宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も、前回に引き続いて共働き夫婦の「人生の転換期」におけるお金のプランニングがテーマ。40~50代の「第2の転換期」と、60代の「第3の転換期」で考えたいこととは?
- 40~50代の「第2の転換期」は、ゴールを見据えたお金のプランニングを考える
- 60代の「第3の転換期」では、退職金で住宅ローンを繰り上げ返済すべきではない
- お金は今を楽しむために働きながら使いたい。転換期で大切なのは夫婦の話し合い
資金の借り入れは慎重に。プランニングが大切な時代
【質問】
今は一人もんですが、来年あたり結婚ができそうです。先の話になりますが、子供も欲しいし家も欲しいと思っています。僕が心配性のせいか、人生100年時代と言われますが、結婚後のライフプランがなかなか思いつきそうにありません。専門家に依頼するとお金がかかるのはわかりますが、自分でも理解ができるようなお金や生活のプランがあれば教えてください!
前回に引き続き、夫婦共働きを例にして、お金が掛かる事柄(教育、家)を年代別に様々な「人生の転換期」という観点から「ライフスタイルとお金のプランニング」を考えていきます。
前回説明した通り、人生の「第1の転換期」(20~30代)では、
- 子どもの教育費の支払いと、家を持つことの両方を実現するためには、夫婦でがむしゃらに働きながら、お金や生活のプランニングを考えていかないと、達成するのは難しい。
- 夫婦がこれから直面する難題を克服するために、どうすればうまくいくのか? 夫婦で話し合いながら、家事や育児など責任の分担を決めていくようにしないと、共働きで給与アップ、キャリアアップは望めない。
ということに気づいたかと思います。
子育てや家事をしながら、夫婦がともにがむしゃらに仕事をしていくことは、実は容易ではないのです。女性の社会進出が進んだ現代において、夫婦間の話し合いが、女性の昇進にもつながり得るという調査結果もあるようです。男女どちらのキャリアをベースにするのか? その優先順位は、夫婦での給与アップのためには大事な先見事項なのかもしれません。
どちらにしても、インフレの世の中になって「金利がある生活」にシフトしていく時代ですから、教育資金や住宅ローンなどの借り入れは慎重に検討しなければいけません。そこで今回は、「第1の転換期」に続いて、夫婦共働き世帯が直面する第2、第3の転換期を、いかにプランニングできるのかを考えていきます。
第2の転換期、40~50代でやるべきこと
第2の転換期は40~50代です。夫婦共働きをベースに、これまでのプランニングは大丈夫なのか?など、人生設計を再度見つめ直すことができる転換期となります。
住宅ローンなど、お金のプランニングは「ゴールまでの流れ」を決める
夫婦のキャリアもある程度決まってきたこの時期は、お子様、持ち家などのお金のやりくりに直結するプランニングも、この期間でゴールまでの流れを決めることができ、最終的な修正も考えていく段階となります。
キャリアに沿って、夫婦間の役割を見直すための話し合い
この時期には、今までの生活設計などに対して「本当にこれで良いのか?」と、自身のキャリアに対する疑問がお互いに出てきます。自身が夫婦間で果たしてきた役割を見直したり、若い時代に築いたキャリアではなく、現在のキャリアにおける適切な責任分担を確認したりするために、話し合いをすることをお進めします。
子どもの教育も終わりに近づくことで、夫婦の会話も途切れがちになるケースもあり、互いの無関心がさらなる誤解を招く結果ともなります。コミュニケーションは忘れないでください。第2の転換期を、これまでの子ども優先から、配偶者優先へと転換する時期としないと、将来的には熟年離婚などでよけいな労力を使うことになりかねません。
第3の転換期、60代でやるべきこと
そして最後に、第3の転換期(60代)です。人生の集大成であり、それまでとは別の意味で人生を楽しまなければいけない年代だと思っています。
この年代は、キャリアにより職場での立場の変化や退職するかどうか、あるいは子どもの独立と、さまざまな転換の機会が出てきます。夫婦間でも「今までがむしゃらに働いたけど、これで良かったの?」など、この時期ならではの自問自答が出てきます。特に男性は、ずっと仕事中心の生活だったために「これから何をしていけば良いのか?」と考えてしまい、思考がネガティブな方向に陥っていくこともあります。
60代以降の生活を夫婦間で楽しむためには、「今後どうなっていきたいか?」を考えることが必要になってきます。悩むより、遊び心を持って望むことは鉄則だと思います。
しかしながら、人によっては「①親の介護がのしかかったり、②住宅ローンの返済をどうする?」という問題も発生してきます。
親の介護との向き合い方
①介護については、「子供には介護を期待しない」が原則です。親の面倒は子供が見るべきだという風潮が、今も日本人の「美徳」として残っていますが、だったら「お金で残せよ」と言いたい。現代社会では、自分たちの生活だけで精一杯であることが紛れもない事実というのを忘れないでほしい。
「自分のお金で自分の介護」が基本です。
住宅ローンの残債を退職金で返済するのは「間違い」
②住宅ローン残債問題について、「退職金をつぎ込んで返済してしまった」とよく聞きます。これは大間違いです。私は一部返済に回すのも、良く考えた方がいいと思っています。
なぜか? 理由は簡単で、ここ30年間の金利、住宅ローンの推移を見ても、固定、変動ともに2~4%の間で落ち着いている状況です。
特に1999年からは、日本銀行が「ゼロ金利政策」を導入し、長きにわたり低金利が続いています。今後ゼロ金利は解除されますが、住宅ローン金利はすぐさま跳ね上がることはありません。徐々に上がっていきます。
少なくとも、今から10年前後のうちに退職を迎える方々は、ローンの返済よりも「楽しむために働きながら使う」がベストな選択だと思います。
「夫婦で話すこと」で転換期を乗り越える
ゼロ金利が解除されたあと、金利変動が長く続いていく事態となれば繰り上げ返済の可能性も忘れてはいけませんが、今は大きなお金を返済するより、ローンを少しずつ返済しながらの「ゆとりあるお金の使い方」の方が、幸せになれると信じます。
家族に財産を残そうとお金を使わないがゆえに、金融機関に預貯金が貯め込まれること自体が大きな問題だと思います。消費が生活を豊かにし、心も豊かにしてくれます。
私は、対人関係の付き合いも、嫌な人と付き合うぐらいなら、一人の方がストレスなく過ごすことができますし、老後のプランニングに「老後資金2000万円問題」をそのまま当てはめるよりは、「自分の人生にどのくらいお金が必要なのか?」「足りない分は?」と自分のお金を計算して、対処法を考えるだけで不安は和らぐものです。
確かに年金受給も引き上げられていますが、逆に言えば、定年も引き上げられています。不安解消のために「働き続ける」選択も大いに有りです。
ここまで夫婦共働きをしながらの、人生の3つの転換期を考えてきました。どちらにしても、日常の中で数分でもいいので夫婦で話し合いをする習慣が、年代ごとの転換期を乗り越えると考えます。