編後は「グロース市場」)の銘柄を購入する場合は、利益が出たら短期で売って利益を確保しておく。市場の特性として、成長銘柄でもストップ高、ストップ安を繰り返すのは当たり前のこと。あらかじめ売値を決めたうえで、利益が出たら売るのを徹底してください。

③集中投資は絶対にしてはいけない

購入した銘柄が下落したからといって買い増しなどして、結果的に1つの銘柄への集中投資になることは、絶対にしてはいけません。

投資を行うにあたり、「卵は1つのかごに盛るな」という有名な言い伝えがあります。1つの銘柄や業種に一極集中すると、当たれば儲けは大きいが、外れると悲惨。株も1つのかご、1つの銘柄だけでは危険性が高い。分散投資をしましょうということです。

複数のかご
「卵は1つのかごに盛るな」という格言は分散投資の大切さを表す

④二度に買って、二度に売る

分散投資は銘柄だけではなく、時間にもあてはまることです。買う場合も売る場合も、チャートで値動きを見ながら、回数を分けましょう。

⑤最初に購入する銘柄は東証一部(プライム)上場企業の大型株にする

誰でも知っている銘柄は値動きも穏やかな傾向が強く、安心できます。できれば、グロース(成長株)よりもバリュー(割安株)で、配当性向を調べたうえでの購入をお勧めします。

⑥決して欲を強く持たない

そして最後に皆さんに言いたいのは、決して欲を強く持たないことです。

高値を更新している銘柄がまだ上がると思うと、心理的に買い増したくなったり、売りそびれてしまいがちになったりして、失敗する可能性が高まります。「まだまだ上がるかも?」は自分だけの欲でしかありません。結果的に益がなくなりますので、ある程度上がったら売って利益を出すという決断が必要です。

逃げていくお金
「まだ上がるかも」と思って深追いしすぎると、株価が急に暴落して利益がなくなってしまうこともある

どうでしょうか? 初めて株式投資に踏み込む方へのアドバイスとなればいいのですが、私は儲けようと思ってガツガツする運用より、人生での楽しみの中に運用を取り入れて、結果楽しく暮らせれば最高かと考えています。

つみたてNISAは資産運用にうってつけだと私は思います。億万長者になるためにがむしゃらに仕事をして、お金を増やすことで幸せを求めるよりは、生きるために必要最低限の物を持ちながら、好きなことをやっていく。この中に投資信託や、時には株式の運用が入ってくれば、何とも贅沢ですね。

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