1日で445万円の利益が得られた銘柄も

「80勝9敗1分」――。何の成績かお分かりでしょうか。

昭和の大相撲で「憎たらしいほど強い」といわれた横綱・北の湖は、1977年に80勝10敗で年間最多勝の栄誉を獲得しています。「そんな昔の話はピンとこない」という方は、白鵬を思い浮かべてください。2014年に81勝9敗の成績を残し、同じく年間最多勝に輝いています。「勝つのが普通で、負ければ座布団が飛び交う」くらいの勝率です。

しかし相撲に引き分けはありません。実はこれ、2018年のIPO投資の結果です。

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IPOとはInitial Public Offeringの略語で、自社の株を証券取引所に上場し、誰でも取引できるようにすることをいいます。ここでいうIPO投資とは、新規上場する企業の株式を公募価格で購入し、上場時に初めて付いた株価(=初値)で売却する投資手法のこと。2018年に上場した90銘柄のうち、80銘柄は初値が公募価格を上回り、その時点で売却すれば利益を手にできたというわけです。

IPO投資は勝率の高い投資手法として注目度が高く、IPO株を買うには、証券会社の抽選に当選する必要があります。人気銘柄は特に当選しにくいため、買いたい銘柄があれば複数の証券口座を開設してたくさん申し込むことがポイントです。

初値売りによる利益額が最も大きかったのは、人工知能(AI)を活用したサービスを提供する「HEROZ」(4382)。公募価格4,500円に対して4万9,000円の初値を付け、なんと1日で445万円の利益が得られました(4万4,500円×100株。国内の証券取引所に上場している株式はすべて100株単位で取引されるので、1取引単位当たりの利益は、初値と公募価格の差額の100倍となります)。

【図表1】2018年IPOの初値売りによる損益額トップ5

トラリピインタビュー

上場日 企業名(銘柄コード) 公募価格 初値 初値で売却
した際の損益
4月20日 HEROZ(4382) 4,500円 49,000円 4,450,000円
3月28日 アジャイルメディア・
ネットワーク(6573)
3,000円 15,470円 1,247,000円
3月27日 RPAホールディングス(6572) 3,570円 14,280円 1,071,000円
4月25日 ベストワンドットコム(6577) 4,330円 14,830円 1,050,000円
12月19日 Kudan(4425) 3,720円 14,000円 1,028,000円

もちろん、必ず勝てる保証はない

忘れてほしくないのは、どんなに強い横綱でも負けることがあるということ。IPO投資にもリスクがあり、2018年のIPO銘柄のうち、9銘柄の初値が公募価格を下回りました。そのうちのひとつが、12月19日に上場し、超大型IPOとして話題になった「ソフトバンク」(9434)です。

私の会社の社長にも「ソフトバンク株を買わないか」という話があったそうですが、規模が大きければ大きいほど、IPO投資のパフォーマンスは低調になりがちです。証券会社の営業担当者が顧客に向けて積極的に提案することはIPOの期待リターンが大きい背景にもなっていますが、不当に割高な価格でつかんでしまわないよう注意したいところです。

初値が高くなりやすいのは、公開規模が小さい銘柄や、マザーズやJASDAQなどの新興市場銘柄です。前者は供給に対して需要が大きくなりやすく、後者は成長期待が高いと評価される傾向があります。

もちろん、必ず勝てる保証はありません。勝率の高いIPO投資といえども、「応援したいと思える企業に投資する」という姿勢できちんと銘柄を選ぶべきでしょう。

【図表2】2018年IPOの初値売りによる損益額ワースト5

上場日 企業名(銘柄コード) 公募価格 初値 初値で売却
した際の損益
12月21日 自律制御システム研究所(6232) 3,400円 2,830円 -57,000円
12月21日 ポート(7047) 1,480円 930円 -55,000円
10月12日 Delta-Fly Pharma(4598) 4,770円 4,385円 -38,500円
9月28日 ワールド(3612) 2,900円 2,755円 -14,500円
3月23日 キュービーネット
ホールディングス(6571)
2,250円 2,115円 -13,500円

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