現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第59回は、企業のディスクロージャー(情報開示)に関して、制作ツールやコンサルティングなどを通じて支援するTAKARA&COMPANY(7921)をご紹介します。
- TAKARA&COMPANYは創業以来、企業の情報開示に関するビジネスを拡大
- 多くの上場企業、官公庁や外資系企業などの強固な顧客基盤を強みとする
- 12年連続増収、7年連続増益。プライム市場の「英文開示」も追い風になるか
TAKARA&COMPANY(7921)はどんな会社?
TAKARA&COMPANYは、企業が投資家などに対して必要な情報を適切に開示するディスクロージャー(情報開示)を支援しています。
企業は金融商品取引法によって、決算のタイミングで四半期決算短信や有価証券報告書などを提出する義務があります。企業の概況や事業の状況、財務諸表などを決まったフォーマットで適切に投資家に開示するためです。
こうした開示資料の制作ツール提供やコンサルティングなどを通じ、上場企業の情報開示を支援しています。
同社は1952年に宝商会として創業。戦後間もない1948年に証券取引法(現在の金融商品取引法)が制定され、企業の情報開示をサポートするため、発足しました。
1960年には宝印刷と社名を変え、当初はその名の通りディスクロージャーに関する資料の印刷を手がけていました。その後は上場企業数の増加で規模を拡大し、開示資料の電子化の波の中でコンサルティングなどにも事業の幅を広げていきました。
2019年には海外翻訳事業を手がけるサイマル・グループなどをグループに迎えたこともあり、翻訳セグメントを新たな収益の柱とするとともにTAKARA&COMPANYに社名を変更し、持株会社に体制移行しています。
TAKARA&COMPANY(7921)の強みは?
同社の強みは、創業以来培ってきたディスクロージャーに関する経営資源の蓄積です。情報開示や決算支援コンサルティング、IPOなどに関連する分野に特化した専門性を持つ人材を多く抱えています。
毎年のように関係の法令は改正されており、1つの改正により様々な箇所に影響を及ぼすことも多くなっています。同社は社員に対して知識取得のための研修などを充実させているほか、社内ポータルサイトで過去の社内勉強会や顧客向けセミナーなどの動画コンテンツを共有し、専門知識を共有しています。
また、上場の申請や適時開示、翻訳に関連した高度な知見・ノウハウを武器に、多くの上場企業、官公庁や外資系企業などの強固な顧客基盤を強みとしています。
TAKARA&COMPANY(7921)の業績や株価は?
TAKARA&COMPANYの今期2024年5月期は売上高が前期比5%増の288億円、営業利益が2%増の39億円を見込んでいます。売上高は12年連続増収、7年連続営業増益の見通しで、ともに過去最高を予想しています。
2023年11月の発表では、23年6月~11月期(上半期)は売上高が5%増の150億円、営業利益が14%増の25億円と好調な進捗となっています。
統合型ビジネスレポートシステムの「WizLabo」の販売が好調で導入者数が順調に伸びています。また、有価証券報告書や決算短信などの翻訳の案件が増えています。
そのほか、G7サミットなどコロナ禍で見合わせられていた国際会議やセミナーなどの開催が増え、通訳関連の売上高も伸びています。
1月19日の終値は2910円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約29万円、予想配当利回りは2.75%です。
株価は中長期で緩やかな上昇トレンドが続いており、1月18日には昨年来高値の2937円を付けています。20年9月につけた上場来高値の3015円の更新も目前に迫っています。
企業のディスクロージャーへの投資家やステークホルダーの関心は年々高まっています。また、ESG(環境・社会・企業統治)に関する情報開示もより求められる中、同社の事業機会は今後も伸びると考えられます。
1月16日の日経新聞によると、東京証券取引所は2025年3月から、プライム市場に上場する全約1600社に重要情報の英文開示を義務づけると報じています。現状は多くの企業が、決算短信などについては英文開示を進めているものの、他の書類については英文開示がなされていません。海外投資家への情報提供の強化もあり、今後は様々な適時開示書類の英文開示が進むとみられ、同社の将来的な追い風になりそうです。