資産運用を始める前にぜひ知っておきたいポイントをわかりやすく紹介する本連載。今回からは「基準価額」や「分配金」「個別元本」などの、投資信託に関する用語を解説していきます。

前回の記事「投資信託でできることを知ろう」はこちらから

「基準価額」とは

投資信託の時価が基準価額です。新聞やネットなどで確認できる基準価額は、投資信託1万口あたりの価額です。ほとんどの投資信託は、設定時の基準価額(1万口)を10,000円に設定し、運用をスタートします。

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基準価額の算出方法は?

株式に投資する投資信託の場合、日々の基準価額は以下の流れで算出されます。

① その投資信託が投資している株式の、終値での保有総額(終値×保有株数)を合計する
② 株の配当金を足す。総資産が算出されます
③ 総資産から信託報酬などの手数料を引く。純資産が算出されます
④ 純資産を総口数で割る。1口あたり基準価額になります
⑤ 1口当たり純資産×10,000口。新聞やネットで確認できる基準価額になります
※分配金を支払った場合はその分を純資産から引きます

基準価額を変動させる大きな要因は、その投資信託が投資している株や債券の価格変動です。

基準価額と株価のちがい

株式における株数の増減は、「増資」や「自社株買い」がない限り起こりません。ですから基本的に株価は、買う人が売る人よりも多ければ上昇し、逆に売る人が買う人より多ければ下落するオークション形式で決まります。

現役証券アナリストによる、「株価の決まり方」の解説はこちらから

投資信託の口数は、その投資信託を購入する人がいればその分の口数が増え、総口数もそれに伴い増えます。逆に解約する人が多ければその分の口数が減り、総口数も減少します。株数と違い、投資信託の総口数は日々変動するのです。

株価と違い基準価額はオークション形式で価額が決まるものではないため、その投資信託を買う人が多いと基準価額が上昇し、解約する人が多いと下落するわけではありません。

あくまでも、基準価額の算出方法のところで説明したように、投資信託が投資している株価の変動によって基準価額が変動します。また、投資信託の投資先が海外株式の場合は、為替変動によっても基準価額が変動します。

「分配金」とは

分配金はその投資信託が決算を行い、個々の投資家(購入者)の持っている口数に応じて支払われます。決算頻度は、年2回や年4回、年6回、毎月などがあり、それにより分配金を支払う回数も変わります。分配金は、決算の内容により増額、減額あるいは支払いをやめたりもします。

分配金は投資信託の純資産を取り崩して支払われますので、分配金を支払った分、基準価額は下がります。実際は、その間も投資先の株価は変動しているので、分配金を支払っても基準価額が上昇したり、支払った分配金以上に基準価額が下がることもあります。

投資信託の分配金

投資信託の分配金と、株式の配当金のちがい

株式の配当は、過去の利益から出す場合もありますが、一般的には当期純利益(税引き後)の中から保有株数に応じて株主に支払います。株式の場合は、時価総額(株価×発行済み株式数)と株式を発行している会社の純利益は別になりますので、配当を支払ってもそれによって時価総額が減るわけではありません。ここが、投資信託と異なる点です。

ただし、配当狙いの投資家が配当の権利確定日後にその株式を売却するため、株価が下がる場合もあります。

分配金と基準価額、個別元本の関係

では、分配金と基準価額、個別元本との関係についてみていきます。個別元本とは、それぞれの購入者における、投資信託の購入価額のことです。ただし、基準価額の変動と分配金の支払いにより、個別元本が下がることがあります。また、追加購入などで平均購入価額が上がると、個別元本も上昇します。
以下、2つのケースで個別元本の動きをみていきます。

①分配金を受け取っても個別元本が変わらないケース

基準価額が個別元本より高く、分配金を支払っても個別元本を下回らない場合、個別元本は下がりません。分配金に対して税金がかかります(NISAやつみたてNISAを利用する場合は、非課税となります)。

分配金を受け取っても個別元本が変わらないケース

投資信託の分配金

②分配金を受け取ると個別元本が下がるケース

個別元本が基準価額より高い場合に分配金を受け取ると、分配金の分だけ個別元本が下がります。元本の取り崩しになるので分配金に税金がかかりません

分配金を受け取ると個別元本が下がるケース

資産形成には分配金が出ない投資信託がおすすめ

今回は、「基準価額」と「分配金」「個別元本」の関係について、株価や配当と比較しながらみてきました。分配金を支払うと、その分確実に基準価額は下がります。資産形成を目的に投資信託に投資する方は、分配金を出さない、あるいは少額しか出さない投資信託を選ぶのがおすすめです。

次回は「アクティブ型」「パッシブ型」という投資信託の運用方法についてみていきます。

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