宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、投資信託の評価会社が4月に発表した「ファンド大賞」の結果を参考にしながら、投資信託を「効率」で選ぶことを考えます。

  • 「R&Iファンド大賞」は、投資の効率を示すシャープレシオで投資信託を評価
  • ファンド大賞に選出された『さわかみファンド』『ひふみ投信』に注目
  • 優れたアクティブ運用は、コストが低いパッシブ運用を投資の効率で上回る

「投資の効率」で評価する投資信託の賞に注目

【質問】
お金を増やすのに、金融商品の代表格といえば投資信託だと思いますが、投資信託は次から次へと新しい商品が出ていて、何が何だかわかりません。投資信託を選ぶ決め手は何なのか? 具体的な良い商品があれば教えてください。

そうですか~、金融商品の代名詞ともいえる投資信託は、やっぱり一番知りたい情報ですよね! 特定の商品に何か思い入れがあったり、好きな運用会社があったりする場合は別として、どの投資信託を選ぶかは難しい選択だと思われます。

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特に昨今のロシアによるウクライナ侵攻などで新たなエネルギー問題が勃発すれば、また運用会社は新たな商品を開発するでしょう。そんな姿を見ているとなおさら、今の時代にマッチした投資信託を選ぶのが良いのではないか?と思うのも当たり前のことです。

私も今まで何種類もの投資信託と付き合ってきましたが、この年になって、ようやく納得できる商品にマッチングできたのですから、悩むのは当然のことだと思います。これまでさまざまな観点から投資信託を考察(連載第57~60回)してきましたが、今回ご紹介する基準が一番わかりやすいのかなあと思いながら原稿を書いています。

何かと誤解されやすい、投資信託の基準価額のこと

不安定な世界だから「リスク度」で投資信託を選ぶ

つい最近ですが、今年度の投資信託の評価を決める賞が発表されました。投資信託を評価する格付け会社はいくつかありますが、その中の1社である格付投資情報センターが選ぶ「R&Iファンド大賞2022」です。この評価の良いところは、単純な儲け(リターン)の大きさではなく、「投資の効率」を示すシャープレシオという数字にスポットを当てていることにあります。常々、長期運用を重視している私にとってはうってつけの評価になりますので、毎年参考にしています。

全82のカテゴリーの中で注目していただきたいのは、「投資信託20年」の「国内株式バリュー部門」でさわかみ投信の『さわかみファンド』が、「10年国内株式」の「コア部門」でレオス・キャピタルワークスの『ひふみ投信』が優秀ファンド賞に選ばれていることです。どちらも連続受賞です。市場平均を上回るリターンを目指すアクティブ運用の投資信託の中から、中立的な立場で運用実績を表彰した賞ですので、まさにアクティブ運用の中からお勧めできる商品を選んでいるとも言えるでしょう。

トラリピインタビュー

私もこれまで、この2つの商品を取り上げてきましたが、今回は「投資効率」のパフォーマンスについて、2つの商品とパッシブ運用(インデックス型)商品を比較して、違いを見ていきます。

「どこで買うか」で手数料が変わる投資信託

日経平均株価を大きく上回ったアクティブ運用

まずは基準価額の推移を比較することで、歴然とした違いがあるのを理解できると思います。

基準価額とは投資信託の値段で、多くの投資信託は当初1万口=1万円で設定され、その後の運用により価額は変動します。ここでは、アクティブ運用とパッシブ運用の投資信託の中から、同じくらいの設定日の商品を選んで、同じ期間の基準価額の動きをもとにどちらが効率的に増えていったかを見ていきます。

まず、R&Iファンド大賞の20年部門で受賞した①さわかみファンドと、日経平均株価への連動を目指す②インデックス商品Aの比較です。

商品名 ①さわかみファンド ②インデックス商品A
設定日 1999年8月24日 1998年11月9日
直近の
基準価額
30,038円 17,979円
年利 4.95% 2.52%

※基準価額は2022年5月31日時点。②は分配金再投資基準価額(①は分配金なし)

2022年5月31日現在、①の基準価額は30,038円と3倍以上になっています。100万円を一括で預けてほったらかしていれば、今では約300万円。年利換算すると約5%となりますが、さわかみファンドを毎月1万円積立していたら、投資元本は271万円で資産は約556万円になり、複利で約6%弱の運用実績となります(さわかみファンド公表による)。

一方、②インデックス商品Aの基準価額は17,840円で、分配金再投資でも17,979円と、①を大きく下回っています。

次に、10年部門で受賞した③ひふみ投信と、こちらも日経平均株価に連動する④インデックス商品Bを比較します。

商品名 ③ひふみ投信 ④インデックス商品B
設定日 2008年9月30日 2008年6月3日
直近の
基準価額
54,837円 17,723円
年利 13.26% 4.18%

※基準価額は2022年5月31日時点。③④とも分配金なし

2022年5月31日現在の③の基準価額は54,837円と、5倍以上に増えています。100万円を一括で預けていれば約540万円です。そして、ひふみ投信より4カ月ほど先に設定された④インデックス商品Bの基準価額は17,723円です。

もっとも、2008年9月はリーマン・ショックがあり、株価が大きく下がった時期でした。④の2008年9月30日時点の基準価額も、設定時の1万円から7,803円まで下がっていました。仮にこの日の④の基準価額を1万円として計算しても、直近の基準価額は22,713円、年利換算で約6.0%であり、やはり③ひふみ投信の成績の方が、④のインデックス商品を大きく上回ることになります。

どうですか。優れた商品を選べば、アクティブ運用とパッシブ運用で大きな差が出るのがおわかりになったと思います。連載第58回目の内容(下げ相場の戻りの比較)を参考に見ていただければ、「投資効率」がいかに大事かが見えてきます。

下げ相場からの「戻り」で投資信託を比較する

特に①と③のファンドは直接販売(自身で運用会社に問い合わせて購入)であることから下げ相場での解約も少ないなど、長期運用の醍醐味を理解している投資家が多くを占めているとも言えます。当然、解約が少なければ、下落時の買いも運用会社は手をこまねいていることはありません。どんどん買いを大きくできます。株を下落時に安く買えることがパフォーマンスの差となっています。

一見、インデックス商品はノーロード(販売手数料ゼロ)で信託報酬などの手数料も安く、買いに飛びつきそうですが、この2商品のアクティブ運用の利益を見ると、手数料の差はまったく影響ないのが理解できます。これこそが「プロ運用」の醍醐味じゃないでしょうか。

ITバブル前の上げ相場の真っ最中に設定され、何回もの下落相場を乗り越えてきて、23年弱の運用実績を重ねた『さわかみファンド』。リーマン・ショック後の下落相場からの戻りに上手く乗っかることができた、14年弱の実績を持つ『ひふみ投信』。どちらの商品が良いのかは読者の皆様が判断するだけです。

私の場合、良い投資信託との出会いは、数種類の商品を購入(インデックス型、アクティブ型、テーマ型など)しながら運用した結果、出会ったのが『さわかみファンド』だったことが幸運だと思います。

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