「お客様の満足の見返りが報酬」

中西 最初はやはり苦労して、自分自身の給料はゼロだった月もありました。入金予定のお金を取引先に持ち逃げされたこともありました。ただ、私を信じて付いてきてくれた社員には報いたいと思っていましたし、給与の未払いは一度もありませんでした。

扱う商材もマイラインから始まり、ビジネスフォン、ネット接続サポートと続き、2003年からマンション向けの光ファイバーシステム「フレッツ光」を扱うようになりました。これは20戸以上のマンションを対象にして、インターネットの接続機械をNTTが全額費用負担し、その後インターネットを利用する入居者から課金して回収するサービスです。どうしても一定の戸数がないと採算が取れないので、20戸という制約がありました。

ただ、私たちが相手にするマンションオーナーや管理会社は圧倒的に19戸以下のマンションが多かったのです。特に賃貸物件についてはネット接続の有無やその性能が、入居者が物件を探す上での前提条件になり始めていました。ですから彼らのニーズの切実さは良く理解できましたし、私は結局仕事とは「お客様にいかに満足してもらうか」を突き詰めていくもので、お客様の満足の見返りが報酬なのだ、と感じていましたので、このようなニーズについて、なんとかならないか、と考えていました。

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そんなとき京都の会社が19戸以下のマンションにもインターネットサービスを提供していると分かり、その会社の代理店としてまずは彼らの商品を扱いました。その後紆余曲折を経てですが、代理店ではなく自社商品として「B-CUBIC」を販売するようになったのです。2005年6月のことでした。

B-CUBIC
「19戸以下のマンションでもインターネット接続を導入したい」という顧客のニーズに応えるべく、自社商品「B-CUBIC」を投入

社員や顧客の笑顔のために人事評価制度を変える

「B-CUBIC」は初期費用ゼロで19戸以下のマンションでも導入可能なシステムとお伺いしています。ネットがインフラとなった社会で部屋を借りる人やマンションオーナーの課題を解決するサービスを提供された御社は見事に成長され、2021年12月には東証マザーズに上場も果たされました。

中西 そうですね。「B-CUBIC」の特長はマンションに住む方が任意契約で加入するのではなく、全戸一括型でそのマンションに住まう方は等しくそのサービスを受けられる点、また初期費用ゼロでの契約が可能な点、などです。マンションオーナーにとってはとても魅力のある商品に育ったと思います。

「B-CUBIC」を販売する頃、私には大きな悩みがありました。基本的に代理店として営業会社だったブロードエンタープライズですから、人員構成も中途採用者が多く、その多くは他社で営業として優秀だった人材でした。どんな会社にしたいのか、という思想より先に売上があり、歩合給の仕組みだけがそこにいる社員を動かしている、そんな会社でした。また、そうした人たちは「前の会社ではこうだった」という感じで会社の方針に異議を唱える人たちでもありました。

「B-CUBIC」が生まれたことで、人に付随する営業力ではなく、その商品、そのサービスの力で社会に貢献する、その報酬として利益をあげられる、そうしたサイクルが可能になってきました。

自分が会社を経営する、その原点は何だろう、それは例えば創業から苦楽を共にしてくれている昔からの社員を幸せにすることではないか、そして商品やサービスを通じてお客様の幸せや笑顔に繋がることではないのか、そう考えたのです。

ブロロック
マンションのエントランスに設置するためのIoTインターフォンシステム「ブロロック」

当社の経営理念は「CS」「ES」「社会貢献」の3つの軸で成り立っています。お客様の笑顔をトコトン追求する、社員の笑顔をトコトン追求する、優しさと思いやりを持ち、地域・社会に貢献する。こうした経営理念を実践するために人事評価制度も変え、歩合制を撤廃しました。10人くらい優秀な営業マンが辞めましたが、逆にそれで新卒採用を中心とした体制を構築することができました。

上場も社員を守るため。投資家満足も追求していく

中西 今回の上場にしても、一番の動機はES、社員を守りたいというところにありました。競合の激しい業界にあって、ルーターなどの仕入れコストが上場している企業とそうでない企業では差が生じてしまう。それであれば上場して業界の「勝ち組」に入ることこそ、会社を守り、社員を守ることに繋がる、そう考えました。また、「B-CUBIC」の最大の特長である初期費用ゼロについても、熱心に仕事をしていても、どうしても成績の上がらない社員が、初期費用ゼロであれば契約してくれる先は何社もあるのですが、と言った言葉に真摯に向き合って始めた取り組みでした。それを「言い訳をする前に電話をしろ」というように対応していたら、生まれなかった特長でした。

中西社長は「家族経営」も標榜されていますが、上場を果たされた現在、これからの目標についてどのようにお考えでしょうか?

中西 上場して、「CS」「ES」「社会貢献」というこれまでの3つの軸に、もう一つ「IS」投資家満足の追求という4つ目の軸ができた、と感じています。投資家の笑顔をトコトン追求する、ですね。そうすると、それら全ての軸を満たす解として、どこかで「プライム市場への上場」というものが目標として見えてくると思います。

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