現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第52回は、半導体の検査・計測装置のメーカーで、世界100%のシェアを誇る製品も有しているレーザーテック(6920)を取り上げます。

  • レーザーテックは海外の大手半導体メーカーなどに検査装置を納入している
  • EUVを使った半導体製造技術を進め、他メーカーより優れた検査装置の開発に成功
  • レーザーテックは8期連続で最高益を更新。株価は一時低迷も、上昇の兆しを見せる

レーザーテック(6920)はどんな会社?

レーザーテックは半導体の検査や計測装置メーカーです。社名が示すとおり、光を応用した技術を用いた検査装置、レーザー顕微鏡などで高いシェアを持っています。

同社は1960年に、X線テレビの開発を行う「東京ITV研究所」として創業しました。その2年後には、「日本自動制御」という社名に変更し、事業の模索を続けます。
事業に転機が訪れたのは、1976年です。この年世界で初めてとなるLSI(集積回路)向けのフォトマスク自動欠陥検査装置を開発し、注目されました。

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フォトマスクは、半導体の回路を光で描く(露光する)際の設計図となる重要な部材です。
1986年には社名を現在の「レーザーテック」に変更し、海外との取引も順調に拡大してゆきました。現在では海外の大手半導体メーカーなどに検査装置を納入しており、半導体の製造には欠かせない会社のひとつとなっています。

半導体の製造・検査半導体の製造には精密な検査装置が欠かせない(写真はイメージです)

レーザーテック(6920)の強みは?

レーザーテックの強みは、半導体の先端技術に欠かせない検査装置で高いシェアを持っていることです。

現在、iPhone15などのハイエンドのスマートフォンやデータセンターなどで用いられる先端半導体の製造工程には、EUV(極端紫外線)露光と呼ばれる、これまでよりも極細の加工用の光線が一部で使われています。
光線の幅が細くなるとより、きめの細かな半導体回路を描くことができ、性能向上や省エネ効果が期待できます。しかしその分、より精密な技術をもった製造装置や検査装置が求められます。

レーザーテックは2000年初頭からEUVを使った半導体製造技術の研究を進めてきました。EUVは波長が短いだけでなく、物質を透過せず吸収されてしまうという特性に苦労しながら、技術開発に取り組みました。その結果、他メーカーよりも優れた性能の検査装置を開発することに成功しました。特に前述のフォトマスクの材料であるマスクブランクスという部材の欠陥検査装置では、100%のシェアを持っています。

レーザーテック(6920)の業績や株価は?

レーザーテックの今期2024年6月期連結決算は、売上高が前期比24%増の1900億円、営業利益が3%増の640億円を見込んでおり、8期連続でともに過去最高となる見通しです。
ただし増収増益率は前期23年6月期の69%増、92%増から大きく鈍化する前提です。

半導体業界では、コロナ禍で急拡大したスマートフォンやパソコン向け半導体需要の反動減に伴い、在庫調整の動きが急速に広がっており、半導体メモリーなどを中心に投資の抑制や先送りの動きが広がっています。
一方で、AIや自動運転など半導体の需要の裾野が広がっていることから、半導体関連装置市場は中長期的に成長を続けるとの見通しで業績を予想しています。

【図表】レーザーテック(6920)の株価(2022年9月~2023年9月、週足)
レーザーテック(6920)の株価(週足)

9月22日の終値は22890円で、投資単位は100株単位となり最低投資金額は約229万円とやや高額です。ただし、個人投資家、機関投資家の注目度も高く常に売買代金の大きい流動性の高い銘柄なので、ミニ株や単元未満株として多くの証券会社が取り扱っています。

株価はコロナ禍の2019年ごろから半導体特需を先取りする形で上昇を続け、22年1月に36090円の上場来高値を付けました。しかしその後は成長鈍化や値幅調整で22年10月に14320円まで売られました。
その後は戻り売りをこなしながら下値を切り上げており、23年5月からは20000~24000円のボックス圏を推移していましたが、10月2日にボックス圏を上抜けるなど上昇の兆しも見せています。

10月31日には、7~9月期(第一四半期)の決算発表を予定しています。決算で受注の積み上がりなど需要の回復が確認できれば買いに弾みがつく場面も期待できそうです。

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