JPX(日本取引所グループ)は、2022年4月4日付で市場区分の見直しを行い、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場を創設しました。日本の株式市場が魅力あるマーケットとして成長していくためには、魅力的な企業で構成されることが必要です。今回は、株式の投資対象としての魅力を図る尺度であるPBR(株価純資産倍率)とROE(自己資本利益率)を取り上げます。

  • PBRは、株価が1株当たりの純資産の何倍かを示す。一般的に1倍以下なら割安
  • ROEは、自己資本(株主資本)に対してどれだけの利益を上げているかを示す
  • どちらも米国株式市場が優位な傾向にあり、国内の市場成長に向けてJPXが重視

投資の魅力度を図るPBRとROE

JPX(日本取引所グループ)は、2022年4月4日付で市場区分の見直しを行い、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場を創設しました。

JPX(日本取引所グループ)の市場区分の見直し

その後も「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」(以下:同会議)を5回開催し、より魅力的な市場になるための検討をしています。その会議の中で、よく出てくる指標がタイトルにあるPBR(株価純資産倍率)とROE(自己資本利益率)です。

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日本の株式市場が魅力的に成長していくためには、上場している企業に投資してみたいと投資家が考えることが必要です。別の言い方をすると、魅力的な市場は魅力的な企業で構成されることが求められます。その魅力を図る尺度が、PBRとROEです。

純資産をベースに株価の割安・割高を判断する「PBR」

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株当たりの純資産の何倍になっているか示す指標です。以下の計算式で算出します。

PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産
※純資産とは、貸借対照表に表示される項目で、企業の資産総額から負債総額を引いた金額のこと。純資産を発行済み株数で割ったものが1株当たり純資産。

例えば、株価1,000円、1株当たり純資産800円の場合、PBRは1.25倍(1000円÷800円)になり、企業価値が純資産を上回っていることを表します。逆に、株価800円、1株当たり純資産1,000円の場合は、PBRは0.8倍(800円÷1,000円)となり、企業価値が純資産を下回っていることになります。

一般的に純資産は大きく変動することがないため、株価の変動によりPBRは上下します。一時的に1倍を割ってもある程度の期間で1倍を超えてくれば、1倍を割った時「割安」と判断されます。ただし、長期間1倍割れが続いている銘柄については、割安といえないものもありますので、銘柄選びの際には注意しましょう。

PBR(株価純資産倍率)の説明

1回目の同会議(2022/7/29)では、プライム市場1837社のうち922社(約50%)がPBR1倍未満である点を問題視しています。ちなみに、米国のS&P500は5%が1倍未満でした。

自己資本をベースに効率的に利益を上げたかどうかを判断する「ROE」

ROE(自己資本利益率)は、自己資本(株主資本)に対してどれだけの利益を上げているかを示す指標です。ROEが高いほど効率的に利益を上げていると判断されます。計算式は以下の通りです。

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
※自己資本とは、企業が保有する資金のうち、返済の義務がない資金のこと。株式で調達した資金も自己資本に含まれる。借入金など返済義務がある資金は他人資本と呼ばれる。

ROEは、自己資本が変わらず当期純利益が増えれば上昇します。また、当期純利益が変わらず、自己資本が減っても上昇しますので、上昇要因も確認しておく必要があります。

例えば、A社の当期純利益が10億円、自己資本が100億円の場合、ROEは10%(10億円÷100億円×100)です。自己資本が変わらず、当期純利益が20億円に増えるとROEは20%になります。また、当期純利益は変わらず、自己資本が80億円に減った場合のROEは12.5%(10億÷80億円×100)になります。

ROE(自己資本利益率)の説明

1回目の同会議の事務局説明資料を見ますと、ROE8%で線引きを行い、海外の市場に比べて8%未満の比率が高い点を問題視しています。8%未満の企業は、プライム市場1837社の内857社(約47%)、米国S&P500は14%でした。

投下した資本でどれだけ利益を生み出したかを見る「ROIC」

その他に、3回目の同会議の議事録ではROIC経営についても触れていますので、ROICという指数についても見ておきましょう。

ROIC(投下資本利益率)は、調達した資金(有利子負債と株主資本)を事業に投下してどれだけ営業利益(税引き後)を上げたかを見る指標です。計算式は以下です。

ROIC(%)=税引き後営業利益 ÷(有利子負債+株主資本)× 100

他の指数(PBR、ROE)は、利益の中で当期純利益を使って求めていますが、POICは税引き後営業利益を使っています。その点、本業での「稼ぐ力」を評価するのに適した指標と言えます。

JPXが市場への資金流入を拡大させるうえで重視

以上、主にPBRとROEについてみてきました。JPXが市場への資金流入を拡大させるうえで重視している指標になります。株式の投資家だけでなく、インデックス投資を考えている方やすでに行っている方も動向を注目しておくべき指数と言えるでしょう。

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