現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第83回は、2000年代にメガネ業界に価格破壊を巻き起こし、現在はメガネの小売りで国内シェア第2位の「JINS」を国内外に展開する、ジンズホールディングス(3046)をご紹介します。

  • ジンズHDの強みは、企画・生産・流通・販売までを一貫して行うSPA方式
  • 軽量メガネの販売本数は国内トップ。高屈折率の「JINS極薄レンズ」も展開
  • 今期は過去最高益を見込む。株価は反騰ムードで上場来高値を試す展開にも期待

ジンズホールディングス(3046)はどんな会社?

ジンズホールディングス社はメガネなどの専門チェーンの「JINS」を国内外で展開しています。視力補正メガネだけでなく、サングラスやアクセサリーなどの幅広い商品ラインナップを提供し、顧客の多様なニーズに応えています。

低価格、高品質にこだわりつつ、20~30代を中心としたファッションやトレンド感度の高い消費者にも支持されるデザインを中心にブランド展開を進めています。店舗での展開のほか、EC(電子商取引)サイトによる直販、過疎地域への移動販売車での販促活動、コーヒーショップやベーカリーカフェ事業なども手がけています。

社名のジンズは、創業者の田中仁代表取締役CEOの名前に由来しています。1988年に前身のジェイアイエヌを群馬県前橋市に設立し、服飾雑貨の製造などを手がけていました。その後はメガネなどに舵をきり、2001年からメガネブランド「JINS」の展開を始め、福岡天神に1号店を出店しました。現在では日本で約500店舗、他台湾で約60店舗、中国・香港で約170店舗を展開し、国内アジア圏で事業展開を進めています。

香港のJINS
JINSは香港のショッピングセンターにも出店している
Sorbis / Shutterstock.com

SPA(製造小売りモデル)展開が強み

同社の強みは企画・生産・流通・販売までを自社で一貫して行うSPA方式です。中間マージンやブランド料などのコストを大幅にカットしつつ、ユーザーの声をスピーディに反映させ製品づくりに生かす体制を整えています。

同社は業界に先駆けて、眼鏡とレンズを均一料金の低価格で販売するオールインワンプライスを導入しました。そのほかにも、軽量でかけ心地の良さを追求したエアフレームモデルなどの特徴を生かしたアイウェアとしてのブランド展開が奏功し、現在では日本国内の軽量メガネの販売本数でJINSのモデルがトップとなっています。

さらにメガネレンズの厚さを薄くしたいというニーズに応えた、世界最高の屈折率プレミアムレンズとされている「JINS極薄レンズ」などの競争力のあるオプションレンズ商品なども展開し、増収につながっています。

ジンズホールディングス(3046)の業績や株価は?

ジンズホールディングスの今期2025年8月期決算は売上高が前期比9%増の901億円、営業利益が9%増の85億円と、ともに過去最高を見込んでいます。

足元では店舗運営や在庫管理などのオペレーション改善により、国内の既存店売上高の伸びが続いています。戦略的な広告宣伝投資も売り上げ増につながっています。国内のメガネの年間販売本数は3.4%増の597万本と新規出店効果による伸びを予想しています。

中国では景気低迷で不採算となった店舗の撤退を進めつつ、利益が見込める大都市圏への出店など構造改革を進めます。景気が堅調な米国では店舗数は4店舗ほどとなっていますが、値上げにより利益率が上昇したこともあり、今期から出店を再開する見通しです。

【図表】ジンズホールディングスの株価(2021年4月~2025年1月24日、週足)
ジンズホールディングスの株価

1月24日の終値は6530円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約66万円、予想配当利回りは1.0%です。株主優待は毎年3月末時点の100株以上の株主に、同社の店舗やオンラインショップで利用できる9000円分の優待券がもらえます。

株価は中長期での上昇トレンドが続いていましたが、21年4月の上場来高値8890円からは調整局面となっていました。しかし23年から24年末にかけては株価は下値を固めたのち、反騰ムードとなり7000円近辺まで再度上昇しています。直近発表された24年12月の国内JINSの月次既存店売上高は前年同月比24%増と、2桁%以上の増収トレンドが続いています。月次売上増などで今期の最高益更新への確度が高まってくれば、株価は再度上昇し、上場来高値を試す展開にも期待できそうです。