仕組債の金利は一般的な国債などより高く、魅力的に映りますが、一方で「仕組債は危ない」というイメージもあります。そこで本記事では、仕組債とはどのような債券なのか、どういったリスクやメリットがあるのかを解説します。また、個人投資家向けの代表的な3つの仕組債「株価指数連動債」「EB債」「コーラブル債」についても紹介します。

  • 仕組債は「デリバティブ」の仕組みを活用して、通常の債券より収益性を高めている
  • 株価指数連動債やEB債は、連動する株価指数などの影響で損失が出ることもある
  • 仕組債は通常の債券と比べて設計が複雑なため、事前にリスクを把握することが大切

なぜ「仕組債」は一般の債券より金利が高いのか

「仕組債」とは、一般的な債券とは異なる特殊な「仕組み」を持った債券のことです。

一般的な国債や社債などの債券では、発行元の破産などによって債務不履行にならなければ、額面分の償還金と利子を受け取れます。例えば額面100万円で金利が1%、満期が3年後の債券を100万円で買った場合、毎年1万円の利子を3年間受け取れるうえ、3年後に満期になれば100万円が戻ってきます。債券は、値動きのリスクが大きい株式と比べて安全性が高い反面、大幅な値上がり益が期待できないため、債券投資のみで大きな利益を狙うことは困難でした。

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リスクやコストに見合うのか? 債券投資を考える

そこで、社債などの一般的な債券投資よりも収益性の高い金融商品を目指すために、利益発生の機会が多くなるデリバティブ商品(金融派生商品)を組み合わせた債券が作られました。このような債券を「仕組債」(仕組み債)と呼びます。

仕組債は「オプション」や「スワップ」などのデリバティブ商品を債券と組み合わせる仕組みで、一般的な社債の金利が年1%程度の現状でも、年3%以上などの金利をうたっています。デリバティブについての詳しい説明は難しくなるので省きますが、「オプション」は未来の特定の日に、現時点で約束した価格で売買する権利で、「スワップ」は通貨や金利を交換する取引を指します。

かつて仕組債は、プロの投資家や富裕層向けにオーダーメイドで販売されていた商品のため、投資するために大きな資金が必要でした。しかし、近年では個人投資家向けの仕組債が証券会社や銀行から販売されており、額面50万円程度のものも取り扱いがあります。

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以前は一部の投資家のみが対象だった仕組債のようなやや複雑な商品も、一般の個人投資家が買いやすくなった

個人投資家向けの代表的な仕組債

個人投資家向けの代表的な仕組債として「株価指数連動債」「EB債」「コーラブル債」の3つが挙げられます。それぞれの仕組みについて解説します。

株価指数連動債

株価指数連動債は、S&P500や日経平均などの株価指数や特定の銘柄の株価に連動して、利率や償還金が変動する仕組債です。「リンク債」とも呼ばれます。例えば日経平均株価に連動する株価指数連動債は「日経平均リンク債」ともいいます。

株価指数連動債は早期償還の可能性があり、「ノックイン条項」が発生すると元本が戻ってこない場合があります。ノックイン条項は条件に合致した場合に発生する権利のことで、連動する株価指数がノックイン水準を下回った場合、償還条項が変わって償還金額が額面金額を下回り、損失が発生することもありえます。

日経平均リンク債の詳細については、下記の記事もあわせてご覧ください。

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EB債

EB債(イービー債)は、満期時の償還金が、債券を発行した企業ではない他社の株式へ転換されて支払われる仕組債です。EBとは「エクスチェンジャブル・ボンド」の略で「他社株転換可能債」とも呼ばれます。

株価指数連動債と同様に、対象となる他社の株式の株価次第でノックイン条項が発生する場合があります。株価の変動によっては償還条件が変わり、元本が戻ってこないこともありえます。

コーラブル債

コーラブル債は、発行元の都合によって早期償還される可能性のある仕組債です。コーラブル(callable)とは「コールできる」という意味の言葉で、この場合はコールとは「投資家から発行元が債券を買い取る」ことを表しています。そのため、「満期が10年のコーラブル債に投資したのに、4年で早期償還された」ということも起こる可能性があります。

投資家にとっては投資期間が確定しないリスクがあるため、同じ条件の債券よりも高利率が設定されます。

仕組債は元本割れのリスクを理解することが大切

仕組債はスワップやオプションなど、デリバティブ商品を債券に組み込むという仕組みによって、通常の債券より大きな利益を目指す金融商品です。しかし、その独特の仕組みによって、投資期間や利率、償還金などが当初の想定より大きく変動する可能性はあります。そのため、一般的な債券と比べて商品内容が複雑かつハイリスクであり、想定外の損失が発生することもあるでしょう。

2022年秋には、野村證券や大和証券、楽天証券などが個人向けの仕組債の販売を原則として停止することを発表しました。その他の証券会社や銀行でも、仕組債の販売を停止または縮小する動きが目立ちます。仕組債を販売した金融機関に対しては「購入する際に十分な説明がなされず、元本確保の商品と思っていたら大きな損失が出てしまった」といった苦情も出ているようです。

仕組債は「株式への投資には不安があるが、金利の低い預金よりも有利にお金を運用したい」という人に向けた金融商品ですが、投資にあたっては注意が必要です。どのような場合に元本割れになるのかなどのリスクや、どの程度のリスクを許容できるのかなどを事前にしっかり把握して検討しましょう。「難しくてわからない」と思ったら、投資しないのが賢明です。

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