資産形成のための金融商品にはいろいろあります。その中で、マンションやオフィスビルなどの不動産に投資できるのが「REIT(リート)」です。今回は、REITが実際に投資している不動産の種類とその特徴について紹介します。(著者/MonJa編集部、日興フロッギー編集部、Junichi Kato)
【REIT編 第1回】「不動産」に投資、魅力は分配金利回りの高さ
不動産の用途によって特徴は異なる
不動産といってもいろいろな種類があります。マンション、オフィスビル、商業施設、宿泊施設……。今では世界中のさまざまな不動産が、REITの投資対象となっています。近年では、病院や養護施設などの「ヘルスケア施設」に投資するREITが国内外で増えているほか、アメリカではデータセンターや森林に投資するREITもあります。
2020年10月末時点で、日本には62銘柄のJ-REITが上場しています。J-REITが保有するすべての不動産の内訳は、以下のようになっています。
62あるJ-REITが保有している不動産には、それぞれ特色があります。オフィスビルに特化したREIT、ホテルに特化したREITなど、特定の分野に特化して投資するREITもあれば、オフィスビルと住宅の両方に投資するタイプのREITもあります。
それぞれの不動産は、一般に以下のような傾向があり、REITの分配金利回りや値動きにも影響を与えています。
オフィスビル
企業が入居するビル。景気が良くなれば企業業績が上向き、賃料も上がりやすくなりますが、不景気になれば企業が退去して、賃料が得られなくなることもあります。景気変動の影響を受けやすいのが特徴といえるでしょう。ビルに入居する企業の契約期間は2年程度と短いことが多く、収益の変動が大きくなりやすい傾向が見られます。
商業施設
主に都心部で見られる、複数の店舗が入居する商業ビルのほか、郊外や地方都市の大規模なショッピングモールをまるごとREITが運営するケースもあります。一般的に長期契約が多いため、商業施設に入居する店舗からの安定的な賃料収入が見込めます。また、オフィスビルと同様に景気変動の影響を比較的受けやすいのも特徴です。
住宅
大規模な賃貸マンションの中には、REITが運営するものもあります。住宅はオフィスや商業施設と比べて景気動向に左右されにくく、安定的な家賃収入が見込めるものの、一般的に他の用途に比べて収益性が低い傾向があります。
物流施設
物流の拠点となる倉庫などもREITの投資対象となっています。物流施設は長期契約が多く、安定的な賃料収入が見込めるのが特徴です。ネット通販の利用の増加により、市場規模の拡大が見込まれるのも魅力。ただし、倉庫を利用するテナントが退去したときに、代わりのテナントがなかなか見つかりにくく、その間は収入が途絶えてしまうというリスクがあります。
ホテル
ホテルや旅館は、経営形態が「リース方式」の場合は、長期契約により安定的な収入が見込めます。一方でホテルならではのリスクも存在します。みなさんの記憶に新しいところでは2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、観光客が減り収益が激減してしまいました。
ヘルスケア施設
ヘルスケア施設とは病院や介護施設などのことです。J-REITでは病院、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅が投資対象です。今後も高齢者数の増加により、ヘルスケア施設の需要は高まると考えられます。
REITがどの物件を持っているかホームページでわかる
不動産は立地も大事です。私たちは賃貸住宅を選ぶとき、「駅から徒歩○分」「築○年」といった情報を頼りにしますよね。REITも同じで、たとえば同じオフィス特化型のREITであっても、どの地域でどんな物件を保有しているかによって、収益力に差が出てきます。
REITがどんな物件を保有しているかは、各REITのホームページで公開されています。調べ方はとても簡単。REITの銘柄名で検索すれば、「○○投資法人」のサイトがすぐに見つかります。サイトにアクセスし、「ポートフォリオ」のメニュー内にある「ポートフォリオ一覧」を選ぶと、REITが保有する物件名の一覧が表示されます。
誰もが知っているショッピングモール、有名な高級旅館チェーンなど、「実はREITが運営していたんだ」と驚いてしまう身近な不動産もたくさんあります。
J-REITの銘柄を選ぶ際は、過去の値動きや分配金利回りだけでなく、「どのような用途の不動産に投資しているか」に注目してみましょう。
「どの地域の、どんなビルや施設を保有しているか」ということを調べていくと、人気スポットや地域の経済状況等を知ることができ、投資のヒントになるかもしれません。REITが所有する物件に行ってみるのも良いかもしれません。REITを選ぶ時には、自分が行きたい場所なのかといった視点も持ちながら考えると、楽しく投資できそうですね。
次回は、アメリカやヨーロッパ、アジアなど海外のREITへの投資について考えていきます。
- REITが投資する不動産は、オフィスビル、商業施設、住宅、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設などさまざま。海外にはデータセンターや森林に投資するREITもある
- 景気に左右されやすいオフィスビルや商業施設、収益は比較的低いものの安定傾向の住宅、市場の拡大が期待される物流施設など、REIT投資の対象となる不動産にはそれぞれ特徴がある
- REITが保有する物件の一覧はホームページで確認できる。投資を検討する際は、過去の値動きや分配金利回りだけでなく、どんな物件を保有しているのか物件一覧も確認しよう
カエル先生の一言
REITの種類と投資対象不動産ごとの特徴を理解したら、どんなREITがあるのか、具体的に見てみよう。
(日興フロッギーより転載)