テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第63回は、食いしん坊が高じて食品企画会社まで立ち上げてしまった脚本家、作詞家の葉山真理さん。
お金の変遷
お金について書いてくださいとのことでしたので、「人間がお金に価値を見いだしたのは、いつの時代?」とか、歴史の詳しいことは、それぞれの専門家にお任せするとして……、お金について私なりに少し書いてみたいと思います。
かつて、お互いに欲しいものを物々交換したり(今もあると思いますが)、塩や布、貝などを物品交換をしていた人間でしたが、ある時、気づいたわけですよね! 共通の価値を見いだすものを持っていれば、欲しい時に欲しいものが手に入り便利だということに!
西太平洋ミクロネシアのヤップ島では、かつての石貨が観光名物にもなっていますが、大きなものでは1メートルに及ぶものもあるそうで、島には石がなかったためにパラオから運び、1872年~1901年までは、アイルランド系アメリカ人のオキーフがパラオの石で製造したものを石貨として使っていたとか。大量生産したために石貨の価値が下がってしまったようですが、つい100数十年前まで石貨が使われていたというのには驚きました。
取材で訪れたフィジーの小さな島の長老の家には、宝貝の一種だと思いますが白く美しい貝殻が部屋の中に沢山飾られていました。「綺麗ですね!」と長老に言ったところ、近年まで、この綺麗で貴重な貝殻が身分を表したり、家を建てた時には手伝ってくれた人たちに賃金として手渡されたりしたのだと教えてくれました。近年まで、クジラの骨、どこの部分か忘れてしまいましたが、それひとつで家が手に入ったとも言っていました。それも一種の貨幣のようなものですね。
ギリシャでは紀元前2500年くらい前から、銀貨や鉄貨が普通に使われていたようですし、中国では、殷王朝(~紀元前1122くらい)の時代には貝貨が使われていました(貝という字が、財や買、貨、貯、資など、お金にまつわる漢字に使われているのも、それで納得がいきます)。紀元前8世紀頃には青銅など金属貨幣が使われ、日本では米や絹がお金のような役目をしていた時代があり、欧米では金貨や銀貨、銅貨だったり……と、時代と地域により、お金として使われていた素材が違うのが面白く感じられます。
いざ暗号資産(仮想通貨)の時代へ
コロナ禍になる前に、映画の打ち合わせに監督やプロデューサーに会いに北京に行ったのですが、空港にお迎えがきて、その後、空港に戻るまで、お金に直接触ることはありませんでした。街でコインや紙幣を使えなかったと言ったほうが、わかりやすいかもしれません。プロデューサー曰く、偽札が多くつくられたために、中国はこのようなシステムが早くに導入されたということでした。タクシー代も食事代も、街に置いてあるレンタル自転車も、携帯などをかざして支払い、日本以上に中国ではキャッシュレス化が進んでいました。
日本でも、最近は、PayPayや仮想通貨やらが浸透しはじめており、流行に鈍感な私でも、お金について時代が変わってきているのをひしひしと感じます。そんな私も、支払いアプリをダウンロードし、店の支払いに使ってみたり、ポイントを貯めて商品に代えたり、ビットフライヤーで仮想通貨を買ってFXCM(本物そっくりの偽サイトにご注意)などで投資したりしていますが、まだよく訳がわからず四苦八苦しています。
これからはスマホがないと不便になるからと高齢な母親にも数年前にガラケーからスマホに変えるように薦め、今では、私以上に便利に使いこなしているようです。
昔は偽造通貨、今は、ロマンス暗号通貨詐欺など、今も昔も悪い輩がいるのは、時代が変わっても変わらないもののようで、皆様、暗号通貨詐欺には、どうかくれぐれも、お気をつけくださいませ。
次回は放送作家の市川幸宏さんへ、バトンタッチ!
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。