現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第12回は、トヨタグループをはじめとする世界20社以上の自動車メーカーに製品を供給する、自動車産業にとって不可欠な部品メーカーであるデンソー(6902)を取り上げます。
- デンソーは自動車部品やシステムをグローバルで手掛ける世界の大手メーカー
- 自動車業界の新潮流である「CASE」で強みを持つ製品を多数手がけている
- 2022年3月期は大幅増収増益を見込む。成長領域への投資が花開きつつある
デンソーはどんな会社?
デンソーは自動車部品やシステムをグローバルで手掛ける世界の大手メーカーです。2021年3月期の売上収益は4.9兆円と自動車部品メーカーの中ではドイツのボッシュに次いで世界で第2位の事業規模となっています。
1949年にトヨタ自動車グループから自動車の電子機器などの電装品を手掛ける日本電装株式会社として分離独立しました。その後、1971年には米国ロサンゼルスに初の海外販売会社を設立するなど海外展開も強化しました。1996年に真のグローバル企業を目指すため社名を現在のデンソーに変更しました。現在ではトヨタグループや世界の20社以上の自動車メーカーに製品を供給する自動車産業にとって不可欠の企業となっています。
自動車に関連する技術開発の幅広さを示すトピックとしてQRコードの開発が取り上げられます。スマートフォンや産業のあらゆる場面で活用されているQRコードは1994年にデンソーが多品種少量生産に対応するためにバーコードの代替として開発したものです。
デンソーの主力事業はカーエアコンなどの「サーマルシステム」、コアとなる駆動システムの「パワトレインシステム」、モーターやバッテリーシステムなど自動車の電動化に欠かせない「エレクトリフィケーションシステム」、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)などの「モビリティ」の4つとなっています。
デンソーの強みは?
デンソーの強みは自動車業界で現在進行しているコネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化の4つの大波「CASE」で強みを持つ製品を多数手がけている点です。
デンソーは自動車の熱マネジメントの技術力を武器にカーエアコンでは世界シェアNo1となっています。現在ガソリン車からのシフトが進んでいるEV(電気自動車)では寒冷地における空調の熱源の確保も課題となります。ガソリン車はエンジンの排熱を空調に利用できますが、EVではモーターで駆動するためです。デンソーのヒートポンプシステムは外気から熱を効率的に汲み上げ少ない電力で効率的な暖房を行うことができます。
この他にも先進運転支援システムや自動運転でクルマの目に相当するミリ波レーダーや光レーザーで検知するLiDARなど「安全」を担保する製品にも注力しています。最近、多発しているアクセルペダルの踏み間違いによる事故を防止する加速抑制装置なども需要の増加を見込んでいます。
またデンソーは近年重要度の増す半導体も成長領域としており、自動車の電力制御を効率化するパワー半導体も伸びが期待されます。
デンソーの業績や株価は?
デンソーの2022年3月期は売上収益が前期比12%増の5兆5400億円、営業利益が2.8倍の4400億円と大幅増収増益を見込んでいます。
世界的な半導体不足で自動車の減産が続いているなか前期のコロナ禍からの反動増や合理化による採算の改善が期待されます。また想定為替レートは1ドル107円と最近のドル円レートの水準より保守的に見積もっていることから円安による為替差益も見込めそうです。
1月21日の終値は8822円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約89万円です。CASEと呼ばれる自動車の大きな変革は今まさに進行中であり、デンソーがこれまで注力していた成長領域の製品の技術開発や投資が花開きつつあります。
株価は世界的な株価調整により1月6日につけた10185円から下押ししていますが、投資家の先高観が強い大型株のひとつとして期待しています。