宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、高齢のご両親と同居する相談者が、老いや介護などの老後問題とどう向き合えば良いかを考えていきます。
- 老後に向けた5つの問題提起に対して、自分で考えることが問題解決への一歩になる
- 同居する家族が親の介護を見ることになりやすい。その最大の対策は「お金」
- 「親が元気なうちに何から始めるか」が重要。9つの事柄に沿って準備を進める
老後に向けた5つの問題提起
【質問】
僕の両親、二人とも83歳を超えています。両親とは同居していて、年相応の生活を送れているんじゃないかと思っています。ただ、厄介なことに、母に軽い物忘れなど増えてきているのです。身内にも認知症がいることもあって、先を考えると介護にならないか心配です。両親の老いを、同居しながらどう考えていけば良いのかわかりません。対策法などありますか?
今回は相談者からの問題提起である「親の介護」など、老後問題について考えていきます。
老いは、ご自身を含め誰にも必ずやってきます。まず身近なところでは、自身の親に関わるさまざまな難題が次から次へと降りかかり、老後の生活をどうすべきかという問題提起がされていくこととなります。ご自身を核としていくと、まずは「親」という問題を考えなくてはなりません。
今を生きていく中で、老いは考えたくもない問題ですが、そこを考えないと後々の争いに皆を巻き込むことにもなります。悲しいことですが、「親問題」は「自分問題」へとつながっていくものです。
そこで今回からは、お金がある、ないに関わらず、誰もが直面する可能性があり得る「認知症」「介護」などについて、家族とどう生活していけば良いかを問題提起しながら、解決策につなげていこうと思います。
相談者は、母親に軽い物忘れがあるということで、仮にMCI(軽度認知症)の発症があるとすれば、やらなければならないことが一気に増えていきます。
まずは、次に挙げる5つの問題提起について考えてみてください。そこからの発想が大事な原点となり、問題解決へと進む一歩にもなります。
① あなたとご両親はお元気ですか? 衰えを感じたことはありますか?
② ご両親のかかりつけのお医者様に、あなたはご挨拶したことはありますか?
③ 「お父さん、お母さんのためだから」と言うのは、本当にそうでしょうか? 自分たちの都合に合ったようにしていないでしょうか?
④ あなたとご両親が介護状態になったらどうしますか? 対策など考えていますか?
⑤ 親が元気なうちに、何から始めようと思っていますか?
どうですか? どれを取っても大切なことだとうなずくことでしょう。私自身は父親と同居していることもあって、③以外は実行済みですが、特に④問題などのために、何があっても動けるように、直近では妻が仕事を退職までしてくれました。これには感謝しかありませんでした。
そして、問題提起がなされたということで次に進めていきます。
介護の最大の対策は「お金」
介護には、「お金」が最後の最後まで付きまとうことになります。親の介護費用の負担はどうするのか? 兄弟がいるのに誰も向き合わない。親と同居しているだけで自分の介護負担がますます大きくなり、割が合わない。これが実感で、多くの人がまさしくそうなっていくことでしょう。
核家族化と「お一人様」が増えたことで大家族の経験に乏しい人が増大した結果、人の痛みに共感できない人も増える時代です。親の介護は同居人が診ていくものが当たり前になってしまっています。
介護の費用負担を一人で背負わないためにはやるべきことは「現状把握」「知識習得」「早めの対策」しかありませんが、私が思う最大の対策は「お金」しかないと思います。何が起きても争いが起きないための介護費用と、そして遺言しかありません。親が自分の力で終末期を完結できれば素晴らしいことです。全ての子ども世代にとって、親の介護は未知の世界でしかありません。どうなっていくのか誰にもわからないことです。
元気なうちにやっておきたい9のこと
解決策は、最初の問題提起の⑤「親が元気なうちに、何から始めようと思っていますか?」が、全ての面において一番重要になってくると考えます。「元気なうちにやっておきたい9のこと」として、重要な事柄から順番にまとめてみましたので是非実行してみてください。
1. 親とのコミュニケーションを図っておく。親の話を聞く機会を増やして、これからやりたいことなど聞き出しておく
孫、ひ孫などを含めたコミュニケーションがあれば一層の本音を聞くことができます。ただしこの時に、知識格差など思考の遅さがあっても、親に説教じみたことをしてはいけません。老いは仕方ないのです。
2. 親が介護になった時にどうするのかを家族で話し合う
介護制度の知識、自治体での高齢者サービスなど、「誰が、どのように親をサポートしていくのか?」が重要です。
3. 自分自身と親の経済状況を把握しておく
資産状況、負債状況を知っておくことで、介護から相続までのお金の使い方を知りえることができます。
4. 親の終末期の考えと気持ちを聞いておく
親がなぜ、そういう行動を起こすのか? 背景を知っておくことが大切です。
「子供に話を聞いてほしい」「いつまでも子どもたちの役に立ちたい」という背景があると、オレオレ詐欺に遭うなど詐欺に引っかかってしまうことがあります。
「迷惑をかけたくないから健康でいたい」という思いから、風邪をひいたくらいでは話さない、高い健康食品に手を出すということにつながっていきます。
「迷惑をかけたくないから自分でお金を増やしたい」と考えていると、儲かる話に手を出してしまいます。
5. かかりつけ医やご近所さんに挨拶しておく
病気、認知症の徘徊などに備えて、自分の連絡先を伝えておきます(自治会長、民生委員など)。
6. 認知症について学んでおく
7. 親の「老い」を受け入れる
年を重ねると、できないことも出てきます。失禁、つまずきなどもありますが、「老い」は病気ではありません。「老いる」とはどういうことか知る必要があります。
8. 親の財産の守り方を知っておく
特殊詐欺などから親を守るすべを講じる、認知症になっても困らないための対策を講じておく(成年後見制度、家族信託など)。
9. 自分自身と親の現状を把握しておく
健康状態、家の環境(リフォームなど)、交友関係を把握しておきます。
さあ、どうでしょうか? あなたとご家族はどれだけの項目を実行されていますか? まだまだできていない人が大半ではないですか? あなたは何から始めますか?
次回は8.の「親の財産の守り方」について掘り下げていきます。