アメリカの利上げなどの影響を受けて、為替相場が大きく変動しています。資産運用の中心が国内株式などの円資産という方にとって、円安は大きなリスクにもなり得るでしょう。そこで今回は、円安のデメリットやリスクについて解説していきます。

  • アメリカの金利が上がり、日本の金利が低いままなら円安ドル高が進みやすい
  • 円安のデメリットは物価が上がること。日本国民の生活が苦しくなる可能性
  • 円安リスクに対抗するには外貨建て資産。外貨預金、外国株式などの方法がある

アメリカは利上げ、日本は金融緩和で円安が進行

アメリカでは2022年3月に、中央銀行であるFRB(米連邦準備理事会)が利上げを発表しました。さらに5月には政策金利を0.5%引き上げて、0.75~1%の幅にすると発表しました。一度に0.5%という大幅な利上げを行うのは22年ぶりということです。

一方で、日本の中央銀行である日銀は長期金利を0.25%以内に抑えるために、金融政策として、日銀が利回りを指定して国債を買い入れる「連続指値オペ」を実行しています。この影響で日米の金利差が広がった影響もあり、2022年3月以降の為替相場は急激にドル高・円安が進みました。1ドル=115円前後で推移していたドル/円相場は、4月下旬には一時131円台を付ける、約20年ぶりの円安となりました。

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【図表】2022年1~4月のドル/円の推移(終値)
2022年1~4月のドル/円の推移

アメリカの金利が上がり、日本の金利が低いまま据え置かれれば、投資家の資金は米ドルへ流れやすくなります。同じ国債を買うのであれば、アメリカの国債を購入したほうが金利が高く、投資妙味があるからです。

今後もアメリカの金利は継続的に上がり続け、日本はしばらく金利が上がらないといわれています。為替は金利だけで決まるわけではありません。しかし、日米の金利差がさらに開いていけば、さらなる円安が進行する可能性が高まりそうです。

円安のデメリットは物価が上がること

円安・ドル高になると、米国株などの米ドル建て資産に投資をしている日本の投資家は利益をあげることができます。しかし、円安にはデメリットもあります。

最も大きなデメリットは、海外のモノを購入する際に物価が高くなってしまうということです。円安が進行すると、円の価値が相対的に下がっていきますので、海外から輸入した商品を購入する際に、より多くのお金を払う必要があります。

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日本は資源が豊富な国ではありませんので、輸入無しに生活を続けることはできません。贅沢品だけでなく、エネルギーや食料品など、生きていくうえで欠かせないものも輸入に頼っています。円安による物価上昇が続くことで、国民の生活が苦しくなることもあるのです。

また、海外旅行をする場合でもデメリットが大きくなります。円安になると海外で買うものがすべて高くなってしまうということですので、海外旅行の費用は円換算で多く支払うことになってしまいます。

航空機
このまま円安が続けば、新型コロナウイルスが収束しても、以前のように海外旅行へは気軽に行きづらくなる

企業も円安を警戒し始めている

一方で、日本の製造業は円安になれば、輸出に有利となります。円安になれば、ほかの国と比べて安い価格で輸出ができるので、日本企業にとって利益があげやすい環境となります。

しかし、急激な円安によるエネルギーや原材料価格の高騰が続けば、国内での製造コストが高くなってしまい、円安でも利益をあげにくくなっていきます。

アメリカの利上げで円安が進行したのと同時に、ウクライナ情勢の緊迫化によってエネルギーや原材料価格が高騰しています。日本の製造業にとっては、仕入れ価格の上昇が悩みの種となってきています。

原材料の仕入れ価格が上昇した際に、同じ利益を上げようとすれば、製造した商品を値上げする必要があります。しかし、値上げをすれば、売り上げが落ちてしまう可能性があります。日本では長期的にデフレ環境が続いているため、値上げに敏感な消費者が離れてしまうかもしれません。値上げをしても売り上げが下がってしまえば、結局利益が落ちてしまいます。

円安リスクへの対策は外貨建て資産への投資

このように、円安は日本に住む私たちにとって大きなリスクとなる可能性があります。

円安が進行しても生活が困ることがないようにするには、外貨建て資産を持つことが有効です。外国の通貨には米ドル、ユーロ、人民元、豪ドルなどさまざまな通貨がありますが、やはり、世界最大の経済大国である米ドル建ての資産を持つのがいいでしょう。米ドルは流通量が多く、他国の通貨と比較して値動きが安定しているからです。

外貨建て資産に投資をする方法は外貨預金、外国債券、外国株式、外貨建て保険、投資信託・ETF、FXなどがあげられます。

インフレ対策で、外貨に投資するのはあり?

もちろん、投資は元本が保障されておらず、必ず利益をあげられるわけではありません。しかし、円安がさらに進む可能性を考えると、円建てでは元本が保証される円預金の方がリスクになるかもしれません。外貨建ての資産もある程度持っておくことを検討してみるとよいでしょう。

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