「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回も「50歳以上の方のためのNISA」をテーマに、投資信託のメリットである「投資対象の分散」について詳しく見ていきます。
- 個別銘柄で投資対象の分散を行う場合、銘柄選択と投資資金が課題となる
- 分散投資の課題は投資信託なら解決できる。複数の銘柄に1万円以下で投資が可能
- 投資信託なら倒産のリスクを避けられるが、新NISA対象商品から選ぶのは難しい
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皆さん、こんにちは。世の中、どことなく「賃上げ」ムードですね。筆者のようなフリーランスですと、「賃上げ」の恩恵というのは、まずあり得ません。むしろ、発注元の社員が「賃上げをするので」という理由で、単価の切り下げを覚悟しなくてはなりません。今のところ、覚悟は現実化しておらず、覚悟だけで済んでいますが。
ということで、投資でパフォーマンスを挙げ、世間に追い付け、追い越せというスタンスで臨んでおります。
とはいっても、投資には不安やリスクが付きもの。その不安やリスクをゼロにすることはできませんが、「抑える」選択肢はあります。それが分散投資です。
本稿では、分散投資について見ていくことにしましょう。
分散投資を具現化したものが投資信託
投資信託の究極は、やはり「分散投資」にあると言っても過言ではありません。
投資には「一つのカゴに卵を全部盛るな」という俚諺(りげん)があります。この俚諺を投資商品として具現化したのが投資信託だといえます。
そもそも、分散投資って何?
一口に分散投資とは言っても、「投資対象(銘柄と資産)の分散」と「国や地域の分散」、それに「時間の分散」とがあります。
本稿では「投資対象(銘柄)の分散」に絞って見ていくことにします。
投資対象(銘柄)の分散とは?
銘柄とは「株式」、もう少しだけ具体的に「企業」と言うと、イメージしやすいと思います。要するに「複数の企業の株式」に投資するのが「銘柄の分散」です。
では、こういう場合は、いかがでしょうか?
「京王電鉄と小田急電鉄の、それぞれの株式に投資をする」
一応、2社だけですが「複数の株式」に投資をしています。しかし、これでは分散になりません。どちらも新宿駅を起点に、東京の西側に鉄道やバスなどの事業を展開する会社という点では、ほぼ同じです。
とはいっても、観光地という点に絞ると「京王は高尾山、小田急は箱根と、分散ができているのでは?」という指摘をいただきそうですが……そういう突っ込みをなさる方は、ご自身でよく研究なさっていただきたい、という結論になってしまいます。
今度は、以下のような場合は、いかがでしょうか?
「東京電力とトヨタ自動車の、それぞれの株式に投資をする」
やはり、2社だけですが「複数の株式」に投資をしていますね。これは立派な分散投資です。なぜでしょうか?
細かなことはさておき、東京電力は原油などの資源を海外から輸入し、国内の発電設備で電気を作って販売する企業です。一方のトヨタ自動車は乗用車などを製造し、国内はもちろん、海外にも輸出しています。「海外から輸入する東京電力」と「海外に輸出するトヨタ自動車」と、イメージとしては「逆の矢印」だと言えそうです。この「逆の矢印」のイメージこそ、分散投資です。
もっとも、「最近はハイブリッドカーや電気自動車が普及しているから、逆の矢印のイメージというのも苦しいのでは?」という指摘をいただきそうですが……もう、そういう突っ込みをなさる方は、ご自身でよく研究なさっていただきたい、という結論になってしまいます。
投資対象(銘柄)の分散の課題
要するに「複数の企業の株式に投資しましょう」というのが「投資対象(銘柄と資産)の分散」投資です。しかし「複数」とはいっても、どうやら、闇雲に「複数の企業の株式」に投資すれば良いということでもなさそうですね。
それに、そもそも「2社」だけで良いのか、投資する企業の数も悩ましいところです。しかも筆者が「立派な分散投資です」と述べた組み合わせも、ハイブリッドカーや電気自動車などを踏まえると、実は「分散投資にならなそう」な気もしますね。
そして、もっと悩ましいのが投資するための資金です。下の表は、先述した企業の株式の2024年1月26日の終値です。
銘柄 (会社名) |
株価 (2024/1/26) |
1単元 (1回の投資単位) |
1単元当たりの 投資額 |
---|---|---|---|
京王電鉄 | 4,357円 | ×100株 | 435,700円 |
小田急電鉄 | 2,238円 | ×100株 | 223,800円 |
トヨタ自動車 | 2,892円 | ×100株 | 289,200円 |
東京電力 | 756円 | ×100株 | 75,600円 |
日本の株式は100株単位で投資していくのが原則です(ただし、証券会社によっては「ミニ株」や「単元未満投資」などの投資方法を整えているところもあり、1株から投資できる場合もあります)。もし、先ほど「立派な分散投資です」と述べたトヨタ自動車と東京電力の、それぞれの株式に投資しようと思ったら、364,800円の投資資金が必要です。
364,800円という金額が多いと感じるか、少ないと感じるかは、人それぞれだと思います。投資経験の有無によっても異なるでしょう。「多い」とお感じの方は、「もっと少額から投資したい」と思われるでしょう。また「少ない」とお感じの方には「同じ額でも、もっとたくさんの企業の株式に投資する選択肢がありますよ」とお伝えしたいですね。
分散の課題……投資信託なら解決できる
冒頭に述べた通り、投資信託の究極は分散投資にあります。そして投資信託では、「どの企業の株式に投資をするのか」という「投資対象(銘柄)の選択」は、専門家であるファンドマネージャーが厳選します。また、その数も30程度から、多いものでは3,000を超える企業に分散投資しています。
そして投資信託は、原則、最低1万円から投資することができます(証券会社によっては千円単位で投資できたり、100円から投資出来る場合もあるようです)。
投資信託なら1万円から、「3,000社を超える企業に対する分散投資」が可能なのです。
おまけ……「認めたくないものだな、若さ故の過ちというものを」
筆者は若かりし頃に読んだ、あるマネー誌に載っていたFP(ファイナンシャルプランナー)のコメントに基づき、当時の東京証券取引所第二部(現在の東証スタンダード)市場の運送業者の株式を買いました。
FPのアドバイス通り、配当金額もUPしたのですが……。不正会計が発覚し、投資してからわずか2年と経たずに上場廃止となってしまいました。筆者にとって、2つの投資の失敗のうちの1つです。手数料込みで配当金を差し引いても、28万円の損失となりました。
まとめに代えて
投資信託は、「倒産」というリスクを避けることできるのがメリットといえるでしょう。しかし、投資信託が、いかに分散投資といえども、「不安やリスク」がゼロになるわけではありません、というのは冒頭に述べた通りです。また、新NISAの対象になっている投資信託の中から、どのように選ぶかも悩ましいところです。
投資枠 | 種別 | 本数 |
---|---|---|
成長投資枠 | 投資信託 | 1849本 |
ETF・REIT | 301本 | |
つみたて投資枠 | 投資信託 | 273本 |
ETF | 8本 |
NISA成長投資枠の対象商品(投資信託協会)
つみたて投資枠対象商品届出一覧(金融庁)
例えば、一世を風靡して話題を独占している「オルカン」と言われる投資信託があります。「オルカン」とは「オールカントリー」、つまり「全世界の企業の株式を投資対象にした」投資信託のことです。「分散投資」という点では、究極と呼ぶにふさわしいかに感じます。ですが、筆者は「オルカン」には、全く魅力を感じないですね(感じ方は人それぞれです)。
投資信託を、どのように選ぶかの前に、もうしばらく「分散投資」のお話を続けさせていただきます。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。