労働者が仕事や通勤で病気・ケガをした場合に、様々な補償を受けられる労災保険。会社に勤める労働者のための制度であり、一部の業種・職種を除いて、フリーランスの人は補償対象外となっていました。しかし、2024年11月に特別加入の範囲が拡大、業種・職種に関係なく、労災保険への特別加入が可能になりました。

  • 2024年11月の制度改正でフリーランスの労災保険への特別加入の範囲が拡大
  • 特別加入ができるのは、主にBtoB向けの「特定フリーランス事業」を行う事業者
  • もしもの時の備えとして労災保険への特別加入も視野に入れておきたい

フリーランスが労災保険の特別加入対象に

労災保険の特別加入とは、労働者ではなくても、労災保険へ任意で加入できる制度です。労災保険へ特別加入をすることで、会社勤めの労働者と同じく、仕事中や通勤中の病気・ケガや障害などの補償を受けられるようになります(労災保険の補償内容についてはこちらの記事で詳しくご説明しています)。

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特別加入ができるのは、企業などから業務委託を受けて物品の製造や情報成果物の作成(デザイン、コンテンツ作成など)、役務の提供(通訳、営業代行、データ入力など)といった「特定フリーランス事業」を行うフリーランスです。

いわゆるBtoBの事業が対象ですが、そうした事業を行う人が同種の事業を消費者から委託されたBtoCの場合でも補償されます。

特別加入をした場合、加入者は3,500円~25,000円の範囲で給付基礎日額を設定することができ、この給付基礎日額を基に補償額と保険料が決まります。

保険料は、事業ごとに定められた保険料率×給付基礎日額で算出されます。給付基礎日額が少なければ保険料は安くなりますが、補償額もその分低くなります。
反対に給付基礎日額を多くすれば補償額は大きくできますが、保険料は高くなります。

加入を希望する場合、特別加入団体として承認されている団体を経由して、申し込みを行います。特別加入団体とは、対象となる事業者を構成員とした窓口団体です。

トラリピインタビュー

特定加入団体はいくつかありますが、特定フリーランス事業の場合、「連合フリーランス労災保険センター」を通じて申し込み・手続きを行うこととなっています(詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください)。

対象にならない場合は労災保険に特別加入できない?

では、上記のような特定フリーランス事業に該当しない事業や作業を行っている場合は労災保険には加入できないのでしょうか。

上でも書いた通り、原則BtoBの事業に携わっている人が対象ですので、一般消費者(toC)としか取引していない場合などは、特定フリーランス事業とは認められず、労災保険への特別加入もできません。

また、以下の表に記載されている事業や作業に従事している人については、特定フリーランス事業としてではなく、これまでの特別加入制度と同じく、特別加入団体を探して申請を行う必要があります

【図表】特定フリーランス事業以外の特別加入の事業または作業
個人タクシー業者、個人貨物運送業者など(※1) 特定農作業従事者(※2)
建設業の一人親方等指定農業機械作業従事者(※3) 漁船による自営漁業者
国・地方等が実施する訓練従事者 林業の一人親方等
家内労働者等医薬品の配置販売業者 労働組合等の一人専従役員
再生資源取扱業者 介護作業従事者
船員法第1条規定の船員 家事支援従事者(いわゆる家政婦(夫))
柔道整復師 芸能関係作業従事者
創業支援等措置に基づく高年齢者 アニメーション制作作業従事者
あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師 ITフリーランス
歯科技工士
  • 自動車や原動機付自転車を使用したフードデリバリーサービス、貨物軽自動車運送事業者(黒ナンバー)など
  • 年間総販売額万円以上または経営耕地面積2ヘクタール以上を有しており、所定の作業に従事する方
  • 販売額や耕地面積に関係なく、トラクター等の所定の機械を使用して土地の耕作等の作業に従事する方

出所:厚生労働省「特定フリーランス事業に加入できる場合・できない場合

どのような特別加入団体があるかについては、労働基準監督署で確認ができます。最寄りの労働基準監督署に問合せをしてみてください。
なお、特別加入団体によっては加入費などがかかることもあるようですので、忘れずに確認しておきましょう。

特別加入後は、会社勤めの方と同様、仕事中・通勤中のケガや病気について保険給付を受けられるようになります。給付の手続きは基本的に自身で行うことになりますが、団体によってはその申請や書類準備についてもサポートを受けられる場合もあります。これもあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

フリーランスはリスクに備える手段の検討を

フリーランスとして働いている人の場合、ケガなどで療養が必要になると、会社員などと比べて受けられる公的保障が手薄のため、生活への影響も大きくなってしまいがちです。
そうした不安を軽減できるように、もしもの時の備えとして労災保険への特別加入も視野に入れておくと良いでしょう。

ただし、業務とは関係ない病気やケガについては労災保険で対応できませんので、民間保険での自助も備えとして考えておきたいところです。
フリーランスの保険選びについては、こちらの記事で解説していますので、参考にしてみてください。

フリーランス・個人事業主の保険選びのコツ