古来より人を魅了し続けてきた金。実物自体に価値を持つ金は「有事の金」とも呼ばれ、株式や債券とは異なる値動きをする投資対象として重宝されてきた。
そこで金の特長や投資方法の紹介と、それぞれのメリット・デメリット、長期投資への向き・不向きをご紹介しよう。
金の特長
金属としての金の特長は、「酸化しにくく、密度が高く、加工しやすい」こと。そして何より、英語の「Gold」がサンスクリット語の「輝く」を語源としているように(※1)、先史時代から聖書・古代エジプトの時代を経て現代まで、その妖艶な美しさは人を魅了してやまない。
とはいえ、どんなに美しい金属であっても、どこからでも産出されるのであれば価値は高くならない。金の価値を考えるうえで最も重要な点は、その「希少性」だ。
人類が掘り出して精製した金の総量(地上在庫)は2019年末時点で約19万トン(※2)。この量は長さ50mのオリンピックプールの約4杯分、日本の鉄鋼業界が約15時間で生産する粗鋼の量と同じでしかない(※3)。いかに金が希少性の高い、価値のある金属かがわかるだろう。
こうした「美しさ」、「希少性」、「保存のしやすさ」、「加工のしやすさ」という特長から、金は歴史上、価値の保存と権力の象徴として「貨幣」として重用されてきた。紀元前687年には現在トルコに位置するリュディアで初めての金の貨幣(エレクトラム貨)が鋳造され、大いに流通していたという(※4)。
その後、19世紀に確立した金本位制において、金は各国政府または中央銀行が発行する兌換紙幣の価値の源泉として保有された。1978年に金本位制が廃止されたのちも、各国政府・中央銀行は準備資産として金の保有を続けている。
金価格の値動きの特徴
金はそれ自体に価値があり、その価値ゆえに世界のどこでも換金できる。「有事の金」と呼ばれるように、政治・経済の混乱やインフレに強い資産として投資家に好まれてきた。
金価格の変動要因としては、①需要と供給のバランス、②米ドルの価値、③各国の経済動向、④各国の金利の状況、⑤原油等の資源価格、⑥地政学リスク、⑦多量に保有する政府・年金基金等の参入、などが挙げられる。
一般的には、例えばインフレによって通貨の価値が下落する場合、または地政学リスクが高まって米ドルを回避するような動きがある場合などで、金価格は上昇することが多いといわれている。
なお、金は国際的に米ドル建てで取引されることから、日本の投資家が日本円で金に投資する場合、国際的な金価格の値動きだけでなく、米ドル/円の為替相場の影響も受ける(円安になると国内金価格が上がる、円高はその逆)。
金に投資する方法
世界における確認可能な金現物への投資(金地金、金貨、金ETF設定のための貯蔵)は、2018年は982トン、金額に換算すると400億ドル(約4兆4千億円)。(※5)。
具体的に、個人投資家が金に投資できる方法を見てみよう。主なものとしては、①金貨・金地金、②純金積立、③投資信託、④金ETF、⑤金先物・CFDの5つある。それぞれの特徴やリスク等を以下にまとめてみた。
投資方法 | 販売会社 | 金現物の保有 | 盗難リスク | 業者の破綻リスク |
---|---|---|---|---|
金貨・金地金 | 宝飾店、地金商、金属メーカーなど | 可能 | あり | 保管方法によってあり |
純金積立 | 地金商、金属メーカー、証券会社、商品先物業者など | 可能 | なし | 保管方法によってあり |
投資信託 | 証券会社、銀行 | 不可 | なし | なし |
金ETF | 証券会社 | 一部可能 | なし | なし |
金先物・CFD | 証券会社、商品先物業者 | 不可 | なし | なし |
(東証マネ部!調べ)
それではここから各投資方法について、その特徴と長期での資産形成の観点からのメリット・デメリットを見てみよう。(東証マネ部!調べ)
[参考文献]
(※1)日本経済新聞社「ゴールド-金と人間の文明史」(ピーター・L・バーンスタイン著、鈴木主税訳)
(※2)Thomson Reuters「GMFS Gold Survey 2019」
(※3)日本鉄鋼連盟「全国鉄鋼生産高/全国鋼材生産高(2016年)」より算出。
(※4)岩波文庫「歴史 上」(ヘロドトス著、松平千秋訳)
(※5)World Gold Council「Latest World Official Gold Reserves(August, 2017)」