2024年5月、改正雇用保険法が成立しました。雇用保険法とは、企業などに勤める労働者が失業など働き続けることが難しくなった場合の給付などを行う雇用保険について規定したものです。今回の改正では、スキルアップを支援する給付の拡充などが行われることとなりました。今回はその概要をご紹介していきます。

  • 雇用保険法改正に伴い、教育訓練給付金の一部の給付率が10月からアップする
  • 2028年には雇用保険の適用拡大も予定。パートタイマーの雇用保険加入も
  • 失業時に受け取れる給付も制限の緩和が予定されている

教育訓練給付金の給付率引き上げ

雇用保険から受け取れる給付金は多岐にわたります。その中の一つが、教育訓練給付金です。
教育訓練給付金とは、スキルアップによるキャリア形成支援を目的として用意された給付金です。
雇用保険に加入して一定期間厚生労働大臣指定の講座を受講・修了すると、その講座受講にかかった費用の一部を給付金として受け取れます。

講座には中長期的なキャリア形成を図るための専門実践教育訓練、労働者の速やかな再就職や早期キャリア形成のための特定一般教育訓練、雇用の安定・就職促進のための一般教育訓練の3種類があります。
今回の雇用保険法改正に伴い、このうち専門実践教育訓練と特定一般教育訓練を受けた際の給付率上限が10月より変更されます。
専門実践教育訓練の受講後に賃金がアップした場合や、特定一般教育訓練を受講したあとに資格取得や就職などができた場合には、受講費用の10%が追加で支給されます。

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この変更で、専門実践教育訓練は最大80%、特定一般教育訓練は最大50%の給付を受けられるようになります。

2028年からは雇用保険の適用拡大も予定

また、2028年と少し先にはなりますが、雇用保険の適用拡大も予定されています。

先述のとおり、雇用保険は労働者が働き続けることが難しくなった場合に、給付を受け取れます。その給付内容は失業時・教育訓練受講時・育児休業取得時・介護休業取得時など、多岐にわたります。
これらの給付を受け取るには、当然ながら雇用保険への加入が必要です。

雇用保険に加入するには、31日以上継続して就労することや、週の所定労働時間が20時間以上であることなどの要件を満たしている必要があります。
今回の雇用保険法改正に伴い、このうち所定労働時間の要件が緩和され、週の所定労働時間が10時間以上に変更されます。この変更で、これまで雇用保険の対象ではなかったパートタイマーの人なども雇用保険へ加入することとなり、上記のような給付を受け取れるようになります。

雇用保険の保険料は労働者を雇用している事業主との折半で、給料からの天引きで支払うことになります。

スキルアップのイメージスキルアップやキャリア支援を目的とした給付金が拡充されることになった

自己都合退職者の失業給付の給付制限も緩和を予定

雇用保険から失業時に受け取れる給付(基本手当)についても、制限緩和が予定されています。

失業給付は、会社の退職理由によって給付の開始時期などが異なります。会社の倒産などの会社都合の場合は必要な手続きを終えてから原則7日間の待期期間が経過すると、失業給付の受取ができるようになります。一方で、自己都合により退職をした場合、必要な手続きを終えてから7日間の待期期間に加えて、原則2カ月の給付制限期間を経てからでないと失業給付は受け取れません。

今回の雇用保険法改正により、この給付制限期間が2カ月から1カ月へと短縮される予定です。さらに、再就職に必要な教育訓練を自ら受けた場合には、給付制限期間が解除され、会社都合と同様に7日間の待期期間が経過すれば失業給付を受け取れるようになります。先述の教育訓練給付金の給付率引き上げもあるので、スキルアップを希望する人はより多様な選択が可能となりそうです。

こうした支援の拡充は、個人個人が自らのスキルアップ・キャリアアップを推進する意味を持っています。この機会に自分の働き方などについて考えてみるのも良いでしょう。資格取得などに興味がある人も、ぜひ一度教育訓練給付金などの制度について調べてみてくださいね。

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