「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、米国大統領に返り咲いたトランプ氏の言動が物議を醸す中で、これからの4年間、投資のリスクとどう向き合っていけばいいかを考えます。

  • トランプ大統領の就任直後、株価は上昇。「ハイリスク」への序章の可能性も
  • 投資のリスクとは「将来の不確かさ」。トランプ政権は「不確かな4年間」となるか
  • 4年の間に「投資のゴール」を前倒しすること、現金などで備えることも検討したい

とうとうこの日が来てしまいましたね。アメリカの大統領選挙期間中、カマラ・ハリス副大統領(当時)の笑顔には期待しておりました。しかし、アメリカ国民の選択は違っていたようですね。
1月20日、アメリカ第47代大統領の就任を恐怖と緊張とともに迎えた方もいらっしゃるのではないでしょうか? そして、いざ蓋を開けてみると、いわゆるご祝儀相場で迎えられたような印象です(表をご参照ください)。
この出来事を、どのように感じましたか?

【図表】トランプ大統領就任翌日の主要株価指数の動向
国・日付 株価指数 前日比
米国
1月21日終値
NYダウ 44,025.81 +537.98
S&P500 6,049.24 +52.58
NASDAQ 19,756.78 +126.58
日本
1月22日終値
日経平均株価 39,646.25 +618.27
TOPIX 2,737.19 +23.69

株価躍進の理由はご祝儀だけ?

NY株も、日本株も、株価は大きく伸びました。恐怖と緊張で迎えたはずの大統領でした。しかし、実際に始まってみると、様子が違っていたようです。様子が違っていたとは「関税などが、就任前の主張とは異なり、緩やかだった」というものです。……そのために株価が躍進した、というわけです。

筆者は安堵とともに、「ハイリスク」の序章だとも感じました。

リスク=将来への不確かさとは?

では、リスクとは何でしょうか?

投資の世界でリスクとは、「将来への不確かさ」を指します。この「不確かさ」とは、「損失」だけを指すものではありません。「不確かさ」には「利益」も含みます。
そして、そもそも投資とは「将来の不確かさ」に投資するともいえます。この「不確かさ」という言葉を、もう少し円やかな表現にすると……筆者が別の稿で繰り返し述べている「未知の未来への投資」なのです。

株価が大きく伸びた……これもリスク?

いざ蓋を開けてみると、就任前に比べて「関税などの主張が緩やかだった」、それゆえに株価が伸びた。これを別の言葉で表現するならば……蓋を開けてみるまで、何があるか分からない、ということではないでしょうか。就任当日は、まさに「不確かな日」だったわけです。

47代は「いつ、何をしでかすか分からない」人が4年間

さて、第47代のアメリカ大統領は「いつ、何をしでかすか分からない」という評価もあるようです。しかも、最側近が大統領とは逆の主張をしていた、という報道もあるくらいです。その再側近とは、大成功している著名な実業家であり、著名なSNSを運営する会社を買収しています。ですので発言力もさることながら、大統領本人とともに、一挙手一投足一言一句に至るまで、世間の、いや世界の耳目が集まっています。

投資の世界では、アメリカは「世界一強」というよりも、「世界一響」ということは、前回、述べました。加えて「何をしでかすか……」という人物なのです。いきおい、この大統領とその側近たちへの関心が集まっています。その結果、他の国の政策や外交が振り回されるだけでなく、投資家の投資行動も右往左往することになるのです。

私たちは、今後「不確か極まりない4年間」を経験することになるのです。

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今後、4年の間に「投資のゴール」を迎えるなら?

いつかは、「投資のゴール」を迎えることになるのでしょうか?
では、そもそも「投資のゴール」とは何か? 具体的には「収入の変化」ですね。

例えば「退職して年金生活に入る」とか、「役職定年を迎える」など、ある程度、計画的なものあります。そうではなくて「家族の中に介護や闘病生活に入った人がいる」「子どもが精神を病み、働けなくなった」など、ご本人やご家族の不測のライフイベントも含まれます。

もし「収入の変化」が計画的に見込まれるのでしたら、この4年間のうちに「前倒しして」投資のゴールを迎えることを検討する必要があるかもしれません。
なお、こういう場合、保有している株式や投資信託を一度に解約(売却)する必要はありません。少しずつ、段階的に行う方法も考えられます。

さて、問題はご本人やご家族の不測のライフイベントです。まさに、投資家本人にとっての「不確かさ」とも言えます。
これは初期費用を見積もり、早い段階で現金や保険等で準備するのも良いかもしれません。ただし現金も保険も、どちらも不確実ではないもののインフレには弱いという点が挙げられます。
別の稿でも申し上げましたが金融資産のうち「100-(投資家本人の)年齢」で計算した割合(%)の分を、まず現金で用意するのが目安かもしれません。

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まとめに代えて

投資とは「不確かなものへの投資」、これが基本です。そして、これからの4年間は、世界一響のアメリカによって、ますます「不確か」になるのです。
覚悟とともに、振り回される世界を見て、楽しめるだけの余裕を持っていたいものです。