テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第163回は、放送作家協会が運営する作家養成スクール「東京作家大学(東作大)」で講師を勤めるエッセイストの島敏光さんの再登場! 前回は放送作家協会創立のエピソードを綴っていただきましたが、今回はシネマリポーターとして、また、オールディーズの解説でも活躍する島さんの映画と音楽にまつわるお金のお話です。

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映画に使われるあのヒット曲

島敏光さんの写真島敏光
エッセイスト タレント
東京作家大学講師

スクリーンからは多種多様な音楽が流れて来る。
映画の中で最も多く使われた曲は何かと尋ねられても、にわかには思い付かないかもしれないが、その答を聞けばすぐにだれもが納得するだろう。

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曲名は「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」。
邦画、洋画を問わず、誕生パーティーのシーンでは必ずと言っていいほど、出演者のだれかがケーキを運びながら歌っている。

では、オールディーズ・ミュージックはどうだろう?
1973年の「アメリカン・グラフィティー」の登場以来、後にオールディーズと呼ばれるなつかしい欧米のポップスが流れる機会が増えて来た。
プリティ・ウーマン」「スタンド・バイ・ミー」「ラ・バンバ」等のヒット作品も次々に生み出された。

どれほどのオールディーズがスクリーンに甦ったのか?
オールディーズ・マニアで粘着質の私は、1973~2000年の間に日本で公開された洋画をしらみつぶしにチェックした。その数、約4300本!

私の調べた限りは第1位は「好きにならずにいられない」。

この曲は「グローイング・アップ3 恋のチューインガム」「キャスパー」「恋しくて」等、計8作品で効果的に使われている。
賢い人は”恋にアタフタするのは愚か者だけ”と言うけれど、それでも私は恋をせずにはいられない」という甘いラブソングが、幾多の恋の行方を盛り上げて来た。

言うまでもなくエルヴィス・プレスリーの代表曲の一つであるが、流れて来るのはほとんどがエルヴィスのそっくりさんか、別のアーティストのカヴァー。エルヴィスの楽曲の使用料がきわめて高額であるからだ。

エルヴィス・プレスリーのイメージエルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない」が1位。しかし流れて来るのはほとんどがエルヴィスのそっくりさんか、別のアーティストのカヴァー   
写真:nito / Shutterstock.com

そして、同率第1位(計8作品で流れる)は何と驚いたことに、「マネー」だった!
俺が欲しいものはお金!」という欲望に素直なシンプル内容で、「アニマル・ハウス」「フラミンゴ・キッド」の他、B級映画の銀行強盗やカジノなど、お金の乱れ飛ぶシーンに賑やかに流れて来る。

この曲はビートルズのナンバーとして知られるが、オリジナルは黒人シンガーのバレット・ストロング。ビートルズの楽曲の使用料はエルヴィス以上に高く、その上に許諾を得るのが面倒なので、ほとんどがバレット版が使われている。

映画で使い勝手がいい曲って?

せっかくなので、映画で流れたオールディーズ3位以下、計8曲を紹介しよう。

3位「グリーン・オニオンズ」(計7作品)
この曲は日本ではあまり知られていないブッカー・T&ザ・MG’sのオルガンを中心にしたソウルフルなインストゥルメンタル・サウンド。歌詞が邪魔しないので使い勝手がいいのだろう。

以下4位(計6作品)はすべて同率で、
オンリー・ユー
煙が目にしみる
スタンド・バイ・ミー
トゥッティ・フルッティ
火の玉ロック
夢のカリフォルニア
リトル・ダーリン
と、ラブソングを中心に7曲が並んだ。黒人グループのレパートリーが2曲も入っている。

The Beatlesのイメージ同率1位は、ビートルズの楽曲として知られる「マネー」。映画でもっとも使われたオールディーズの楽曲の1位は、「恋」と「お金」がテーマだった
写真:PHLD Luca / Shutterstock.com

一方では、日本ではオールディーズ御三家と呼ばれるポール・アンカ、ニール・セダカ、コニー・フランシスのレパートリーがベスト10に入っていない。「ダイアナ」も「おゝ!キャロル」も「ボーイ・ハント」も、さらに言えば女性シンガーのレパートリーがすべて圏外に去っている。

これはなかなか意外な結果だ。
このリストから様々なことが読み取れるが、1位の楽曲のモチーフが「恋」と「お金」
映画は、そして世の中は誕生以来「恋とお金」が廻しているようだ。

次回は久野麗さんへ、バトンタッチ!

ぜひ、読んでください!

映画で甦るオールディーズ&プログラム・コレクション』表紙)

島敏光さんの著書、『映画で甦るオールディーズ&プログラム・コレクション』はこちらから

東京作家大学のロゴマーク

島敏光さんがエッセイ講座の講師をつとめる東京作家大学はこちらから

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