「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、日経平均株価への連動を目指すインデックスファンドを題材に、投資信託の手数料と、投資のパフォーマンスの関係について考察します。

  • 「伝統的」な証券会社や銀行ではファンドの手数料が高く、「ネット系」は安い傾向
  • 信託報酬率の差が日々の騰落率の差となって表れ、1年経てば決定的な差になる
  • 投資初心者は「伝統的」を選んでも、将来的には「ネット系」への移行を考えたい

為替は円安傾向のまま推移していますね。筆者は最近、円安ではなく「円弱(えんじゃく)」と表現しています。この円安は「金利の差が、為替の決定的要因ではない」と踏んでいます。現在の為替レートは、日本の経済力を表現しているのではないでしょうか? 為替を決めるのは需要です。

さて、1人につき1口座しか開くことができないNISA口座ですが。やはり証券会社、それもネット証券が主流なのでしょうか? NISA口座は、もちろん銀行でも開設することができます。しかし、銀行ですと上場株式やETF、それにREITなどへの投資ができません。投資信託(=本稿では以下、ファンドといいます)だけの投資でしたら、銀行でNISA口座もありですね。

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「ネット系」か、「伝統的」か?

ネット証券やネット銀行とは、どのようなものなのでしょうか? NISAを含む口座開設のような事務的なことから、先述の為替のような巨視的な話題を踏まえながら自身にふさわしい投資商品の選択まで、商品の購入に至るまでの一切を、自身で行います。とはいっても、コールセンターなども設置されていますから、電話で尋ねることもできます。しかしコールセンターは「電話を架けるたびに違う人が対応する」ことも珍しくありません。ですので、継続的なフォローを望むのでしたら、やはりネット系ではない、担当者が付く、伝統的な証券会社や銀行のほうが望ましいでしょう。

では「ネット系」と「伝統的」との違いは、担当者の有無だけでしょうか?

担当者がいるということは、その分の人件費が必要になりますね。そして人件費は、ファンドの手数料や株式売買手数料などに反映されることになります。

投資について相談

「伝統的」な証券会社や銀行で、投資について相談できる担当者のおかげで、十分な投資成果が得られればいいのですが……

ファンドには購入時手数料がかかる場合があります。NISAの「つみたて投資枠」でしたら、ファンドの購入時手数料はゼロと決まっているので、気にする必要はありません。しかし、NISAの「成長投資枠」や、NISA口座以外でのファンド購入ですと、購入時手数料が掛かる場合もあります。

ちなみに筆者が利用しているネット証券ですと、全てのファンドが購入時手数料ゼロです。しかし、筆者が利用している銀行の場合、購入時手数料があります。購入時手数料は3.3%が多い印象です。ファンドへの投資を始めた時点で、手数料分3.3%の負けですからね。この有無は大きいですよね。

それこそ担当者が付いているからこその購入時手数料なら、ぜひパフォーマンスに結び付けて欲しいところです。しかし、残念ながら、筆者は担当者に一度も会ったことがありませんし、そもそも担当者が誰なのかも分かりません。

手数料の違いがパフォーマンスの違いに

【図表】三菱UFJアセットマネジメントの投資信託の騰落率と信託報酬率の例
ファンド名称 前日比
騰落率
信託
報酬率
マザーファンド
<DC>インデックスファンド225 0.41% 0.220% 日経225
マザーファンド
eMAXIS Slim
国内株式(日経平均)
0.42% 0.143% 日経225
マザーファンド
eMAXIS 日経225インデックス 0.41% 0.440% 日経225
マザーファンド
三菱UFJ インデックス
225オープン
0.41% 0.550% 日経225
マザーファンド
三菱UFJ インデックス
225オープン(確定拠出年金)
0.41% 0.220% 日経225
マザーファンド
インデックスファンド225 0.41% 0.550% 日経225
マザーファンド

※はファンドの残高によって、信託報酬率はさらに低くなる仕組みがある

図表は三菱UFJアセットマネジメントのファンドの、ある日の騰落率と信託報酬率です。図表の全てのファンドは、日経平均株価(日経225)に追随するパフォーマンスを目指しています。ですので、ファンドの名称も似通っていますし、投資対象となるマザーファンドも皆、同じです。ですが、信託報酬率(年率)が異なっているのが分かります。年率ですので、この率を日割り計算した数値が日々の基準価額に影響してきます。

「日割りだから、大したことない」とお考えの方がいても不思議ではありません。ですが、現実には信託報酬率の違いがパフォーマンスに反映されています。騰落率のうち、一つだけ高いものがありますね。とはいっても、「0.01%だから大したことはない」と思われるかもしれません。しかし、この0.01%という数値は、1日だけの違いによるものです。預金金利のような年率ではありません。1年経てば、決定的なパフォーマンスの差として表れます。

しかも、投資対象は他のファンドと同じです。では、0.01%の違いの理由は、どこにあるのでしょうか? 先述の信託報酬率です。騰落率が高いこのファンドの信託報酬が最も低く設定されているのが分かります。

信託報酬の低いファンドは「ネット系」専用

この信託報酬の低いファンドは「ネット系」専用の商品です。しかし、ファンドのホームページにある販売会社の一覧を見ると、「伝統的」な証券会社や銀行の名前が載っています。「伝統的」な証券会社などで、このファンドに投資する場合には、担当者やお店を介さず「ネットかアプリで投資してください」とあります。「伝統的」であっても、その対応は「ネット系」と同じです。

この信託報酬の低いファンドは、インターネットという環境を活かし、目論見書や運用報告書の交付は「WEB(電子交付)のみ」とするなど、徹底したコスト削減を図っています。つまり、「ネット系」を想定した、徹底したコスト削減によって実現した信託報酬率の高さです。

まとめに代えて

本稿が想定する読者層、つまり50歳以上の方ですと、「やっぱり人がいてくれた方が安心」とか、「ネットやアプリでは心配」という方も少なくないでしょう。でしたら、購入時手数料があり、信託報酬率が高く設定されているファンドを品揃えとしている「伝統的」な証券会社や銀行を選ぶしかないですよね……。

あとは担当者のアドバイスが有意義なものであれば、購入時手数料や信託報酬などのコストを取り返すパフォーマンスを得ることができるかもしれません。などと冷たく突き放すつもりはありませんが、やはり投資を始めたばかりの頃は担当者が付く「伝統的」な証券会社や銀行を選んだとしても、3~5年ほど投資経験を積んだら、「ネット系」に移るという考え方もありだと思います。

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