宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、前回に引き続いて「程よいお金持ち」を目指すために、30歳からの30年間でどんな資産運用をすればいいか、実践的なアドバイスをお届けします。

  • 「老後2000万円」は現実。働くだけ、預金だけでは老後資金が足りなくなる
  • まずは投資用マンションを購入し、iDeCoやNISAでの長期運用を始める
  • 長期積立投資が成功すれば2000万円の資産ができて、「程よいお金持ち」を実現

「老後2000万円問題」は現実的な課題

【質問】
前回の記事見たんだけど、「程よいお金持ち」の意味がよくわかりません。具体的にはどういうことなのか、教えてください。

新社会人が「程よいお金持ち」を目指す方法

読者の皆さん、思い出してください。金融庁から3年前に発表された指標、「老後30年間の生活に約2000万円が不足する」という、いわゆる「老後2000万円問題」です。
後に、政治関係者の皆さんは反響の大きさに驚いて火消しに走ってしまいましたが、現状の年金制度を考えると、老後2000万円問題は決して大げさではない、真の話といえます。

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令和4年度に厚生労働省から示された年金額改定で、67歳以下の平均的な収入(標準報酬月額43.9万円、年526.8万円)で40年間働いた場合に受け取れる夫婦2人分の年金例が発表されました。

令和4年度の年金額改定について(厚生労働省)

厚生年金は夫婦で月219,593円と公表されました。国民年金1人分は月64,816円です。昨年度からすると0.4%の引き下げで、前年度から連続引き下げ(物価変動率と、賃金などのデフレ影響)となりました。

65歳以上の無職1人世帯の消費金額は、月に約133,000円といわれています。そうすると、国民年金64,816円だと68,184円のマイナスとなってしまいます。
日本人の平均寿命を女性が87歳だとすると、65歳の年金支給開始から数えると約264か月となります。国民年金だと87歳までに1800万円、厚生年金を支給されている夫婦でも1225万円ものマイナスです(消費金額を無職1人世帯の2倍と仮定)。

このマイナス不足分が補填されれば「程よいお金持ち」になれるかと思いがちですが、必ずしもそうとも言えない事情があります。

まず第一に、67歳以下の平均的な年収が526万円もあるのか?
そして、今の世代に40年も働き続ける感覚があるのか?
そもそも、退職金を期待できるのか?

あくまで厚生労働省の公表は、大企業と言われるような企業で長年にわたって働いた場合に受け取れる年金額なので、多くの方にとっては「87歳までに1800万円のマイナス」という金額も参考値でしかないのです。老後に必要なお金は、2000万円でも不十分かもしれないと考えるべきでしょう。
ハッキリ言ってしまうと、大半の方は老後の資金不足は解消できません。今の日本経済の状況をみれば一目瞭然。「毎月真面目に働き、コツコツと預金をしていけば何とかなる時代」ではないのを自覚すべきです。

幸せな老後
働いて預金するだけでは、十分な老後資金を貯めるのは難しい

お金は「豊かになり、楽しむためのもの」

直近、30代の社会人の方から、子どもが誕生したので20年間のキャッシュフロー表を作ってほしいと相談がありました。家、教育、車とライフイベントを盛り込んでいくと、しばらくは何とか維持できても、数年後からは家計は赤字のオンパレードです。黒字にするために数多くの節約を加味していくしかありませんでした。

何もしなければ、定年後も働き続ける選択しか残りません。中には働くことで健康が維持できるという方もいますが、健康は決して永遠ではありません。
私が考える「程よいお金持ち」は、「お金を使いたいときに使えるが、大きい買い物は腹八分にする」人のことです。決して裕福な他人と比較して、高望みなどしてはいけません。他人とは生活に対する考え方も、今までの暮らし方も違います。

前回、お金は「貯めるためのもの」だけではなく、「豊かになり楽しむためのもの」でなくてはいけないと言いました。心とお金のバランスは必要不可欠なことなので、あまりガツガツしないで、やりたいことはやった方がいいと思うのです。その代わり、お金を使うときは腹八分と誓ってくださいね。

旅行
楽しむためにお金を使うことも大切。ただし「腹八分」を心がけて、浪費は控えましょう

「程よいお金持ち」を目指す30年間の資産運用

それでは私がもし30歳に戻れるとして、今から「程よいお金持ち」を目指すならばどうするか? アドバイスしていくことにしましょう。

運用開始~3年後(33歳まで)

まず、勤め先に財形貯蓄などがあれば、強制的に3年で144万円(月4万円)を貯める。
3年後、100万円を頭金にして、投資用中古マンションを500万円上限に購入。
400万円は銀行より2%で借入し10年返済として賃貸とする。
残り44万円を預金として、「使いたいときのお金」に転用する。

3~4年後(34歳まで)

月4万円の積立のうち、税金優遇を受けられるiDeCo(確定拠出年金)に加入して、月1万円で長期運用を始める。
さらにNISA(少額投資非課税制度)を使って、投資信託で月2万円積立投資する。
4年後からの積立運用を、iDeCoとNISAで合計3万円に設定する。

4~13年後(43歳まで)

積立運用を始めてから7年後(40歳)、月2万円の投資信託積立を、年複利3%運用として約186万円。
マンションを購入して10年後(43歳)、投資用マンションの返済が終了。賃貸家賃は月額で約3万円の収入となり、マンションは500万円の不動産現物資産となる。
利益のうち50万円をライフイベント「使いたいときのお金」に転用。

13~30年後(60歳まで)

60歳時に、投資信託積立を年複利3%運用として約993万円(月2万円を27年間運用)。それまでに利益のうち400万円をライフイベント「使いたいときのお金」に分散して転用。実態の投資信託の積立金残額は約540万円(計450万円はライフイベントに転用)。
投資用マンション積立金の合計は、43歳からの17年間で約612万円。
60歳時のiDeCoは、年複利3%運用として27年間で約500万円。

最終資産として、60歳時には以下のお金を残せることになります。

現物不動産……500万円
投資信託……540万円
iDeCo……500万円
家賃収入……612万円

総合計は2152万円になり、「老後2000万円問題」を上回る資産ができました。

今回のポイントは、「使いたいときのお金」として、運用の利益を何度かに分けて使うのと、「程よいお金持ち」に近づけるように不動産を資産に組み込んでみたことです。
月々3~4万円の積立をする前提としてなので、もちろん誰もがこんなにうまくいくわけないと思いますが、工夫次第では「程よいお金持ち」に近づくこともできるでしょう。

人生あっという間です。今の人生も、老後の人生も楽しむことができるよう、今からお金の使い方や貯め方を考えてみてはいかがでしょうか?

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