現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第33回は、時間制の複合型レジャー施設を国内外で展開するラウンドワン(4680)を取り上げます。
- ラウンドワンはスポーツを中心とした時間制の複合型レジャー施設を国内外で展開
- ラウンドワンの強みはブランド力を生かした経営とスピーディーな経営判断
- 収益力の高いギガクレーンスタジアムや景気の好調な米国による成長が続きそう
ラウンドワン(4680)はどんな会社?
ラウンドワンはボウリング、アミューズメント、カラオケなどスポーツを中心とした時間制の複合型レジャー施設を国内外で展開しています。
同社は1980年に大阪府泉南市に遊技場の経営を目的として設立された杉野興産が前身となっています。設立後は大阪府泉大津市にローラースケート場をオープンし、事業をスタートさせています。その後はボウリング場を展開し、1994年に事業譲渡などを経て商号をラウンドワンに変更しています。
2004年に時間制スポーツ遊び放題のレジャーとして「スポッチャ」を開始しました。スポッチャは「スポーツ」と「チャレンジ」を組み合わせた造語です。
卓球、バスケットボール、ビリヤードなど50種類以上のスポーツを自由に手ぶらで時間制料金で遊ぶことができる手軽さが人気となりました。
事業の成長と同時に海外展開も進めており、2010年に米国カリフォルニア州に1号店をオーブンさせています。2021年5月には海外2カ国目として中国の広東省のイオンモール内に中国1号店を開店しました。
現在では、国内で99店舗、米国で47店舗、中国で4店舗を展開しています。(2022年10月末時点)
ラウンドワン(4680)の強みは?
ラウンドワンの強みは複合型レジャー施設としてのブランド力を生かした経営とスピーディーな経営判断です。
その一つがクレーンゲームに特化した「ギガクレーンスタジアム」への改装です。従来のビデオゲームやプリクラ、メダルゲームの面積を縮小し、通常1施設あたり70~80台程度だったクレーンゲームを300台以上導入し、ラウンドワン限定のぬいぐるみや賞品を目玉としたクレーンゲーム特化型の施設です。
ファミリー向けに10円でプレイできるクレーンゲームなどもあり、コロナ禍でカラオケやボウリングなどグループで行うレジャーの客足が大きく落ち込んだ同社にとって起死回生の一手となりました。
クレーンゲーム機はメダルゲームなどに比べて、1プレイあたりの料金も高く設定できるほか、ビデオゲームなどに比べてマシンの入れ替えサイクルが長いことも収益力につながっています。
ラウンドワン(4680)の業績や株価は?
ラウンドワンの今期2023年3月期は、売上高が前期比46%増の1407億円、営業利益が黒字転換となる173億円を見込んでいます。
ボウリング・カラオケではコロナ禍一巡で外出機会が増加していること、アニメやアーティストなどのコラボキャンペーンの効果も出て好調です。
国内の店舗の「ギガクレーンスタジアム」へのリニューアルも順調で11月末時点で58店舗までが改装済みとなっています。
また、米国では積極的な値上げ戦略をとっている中でも来店客数の増加が続いており、部門利益は日本国内を上回るほどの水準となっています。
12月23日の終値は481円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約5万円です。
株価は昨年以来上昇トレンドが続いていましたが、9月13日の高値719円からは下げ基調が続いています。
円安によるインバウンド効果やコロナ禍一巡による来店客増が見込まれて買われていましたが、日銀が金融政策を転換したことによる円高もあり、株価は弱含んでいます。
しかし、収益力の高いギガクレーンスタジアムや景気の好調な米国による成長が続くとみられます。中国についても当局がゼロコロナ政策を緩和方向に見直したこともあり、レジャー人気が高まると期待され、早期に10店舗程度への出店を進める計画となっており、短期的には売りが強まる可能性もありますが、良い押し目買いの好機ととらえてその後の上昇に期待しています。