宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマも「利回り」。前回ご紹介した「商品別利回りランキング」を受けて、今回は最も低リスクで利回りも低いと考えられる「債券」について考えていきます。
- 利回りは金融商品のリスクを考える目安。「年利20%」をうたう商品は怪しい
- 国債の利率は直近で年1%を超えた。変動型なら利上げの影響も期待できる
- 米国債は信用力も問題なく、円高が急に進まないと考えるなら利回りは魅力的
利回りの表示は、商品が怪しいかどうかの目安になる
【質問】
こんなに物価も上がってきてたいへん。お金を増やすのにはリスクは当たり前のことじゃけど、金利も上がってきたから、定期預金も良いちゃないですか? 安心、安全パイだし。
今回からは「利回り」をメインにした金融商品を、「利回りと変動リスク」の関係を見ながら、利回りが低い順に説明していきます。
利回りは価格変動リスクに比例して、通常はリスクが低いと、利回りも低くなります。
利回りの考え方は決して難しくはないですが、いつでも必ず当てはまる万能なものでもありません。しかしながら、1つの目安として利回りを考えるならば、それに踊らされることもありません。
例えば、「利回り20%」をうたう金融商品があったとします。まず、この20%の利回りが、10年かけての利回りなのか? それとも1年間での利回りなのか? これで話はずいぶんと違ってきます。
20%が1年間での利回りだとすれば、100万円の元手で、1年で20万円の儲けが出るというおいしい話です。ただ現在の日本の金利と比較すると、「20%確定」の利回りはあまりに高すぎます。だから、この商品は怪しく、何か裏があるのだとわかります。
金融商品の中では利回りが低めの「債券」
では、1年目安の外貨預金で3%の利回りはどうなのか? 不動産投資で年7%の利回りはリスクは高すぎるのか? これらの疑問が少しでも解決できるように説明していくのが今回の目的です。
まずは、前回の利回りランキングで利回りが低い順に取り上げた、①債券と②外貨預金を紐解いていくとします。
なお、今回の利回りの前提ですが、あくまで今の経済状況で、100万円を1年間限定で一括預け入れたとして、利回りがどのくらいになるのかを予想で示したものです。1年後の金融情勢がどうなるのかは誰にもわかりませんので加味しませんが、時折予想を交えながら解説していきます。
再確認します。令和7年10月末現在の銀行定期預金利率では、100万円に対して最高で税込み約5500円(0.55%)ほど、1年で金利が付きます。
さぁ、あなただったら、どう対応するのか? 自分の考えに置き換えて、どのような商品を選び、どう行動するのか考えてみてください。
それでは、現在一番変動リスクが低く、利回りも低いと思われる①債券について考えていきます。
債券についての詳細は第25回相談室で述べていますので、見ていただきたいのですが、簡単に言えば、国や会社などが、商品(債券)を担保にして資金を調達するというものです。
国主体の債券(国債)であれば、主に経済をよりよくするように導く財源とし、企業(社債)であれば自社が成長するための財源とします。そして、投資者は債券を買う見返りとして、利息を受け取れます。
いわゆる国や企業などの借金なので、借金を返済する日が来れば、投資額が全額戻って来ます。仮にお金が戻らなければ、破綻、倒産ということで、信用問題にもつながっていきます。
国内債と米国債の利回り、そして為替リスク
さらに債券を国で大きく分けると、国内債と外国債に分けられます。国内債は公共機関の借金にあたる公共債と、民間企業の借金にあたる民間債(社債)があり、さらに外国政府や外国企業が発行する外債があります。
例として今回は、国内債の公共債の1つである国債の中で、個人向け国債の「変動10年」(利回りは年1.08%)について見ていきます。
100万円分購入して、1年後解約したとして、半年経った時点での利息は5,400円。税引き後4,303円となります。半年後の金利の見直しで変動がなかったとしたら(実際は上昇見込みと思われますが)、1年後の利息は全部で8,606円です。
個人向け国債は金利固定型もありますが、最新(2025年10月)の適用利率がいずれも1.0%を超えたのは好材料です。日本の長期金利も上昇傾向にあり、変動型にはさらなるプラス効果が期待できそうです。
変わって米国債はどうなのか? 米国債に関しては、トランプ政権以降、ドルに対する信頼が緩んでいる傾向にあります。「米国債は大丈夫? リスクも高いのでは?」という声が高まっているのも事実ですが、債券は満期まで保有すれば、元本の確保と確定金利を確実に受け取れます。高利回りの今であれば、国の債務不履行が発生しない限り安泰で、破綻はあり得ないと考えて良いです。米国の信用力はまだまだ大丈夫。
また一番のリスクである為替は、長く保有することで為替リスクを低減する効果も期待できます。
米国債10年の今の年利回りは約4%です。将来的に円高が進んだとしても、買った時の為替レートが今の1ドル150円付近であれば、ある程度の円高水準までは損失は出ないと考えます。10年後に1ドル115円程度までであれば、十分ペイできるはずです。
そもそも、米国債は償還時(解約)に円に戻さなければ、為替差益は確定しません。米ドルのまま再投資するか、外貨MMFなどで運用するなどして、タイミングを見て円に戻す方法もあります。
債券の「1年後の利回り」を考える
さて、今回のお題は「1年後の利回り」です。1年後なので満期保有ではなく、米国債の場合は途中解約時の為替の影響次第で損益が決定することになりますので、注意が必要です。
しかし、今から1年ではそこまで円高が進むとは到底思えませんので、今の金利水準なら、米国債投資も「〇」です。
債券の価格は金利に大きく左右されます。米国であれば今後、金利が下がるという報道が多くなっているので、既存の米国債の価格は上昇し、これから発行される米国債の利回りは低下すると考えられますので、魅力はあると考えます。
同じ国債でも、日本国債と米国債の利回り差は4倍近くもありますが、為替リスクをどう考えるかで、投資のやり方は変わってきます。
まとめとして、債券の1年後の利回りと受け取る利息を種類別に見ると、
②国内社債……10,000円~(1%~)
③外国債券(米国)……30,000円~(為替考慮して3%~)
④ドル建て社債(米国以外も含む)……40,000円~(為替考慮して4%~)
という4つに分けられるでしょう。
国の経済状況が反映されたものが債券の利回りとなります。米国ではないドル建て社債なども含めて、それぞれのリスクと向き合いながら選んでみてください。
次回は、外貨預金について考えます。


















