現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第68回は、LP(液化石油)ガスの販売を主力事業とする日本瓦斯(8174、日本ガス)をご紹介します。
- 日本瓦斯(日本ガス)は関東を中心に、LPガスの販売を主力事業としている
- スケールメリットとDXによる効率化で、ガス料金を関東の平均より約8%安く設定
- 今期の営業利益は過去最高を見込む。関東圏1位のシェアのさらなる拡大に期待
日本瓦斯(8174)はどんな会社?
日本瓦斯は、「ニチガス」ブランドで関東一円を中心にLPガスや都市ガス、電力などのエネルギーの小売り事業を展開しています。国内の人口減少で市場が成長する中でもM&A(合併・買収)により事業の拡大を続けています。主力事業はLP(液化石油)ガスの販売で、同社の売上高総利益の約6割を稼いでいます。LPガスはボンベによる配送で家庭用を主力としており、プロパンガスという別称が用いられることも多いです。
日本ガスは1955年に設立され、翌56年に日本住宅公団と提携し団地へのガス供給を開始しました。当時は日本の高度成長時期に当たり、エネルギー供給の需要が急速に伸びていました。また、1964年に行われた東京オリンピックでは聖火用のガスも供給しています。その後も成長を続け、転機が訪れたのは1997年です。この年にプロパンガスの自由化が実施され、販売事業が許可制から登録制に変更されました。これにより消費者が自由にプロパンガス業者を選ぶことができるようになり、いち早く同社は自由競争をスタートしました。
また、2011年には米金融大手のJPモルガングループと資本業務提携しました。現在の上場企業はIR(投資家向け広報)、株主還元強化などが当たり前になりつつありますが、いち早く資本市場を意識した経営に着手したのです。その結果2019年には、経済産業省・東京証券取引所が選定する「攻めのIT経営銘柄」に4年連続で選別されています。2021年には日本証券アナリスト協会の「アナリストによるディスクロージャー(情報開示)優良企業選定」のエネルギー部門で第1位に選ばれるなど投資家からの高評価が続いているのです。
プロパンガス業界での圧倒的な競争力
日本ガスの強みはプロパンガス業界での圧倒的な競争力です。元来プロパンガス業界は地域密着型の小規模事業者の多い業界です。関東圏だけでも約4600の事業者があり、そのほとんどの顧客数が1000件未満です。
これに対して日本ガスはスケールメリットとDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化を武器に、価格や効率で圧倒しています。日本ガスのプロパンガス料金は2月時点で10立方メートル当たり約7700円と、関東の平均よりも8%ほど安く設定しています。また、東京電力グループなどとの連携により、電気やインターネット、宅配水などのセット販売も伸びています。
競争力の秘密は、IT機器を活用した徹底的に効率化されたオペレーションです。他社が有人で行っているガスの検針をスマートメーターの導入により、自動化しています。また、神奈川県川崎市に他社の10倍以上の規模をもつプロパンガスの重点基地を設けており、道路の空いている夜間にAI(人工知能)が解析して策定した配送ルートで配送を行っています。
日本瓦斯(8174)の業績や株価は?
日本ガスは4月30日に今期2024年3月期の決算を発表しました。
売上高は前期比7%減の1943億円、営業利益は15%増の174億円となり、減収ながらも2桁%の営業増益で着地しました。高気温でプロパンガス、都市ガス、電気の販売量がやや低迷したものの、プロパンガスの原料価格が想定から低めに留まったことや経費のコントロールで増益となりました。
今期2025年3月期は売上高が3%増の2000億円、営業利益が15%増の200億円と、営業利益は過去最高を見込んでいます。
6月7日の終値は2334円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約24万円、予想配当利回りは3.96%と比較的高めです。
同社はいち早く持ち合い株の売却や株主還元の強化を進めており、高い成長率と高還元を両立させています。また、LPガスのシェアは関東圏で1位ではありますが17%に過ぎず、シェア拡大の余地は大きいとみられます。
株価も高成長の安定収益企業として右肩上がりの展開が続いており、今後も先行きに期待が持てるとみています。