ベンチャー起業家の多くが目標とするのは株式の公開。これまで紹介してきた起業家の中で、第1回に登場していただいたBCC株式会社は昨年7月に東証マザーズに上場、その目標を叶えられた。今回は伊藤社長に再登場いただき、上場後、見えてきた風景などをお聞かせいただいた。

伊藤 一彦さん
BCC株式会社 代表取締役社長

伊藤一彦社長

1998年大阪市立大学理学部卒業後、日本電気(NEC)入社、IT営業を経てベンチャー企業に転職、マネジメント経験を経て2002年に営業創造株式会社(現BCC株式会社)を起業。2005年に大阪市ビジネスプランコンテストに優勝。2018年には母校である大阪市立大学医学研究科の客員教授に就任、ヘルスケアベンチャーと大学を結ぶ懸け橋として活躍中。
2021年7月BCCを東証マザーズ上場に導いた後も、2021年12月には内閣府などが主導する「ムーンショット型研究開発制度」の一環プロジェクトである「アバター共生社会企業コンソーシアムヘルスケア分科会」会長に就任する、などBCCを起点に活躍のフィールドを拡げられている。

BCC株式会社ホームページ

2002年創業。2021年7月東証マザーズに株式上場を果たす。日本が世界に遅れてしまったIT化の促進の中で、IT分野の営業力の提供を、IT営業を担う人材を教育しNECなどに派遣する営業アウトソーシング事業や、中小企業のIT化を支えるソリューション事業を通じておこなうほか、介護現場で、高齢者を「支える人を支える」ヘルスケアビジネス事業を展開する。当社が開発し運営を行う「レクリエーション介護士」資格は、「あるある探検隊」のレギュラーなど吉本興業の芸人もその資格を勉強、取得していることでも有名。

上場したら、視線が「外」へ向かうようになった

もう昨年7月の話にはなりますが、まずは株式公開、おめでとうございます。最初の質問になりますが、公開の前と後とでは「見える風景」に何か違いを感じられますか?

伊藤 公開前についてはなかなか外に目を向けられないというか、まずは社内が大丈夫か、公開審査のことで頭が一杯でした。その間に知り合いの会社が公開を果たしたりすると、羨ましく思うこともありましたね。

ただ、なんとか公開を果たすと、やっと視線が外に向かうようになりました。私はビジネスプランコンテストなどで審査を仰せつかることもあるのですが、その時でも単なる審査に留まらず、何か自社のビジネスと連携できる要素はないか、とベンチャーを見る目が変わった感じはあります。

また、一番違いを感じたのは、公開前は様々なM&Aを仲介する会社から、BCCを売ってくれないか、という他社からの打診が多く寄せられていたのですが、公開後には「こうした会社を買いませんか」という買いの打診が多く寄せられるようになったことです。

当社は基盤となるビジネスとして、経験のない人材に教育と実践の場を提供して、短期間に営業人材に育てNECやIIJなど大手企業を含む延べ50社の取引先に派遣するIT営業アウトソーシング事業を展開しています。教育ノウハウなど含み、競合する企業は皆無の事業です。やはり他社から見ればその価値は高いのか、公開前には公開後、市場で付けられている時価総額以上の評価で金額を提示いただく打診もありました。もちろん、会社を売るつもりは全くありませんでしたが、評価は素直に嬉しかったですね。やはり同業はきちんとした目で事業を評価してくれるものです。

IT営業IT営業アウトソーシング事業は有力な競合相手がほとんどない

公開後については、ヘルスケアビジネス事業とのシナジーが効く案件が持ち込まれるようになりました。今後の成長のためには、M&A戦略はとても重要ですので、持ち込まれる案件についてしっかり精査していきたいと思いますし、こうした話が多く持ち込まれることが株式公開の一つの重要な成果だったと思います。

事業の内容、成長戦略についてはまた後でお聞きしたいと思います。公開に至るまで苦労されたことはなんだったのでしょうか?

伊藤 やはり一番の苦労は審査期間に、新型コロナウイルス感染症の影響をもろに受けてしまったことですね。もちろん、コロナの影響については審査を行う各証券会社に影響を考慮するように通知は出ていたようですが、業績面で影響を受けないということには当然なりませんでした。

ヘルスケアビジネスでは、介護施設に訪問することができなくなるなど、やはり影響はあって売上も利益も落ちてしまいました。また、コロナ対応で在宅ワークが中心となる中、IT営業派遣の顧客であるIT企業も在宅が中心になりましたので、当社から派遣した人材も在宅での仕事を余儀なくされ、モチベーションの管理や業務遂行の上で、様々なマネジメント上の工夫が必要になりました。ただ、そのような経験が一方では会社を強くしていったという面はあります。

アパレルや飲食店で働いていた女性のキャリアアップ

大変苦労されて公開まで漕ぎつかれたのですね。お疲れ様でした。次に、改めて、になりますが、事業について教えてください。BCCという名前からはなかなか実際にどんな事業をされているのか、分かりにくいのですが。

伊藤 公開しても投資家の方から、良く受ける質問が社名の由来です。これはビジネス・クリエイティブ・コーポレーション、その頭文字を取ってBCCになります。「ありそうでなかった新たな価値を創造し、社会貢献につながる事業へ発展させていく」そんな願いを込めています。

実際に現在、手掛けているのはIT営業アウトソーシング事業とヘルスケアビジネス事業になります。

IT営業アウトソーシング事業は、実際に代理店として中小企業を対象に大手IT企業のクラウドサービスなどを、最もその企業に適したサービスを販売、構築するソリューション事業と、IT営業の人材を育て、大手IT企業にIT営業人材を派遣する営業アウトソーシング事業を展開しています。後者については実際に大手IT企業の名刺を持って当社から派遣された社員がIT営業を行うサービスです。エンジニアについてはエンジニアを育てニーズに応じて各社に派遣する会社は数多く存在するのですが、IT営業については当社がほぼその市場を独占しているのではないか、と思います。

派遣している人材の7割が女性であることも特徴です。前職がアパレルショップで働いていた方とか、飲食店で働いていた方とか、意欲を持って挑戦を考える方に、当社はキャリアアップの機会を提供しています。前回のインタビューでもお伝えしましたが、私も、安原というこの部門を統括する専務もNECの出身ですし、IT営業に必要な知識を短期間に習得してもらえるノウハウを持っている、また磨いてきた、その自負があります。また、実際に営業を実践する場を持っていることこそが人材育成の鍵になっています。

この強みについては、何より継続的に当社が派遣した人材を、NECをはじめ、延べ50社にのぼる取引先が受け入れてくれていること、また注文を出し続けてくれていることが、証明していると考えています。

コロナウイルス感染症の影響という話が出ましたが、コロナウイルス感染症が5年先、また10年先と考えられていた未来を一気に現在に変えています。IT化の加速、DXの促進は日本社会にとっては特に後回しのできない大きな課題となっています。その中で常に話題になるのが、IT人材の不足という話ですが、クラウドの時代にあって、それはエンジニア、SEの不足という話だけではなく、IT営業の不足という話にもつながります。クラウドを使った様々なサービスが生み出されている世界で、本当に必要なのは、その会社の解決すべき問題をしっかり把握して、適切なサービスにつなげられる営業の存在でもあります。そうした営業を専門に担う我が社には成長のための大きな市場が約束されていると考えています。

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