最近よく目にするFIRE(経済的独立と早期リタイア)という言葉。会社に縛られない自由な生活に憧れる人は多いですが、その道のりは決して平坦ではありません。FIREを実現するには、何から始めればいいのでしょうか? 会社員生活から独立して、自由な生活を手にした投資家の遠藤洋さんに教えていただきます。
今の会社で勤め続ければ、生活には不自由しないかもしれないけれど、10年後、20年後も今の生活を続けるのかと思うと……。自由な時間は欲しいけど、安定した生活を失うのは不安。でも、本当にこのままでいいのだろうか?
「今の自分はこのままでいいのか?」と疑問に思ったら
「私はこのままでいいのだろうか」と迷いながら日々働いている人は多いと思いますが、「このままでいいのか」という疑問が生じている時点で、たぶんこのままでは良くないんだと思います。
そういう自覚はあるのに、
- 何をしたらいいのかよくわからない
- 何をすべきかなんとなくわかっているが、面倒だからやりたくない
と言って、現状からなかなか抜け出せない人が多いのではないかと思います。
今のままではまずいと思いながらも、仕事が忙しいとか、休みの日は予定があるとか、ついつい言い訳をしてしまいがちです。
僕は、普段の仕事や生活に「投資」の目線を取り入れることが大切だと思っています。
時間の“浪費” “消費”、そして“投資”
投資とは、何も金融商品を買うことだけではありません。株を買う、あるいは不動産を買うのは、将来に向けてお金を増やすための投資ですが、これと同じように、将来の自分が自由な生活を手にするためには、今ある自分の時間を「投資」することが必要です。
将来の自分に不安があっても行動を変えられない人たちの多くは、自分の時間が「浪費」と「消費」だけで埋まってしまっています。ここで言う時間の浪費と消費は、
“浪費”……がんばった自分へのごほうびのために時間を使うこと
“消費”……今生きるために時間を使うこと
と定義しています。
生きるためには、もちろん仕事をしなければいけません。多くの人にとって、毎日の仕事は時間の消費です。
そして、休みの日はゆっくりしよう、遊びに行こうというのは、時間の浪費に当たります。
この浪費と消費だけで毎日の生活が回っている限り、その先に「自由に生きられる未来」はなかなかやって来ないと思います。このままでは良くないと思うのであれば、浪費や消費に費やしていた時間を「投資」に回して、今の自分を変えていく必要があるのです。
“時間の投資”とは自分の成長のために時間を使うこと
では、時間を「投資」するというのはどういうことなのでしょうか? これから紹介する僕の友人の例が参考になると思います。
その友人は高校を卒業して、大学に進学せず、家のリフォームを手がける会社に入って、現場で大工さんとして働いていました。同僚はみんな日々の生活費を稼ぐためだけに働いていたのですが、友人は違いました。「5年後に独立する」という目標を立てていたのです。
独立するという明確な目標と時期を決めれば、働き方もおのずと変わってきます。独立を目指す5年の間に、リフォームの仕事のノウハウを全部盗もうという姿勢になった、と友人は言います。仕事を早く覚えようと人一倍努力したり、自分の管轄以外の仕事にも目を配ったりするようになったそうです。
ほかの社員も、仕事に対してはもちろん真剣に取り組みますが、それはあくまで「いかに目の前の仕事を片づけるか」という範囲内での真剣さであって、その目線は会社の外側には向いていません。「自分の人生において、今の仕事はどういう意味を持つのか」という広い視野で考えているわけではないのです。先ほどの時間の使い方で言うと、これは「消費」です。
一方、僕の友人は同僚と同じだけの時間を会社のために費やしながら、将来独立するという目標に向けて、必要な知識や技術を獲得しようと努力しました。与えられた時間を、ただ目先の仕事をこなすだけでなく、自分の成長のために使う。これが時間を「投資」するという感覚です。
時間の投資とは、自分が成長して、自分の価値を高めるために時間を使うことです。投資という目線で仕事をしている人は、たとえば残業が発生したとしても、その時間を「仕事を盗むチャンス」「成長するために必要な仕事」ととらえます。時間を消費する人にとっては、「残業は嫌だな、早く帰って飲みに行きたい」という感覚になります。
このように、同じ仕事をするにしても、投資という感覚で働くか、あるいは時間の消費にとどまるか、その差は時間が経つほど大きなものになります。
転職や副業で「時間の投資」の効率を上げる
投資という観点で仕事をとらえた場合、今の会社で働くことだけでなく、転職や副業も選択肢に入ります。将来の自分を思い描いたときに、今の会社では学ぶことが何もないと思ったら、転職して環境を変えたり、副業を始めたりして、より効率的な「時間の投資」ができそうな環境に身を置くことを視野に入れてもいいと思います。
これも僕の友人の話ですが、とある大企業の役員の秘書を長年やっている人がいて、その人は今も秘書を続けながら、副業として「秘書代行サービス」を運営しています。そのビジネスモデルは、
- 自分が秘書として働いてきたノウハウをマニュアル化
- 秘書の仕事をしたい主婦などをオンラインで募集。マニュアルを使ってノウハウを共有
- 秘書を雇いたい会社役員をオンラインで集客し、その会社に秘書を派遣
というものです。
ほとんどの人は会社役員の秘書という仕事の時間を、自分の生活のために「消費」するだけで終わってしまいますが、僕の友人は本業の経験やノウハウを生かして、余暇を副業に充てて収入を増やすことに成功しました。本業の時間だけでなく、副業の時間も「投資」に費やして、価値を生み出している好例だと思います。
「このままでいいのか」と思っている人は、中長期的な目的を何でもいいからひとつ見つけると、同じ仕事をするにしても目線が広がって、見える世界が大きく変わり、働き方や時間の使い方、お金の使い方も変わってくるはずです。
いわゆるFIREを目指すことは今すぐには難しいとしても、「会社を辞めて、○○の知識や技術を生かして独立したい」「○○の分野で新しいビジネスを始めて、他人に縛られず自由な働き方を目指したい」など、自由な生き方に近づくための何らかの目的を見つけられれば、目の前の嫌な仕事も先々のために必要な経験だと思って、前向きに取り組めるのではないかと思います。
- 「このままでいいのか」という疑問が生じている時点で、たぶんこのままでは良くない
- 「浪費」や「消費」に費やしていた時間を「投資」に回す
- 中長期的な目的を持てば、働き方や時間の使い方、お金の使い方も変わってくる