「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、お金の価値が目減りする「インフレ」がすでに進行している「教育費」について考えます。

  • 家計支出の中でも、インフレ傾向がより鮮明なのが教育費
  • 教育そのものに劇的な変化はなくても、少子化のために教育費が上がり続けている
  • 教育費はインフレ傾向が強くても、賃金はほとんど上がっていない

新型コロナウイルス感染症の陽性者の数が、日に日に増えています。
罹患された方と、そのご家族様にはお見舞い申し上げます。

ところで、筆者は第16回から第21回まで、積立投資について述べてまいりました。第12回では「私に合う投資って、どんな投資?」というタイトルで、ライフプランニング別の投資について、まとめた表を載せました。
その表の中に、「お子様の教育資金」という目的があります。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

本稿では、教育資金の準備について述べてみたいと思います。

教育資金……必要な時期と額の目安を確認しましょう

筆者は「教育費こそ、インフレの傾向が強い」という認識を持っています。
どういうことでしょうか?
その問いに対する答えの前に、教育費が必要となる時期と、必要な教育費の額の目安から確認してみましょう。

お子様がお生まれになったご家庭では、学資保険の検討をなさることと思われます。そして、学資保険の満期金を、お子様の大学などの資金に充てることをお考えになることでしょう。

ですので、学資保険の満期金受け取りの時期は、お子様の大学などのご入学時期に合わせると思います……。つまり学資保険の契約は、およそ17~18年後が満期になろうかと思います。

では、学資保険の額は、どのように考えればいいでしょうか?
よく参考にされるのが、生命保険文化センターなどの統計だと思われます。
下記のリンク先に、「大学生にかかる教育費はどれくらい?」というタイトルで、平成26・27・28年度の統計が載っています。

大学生にかかる教育費はどれくらい?(公益財団法人 生命保険文化センター)

が、お子様の大学進学は先述の通り、今からおよそ17~18年後です。
過去の統計に載っている金額を目安とした将来の教育資金の準備は、果たして十分なのでしょうか?

教育資金はインフレ傾向が強い

筆者はこれまで一貫して投資の必要性を説いているつもりですが、投資が必要だと考える理由は「世の中がインフレになる」ことです。連載第2回第3回で、インフレが起きる可能性について述べてきました。
インフレの影響は家計支出全般におよび、教育費だけに限ったお話ではありませんが、筆者は、家計支出の中でもインフレ傾向がより鮮明なのが教育費だと思っています。

【図表1】家計の主な消費支出の推移(1970年~2017年)
家計の主な消費支出の推移
※1970年の数値を100として指数化
出所:総務省「家計調査」より作成

図表1は、「家計の主な消費支出の推移」です。食費や教育費などの家計の主な消費支出について、1970年を100とする指数化したグラフです。これで、過去のインフレの傾向がつかめそうです。
図表1から分かることとして、インフレの傾向が最も現れているのは「教育費」ではなく「交通・通信費」ですね。

このグラフの「交通・通信費」に、自動車に掛かる費用が含まれるか否かはハッキリしませんが、もし含まれるのでしたら、車両価格やガソリン代の高騰が反映されているのかもしれません。自動車はハイブリッドカーや電気自動車が登場するなど、外観はともかく、技術が大きく変化しました。一方、通信の方も、1世帯に1台ずつあった固定電話がダイヤルからプッシュへ、そして携帯電話になると1人で複数お持ちの方もいらっしゃいますし、ガラケーからスマートフォンへと、所有形態も端末も目まぐるしく変わりましたね。
このように、「交通・通信費」は時代とともに、目に見える変化がありました。

では「教育費」の方は、いかがでしょうか?
「交通・通信費」の指数の伸びに比べれば、「教育費」の指数の伸びは半分ほどです。
が、「交通・通信費」に比べ、「教育費」には目に見える大きな変化があったでしょうか?

学習塾や個別指導塾などは、筆者の幼少期にもありました。
「今でしょ」の先生で知られる予備校も筆者の時代にもありましたが、当時は予備校といえば「金○カ先生」が一世を風靡していました。今と昔とでは先生の見た目は変わったかもしれませんが、どちらも同じ予備校ですし、授業スタイルも同じようですね。「我が子を大学に行かせたい」という親の気持ちも、昔から変わりませんし。
今ではスマートフォンを活用した学習方法がありますが、決して、お子様たちにとってはメインの学習方法のメインではなさそうです。それに何と申しまても、このコロナ禍で「教育はICT(情報通信技術)の活用が遅れている」ことがハッキリしてしまいました。

「教育費」に関しては、「交通・通信費」のそれに比べ、産業そのものには目に見える劇的な変化はなさそうです。

もし、ここまでに述べた筆者の考えが妥当だとしたら、目に見える劇的な変化がないにも関わらず、図表1の「教育費」の指数が伸びているのは驚異的といえるのではないでしょうか?
このことは「教育費こそ、インフレ傾向が強い」という筆者の考えが妥当である証拠にもなりそうです。

と申し上げても、図表1を見て「21世紀以後の教育費の指数は、むしろ下がっているのでは?」というご指摘をいただきそうです。

そこで、もう一つグラフがあります。

【図表2】子どもの数と一人当たりの年間教育費の推移(1970年~2017年)
子どもの数と一人当たりの年間教育費の推移
※「子ども1人当たり年間教育費」は、「一世帯当たりの教育費×全世帯数/18歳以下人口」で算出
出所:総務省「家計調査」「人口推計」「住民基本台帳」より作成

図表2は「子どもの数と一人当たりの年間教育費の推移」というタイトルのグラフです。子供1人あたりの教育費は、凸凹はありますが、21世紀に入ってからも上昇傾向が続いているといえるのではないでしょうか?

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