株式投資で含み損を抱えたときは、そのまま株を持ち続けるか、売却して損切りするか、どちらかを選ばなくてはいけません。株を持ち続ける「塩漬け」を選んだ場合、将来的に株価が上がれば利益を得られますが、さらに下落して含み損が増える可能性もあります。損切りするか、あえて塩漬けを選ぶか。それぞれのメリットとデメリットを説明します。
- 塩漬けは再び株価が上昇すれば利益になるが、損失がさらに増えることもある
- 損切りすればほかの銘柄を買って利益を狙えるが、売却時に手数料が発生する
- 損切りは勇気が必要だが、対象銘柄への期待などを踏まえて冷静に判断したい
株式投資で含み損を抱えたときの対処法は主に2つ
株式を買うときは、誰もが将来の値上がりを期待します。しかし、株式投資にはリスクが付きもの。期待通り株価が上がるとは限りません。その一方で、長い目で見れば経済は成長し、日本全体、あるいは世界全体では株価は上がっていくと考えられるため、個別銘柄もそれにつれて値上がりしていくことが期待できます。
株価は常に変動するものです。長期投資であれば、目先の株価が少々下がったところであわてる必要はありません。しかし、上場企業の中には経営がうまくいかず、株価の回復が見込みにくいものもあります。長期にわたって株価が下がり続けている銘柄は、このまま放置するとさらに含み損がふくらんでしまう可能性もあります。
このようなときの対処法は大きく分けて2つ。「塩漬け」と「損切り」です。塩漬けとは、そのまま何もせずに株を持ち続けること。損切りとは、下落した株を売却して損失を確定することです。
それでは、塩漬けと損切り、それぞれの対処法のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
塩漬けのメリット・デメリットとは?
塩漬けとは、株が下がっても売却して損切りせず、そのまま放置することです。状況にもよりますが、損切りをしないことで利益を得るチャンスがつかめることもあります。
ただし、「今は株価が下がっているけれど、将来的にはまた上がるかもしれない」といった期待や願望に基づいて安易に塩漬けを選ぶと、損失を拡大させてしまったり、損切りして別の銘柄を買えば得られたはずの利益のチャンスを逃したりすることにもなりかねません。塩漬けのメリットとデメリットがどんなものかを理解したうえで、「戦略としての塩漬け」を選ぶようにしましょう。
塩漬けのメリット① 再び株価が上昇したときのリターン
現在のところは右肩下がりの株価でも、将来、何らかのきっかけで再び株価が上昇するかもしれません。実際に、長く低迷していたゲーム関連の銘柄が、たった1本のヒット作で息を吹き返すどころか、史上最高値を大幅に更新するといった例もあります。
あえて塩漬けを選んだ場合でも、将来的に株価が上昇すれば、タイミングを見計らって売却することによって大きなリターンを得られます。
塩漬けのメリット② 売買コストが発生しない
損切りのために株を売却したり、売却したお金で別の株を買ったりすると、そのたびに手数料を支払う必要があります。塩漬けであれば売買コストが発生しません。塩漬けのささやかなメリットといえるでしょう。
塩漬けのデメリット① 成長する銘柄を買う機会を逃す
たとえ値下がりしていても、株を損切りすれば現金がいくらか手に入るため、そのお金で別の銘柄を買うことができますが、塩漬け株に投資している資金は動かせません。塩漬けを選べば、将来成長するかもしれない銘柄を買うための資金が減ることになり、リターンの機会を逃す可能性が高まってしまいます。
塩漬けのデメリット② 損失がさらにふくらむ可能性
塩漬けか損切りかの判断を迫られている時点で、その株は「今後も含み損を増やし続ける可能性が高い銘柄」だということです。将来的に株価が上がればいいのですが、その可能性は決して高くありません。そのまま株価が戻らず、損失がふくらみ続けることも当然想定されるでしょう。
損切りのメリット・デメリットとは?
含み損が大きくなる前に売却する「損切り」は、損失を少なく抑えることで、大切な資産を守るための手段でもあります。しかし、損失を確定してしまえば、たとえその株が再び値上がりしても、そこから利益を得られる可能性はなくなってしまいます。損切りについてもメリットとデメリットを理解してから、決断するようにしましょう。
損切りのメリット① 新しく投資するための現金が手に入る
損切りをすることで、株式を現金化できます。売却して得たお金がたとえ投資元本を大きく割り込んでいたとしても、そのお金を使って別の銘柄を買い、損切り以上の利益を得られればいいのです。このように、損切りをすることで新たな投資機会を得ることが可能になります。
損切りのメリット② ほかの投資による利益と損益通算ができる
損切りによって損失を確定させることで、ほかの銘柄や投資信託などによる利益と損益通算できます。損益通算すれば課税対象額を減らせるため、節税にもつなげられます。塩漬けのままで含み損を抱えた状態では、「損失」とみなされず、損益通算はできません。
損切りのデメリット① 株価が上昇したときの利益の機会が失われる
損切りした後に、その銘柄の株価が大きく上昇することもあります。塩漬けしていればリターンを得られますが、売却した場合には、当然リターンを得る機会は失われてしまいます。
今は低迷していても、長く持っていれば株価上昇の可能性があると判断できるときは、損切りは避けるほうがよいかもしれません。
損切りのデメリット② 損失に加えて売買コストもかかる
損切りをする場合、株を売却するときに所定の手数料を支払うことになります。株価下落によって売却後に受け取れる金額が元本を割り込んでしまうだけでなく、売買手数料によってもさらに金額が減ってしまいます。
投資のスタンスや対象銘柄への期待を踏まえて判断
限られた資金を有効活用することを優先するのであれば、早めに損切りして、別の銘柄に買い替えるのが望ましいでしょう。また、目先の株価が下落していても、先々の値上がりや配当を期待して長期で持ち続けたい銘柄なら、下がったら損切りするのではなく買い増しして、取得単価を下げていく方法も検討できます。
投資には「どんなときでも絶対に正しい方法」というものはありません。また、株価だけでなく世の中全体がどう動くかによっても、正解となる選択肢は変わります。
そして、損切りは時として勇気が必要です。自分の失敗を認めたくないという心理が働くために売却を怖がってしまい、「いつかは上がるはず」という根拠のない願望にすがってしまうこともあります。このように、保有銘柄の株価が下がると冷静な判断ができなくなることもありますが、ご自身の投資のスタンスや対象銘柄への期待を踏まえながら、客観的な目で損切りか塩漬けかを判断するよう心がけましょう。