金融庁が2020年3月末時点のNISA(一般・つみたて)・ジュニアNISAの口座数や利用状況についての調査結果を2020年7月14日に発表しました。今回は一般NISAとつみたてNISAの年代別口座数、口座数の伸び、商品別買付額および年代別買付額それぞれの調査結果を確認し、一般NISA・つみたてNISAの選択のポイントについて考えます。

  • 一般NISAは50代以上、つみたてNISAは30~40代に人気
  • 一般・つみたてNISAともに、若年層の投資額が増えている
  • 短中期の値上がり益を狙うなら一般NISA、長期の資産形成ならつみたてNISA

一般NISAは50代以上、つみたてNISAは30~40代に人気

2020年3月末時点の口座数は、一般NISAが1,185万9,049口座、つみたてNISAが219万6,808口座と、一般NISAがつみたてNISAの約5倍になっています。この差は制度のスタート時期が、一般NISA:2014年、つみたてNISA:2018年であったことによる違いが大きいと思われます。

一般NISAの年代別口座数の比率は、60歳代21.7%、70歳代21.6%、50歳代17.2%、40歳代15.2%、80歳以上10.4%、30歳代10.1%、20歳代3.8%の順になります。

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一般NISAの年代別口座数比率
一般NISAの年代別口座数金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年3月末時点)」を基に編集部作成

つみたてNISAでは、30歳代40歳代が共に26.1%、50歳代18.2%、20歳代15.6%、60歳代9.3%、70歳代4.0%、80歳以上0.6%の順です。

つみたてNISAの年代別口座数比率
つみたて一般NISAの年代別口座数金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年3月末時点)」を基に編集部作成

年代別口座数は、一般NISAは50歳以上と高い年齢層の利用が多く、つみたてNISAが30歳代40歳代と比較的若い年齢層の利用が多いことがわかります。これは、非課税運用期間の長さ(一般NISA:5年、つみたてNISA:20年)と年間投資枠(一般NISA:120万円、つみたてNISA:40万円) が関係しているかと思われます。

一般NISAは20代、つみたてNISAは30代の利用が増加

直近3カ月(2019年12月末~2020年3月末)の一般NISA、つみたてNISAそれぞれの口座数の増加率をみると、一般NISAが1.0%増、つみたてNISAが16.2%増。増加率ではつみたてNISAが圧倒しています

一般NISAの全年代(20歳以上)の増加率は1.0%増です。それを上回った年代は、20歳代の4.7%増、80歳代の3.8%増、70歳代の1.4%増です。

トラリピインタビュー

一方、つみたてNISAの全年代(20歳以上)の増加率は16.2%増で、それを上回った年代は、30歳代19.4%増、40歳代16.7%増、50歳代16.5%増です。

つみたてNISAの年代別口座数の順位と年代別増加率の順位は一致しますが、一般NISAでは、年代別比率で最も低い20歳代(3.8%)の増加率が高くなっているのは意外な結果でした。

一般NISAでは個別株への投資比率が高い

次に、商品別買付額についてみていきます。一般NISAとつみたてNISAでは、購入できる商品が異なります。そのため一概に比較するのは難しいのですが、商品別買付額の比率にそれぞれのNISAを利用している人の特徴がでています。

(参考)一般/つみたてNISAで購入できる商品一覧
一般NISA 公募株式投資信託、上場株式、ETF、REIT
つみたて
NISA
投資信託のうち、金融庁が対象商品として認めた
インデックス型投信 157本、アクティブ運用投信等 18本、ETF 7本
計182本(2020年6月29日現在)

一般NISAの商品別買付額の比率は、投資信託55.7%、上場株式41.5%、ETF 1.8%、REIT 1.0%です。

一般NISAの商品別買付額比率
一般NISAの商品別買付額比率金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年3月末時点)」を基に編集部作成

つみたてNISAの商品別買付額の比率は、インデックス投信75.5%、アクティブ運用投信等15.1%、ETF0.02%になります。

つみたてNISAの商品別買付額比率
つみたてNISAの商品別買付額比率
※「不明」は、一部の調査対象金融機関において投資信託の商品別の計数を取得できなかったもの
金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年3月末時点)」を基に編集部作成

NISAといえば投資信託を活用して長期の資産形成を図るイメージがありますが、一般NISAでは個別の上場株式への投資比率が高くなっています。上場株式に投資するには、証券会社にNISA口座を作る必要があります。一般NISAは投資経験のある方も多く利用されているかと思われます。

また、一般NISA、つみたてNISAとも運用コストが公募株式投資信託に比べ安い傾向にあるETFの人気がないのは意外な結果でした。

ただし、一般NISAの直近3カ月の商品買付額の増加率では、全体が7.2%増に対してETFは15.9%増ともっとも高い伸び率を示しました。これは、直近3カ月の年代別増加率で20歳代が最も高かった影響かもしれません。

つみたてNISAの直近3カ月の買付額の増加率は、全体で25.5%増、インデックス投信28.2%増、アクティブ運用投信等17.6%増、ETF 17.2%増でした。こちらも、商品別買付額の比率に比べ高い伸びを示しています。ETFの認知が進んでいるのかもしれません。

一般・つみたてNISAともに、若年層の投資額が増えている

一般NISAの年齢別買付額の比率は下図の通り、60歳代が最も多く28.3%、以下70歳代22.2%、50歳代17.1%、40歳代13.7%、30歳代9.0%、80歳代以上6.9%、20歳代2.8%の順になっています。年代別の口座数比率では60歳代、70歳代はほぼ同率でしたが、買付額では60代の方が多く、かなり差があることがわかります。

一般NISAの年代別買付額比率
NISAの年代別買付額比率金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年3月末時点)」を基に編集部作成

ただし、直近3カ月の増加率では、30歳代8.8%増、20歳代8.4%増、40歳代8.3%増、50歳代7.7%増が平均の増加率7.2%増を上回り、若い人の買付額が伸びています。

つみたてNISAの年齢別買付額の比率は40歳代が最も多く28.7%、以下30歳代が26.6%、50歳代19.0%、20歳代11.7%、60歳代9.9%、70歳代3.7%、80歳代0.4%になっています。

つみたてNISAの年代別買付額比率
つみたてNISAの年代別買付額金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年3月末時点)」を基に編集部作成

直近3カ月の増加率は全体が25.5%増、20歳代28.2%増、50歳代25.9%増、30歳代25.7%増が平均を上回っています。つみたてNISAも若い人の利用が増えていることがわかります。

一般NISA、つみたてNISAそれぞれの良さがある

金融庁が発表した「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況表(2020年3月末時点)」を参考に一般NISA、つみたてNISAの特徴についてみてきました。

一般NISAの選択ポイントは、短中期での値上がり益を狙った個別株への投資が可能な点です。一方つみたてNISAの選択ポイントは、一般NISAに比べて長い20年の非課税運用期間を利用して長期の資産形成を行える点になります。

一般NISAとつみたてNISAの選択に迷った時にこの記事を参考にしていただければ幸いです。

2020年度税制改正によるNISA制度の変更点につきましては、第18回の記事「一般/つみたて/ジュニアNISAの変更点は?」にて取り上げていますのでそちら記事をご覧ください。

一般/つみたて/ジュニアNISAの変更点は?

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