テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第40回は、ラジオ番組を中心に放送作家として活動している福本岳史さん。
ラジオの放送作家って、どんな仕事?
「放送作家」という肩書きを持つ人は、テレビの情報番組、バラエティ、ドラマなど、様々な場所で仕事をされていると思いますが、私は、主にラジオという世界で仕事をしている放送作家です。「ラジオって、出演者の人が自由にしゃべっていることが多いけど、放送作家は何をするの?」と思われる方もいらっしゃるのではないかと思います。
ラジオの放送作家は、オープニングがあって、リスナーさんからのメールを読んで、コーナーがあって、エンディングみたいな大きな流れを作るのが、主な仕事です。
あとは、打ち合わせで「どんな話をするか?」など相談に乗ったり、本番中はパーソナリティのみなさんと一緒にスタジオの中に入って、流れに合わせてメールを選んで渡したり。トークの中で出てきたことを調べて、横からメモを見せたりなどということをしています(トークがすべった時とかに「笑ってくださいよっ!」とツッコミを入れられるのも仕事のひとつ?です)。
ところで、ラジオって何人ぐらいで作っていると思いますか? 番組によって形は違いますが、私が担当している番組の中で、すごく少ない人数で作っているものだと、パーソナリティが1人、ディレクター1人、作家の私が1人、合計3人で収録しているというような番組もあったりします(予算が本当に少ない番組は作家も削られて、パーソナリティ1人、ディレクター1人ということも…)。番組によっては、たくさんスタッフのいる番組もありますが、少ない人数で作れちゃうのがラジオなのです。
少ない人数で番組を作るメリットのひとつは、意思疎通がしやすく、フットワークが軽く番組を作ることが出来ます。例えば、大雪が降ったある日の生放送。放送局に着いてからディレクターに「せっかくだから、オープニング、外からやりません?」「おっ、いいねぇ」のひと言で、2時間後に始まった番組のオープニングは放送局の玄関から中継で行っていたり(その時は一曲目をちょっと長めの曲にして、パーソナリティの方たちには曲の間にスタジオに戻ってもらいました)。
仕事の関係で出演者の方の1人が生放送開始のスタジオに間に合わないことになったら「本当はどこかでさぼっているかも? ラジオを聞いているみなさんから目撃例を募集します!」と急きょ大喜利の回答募集が始まったり。臨機応変に番組を作ることが出来るのもラジオの魅力なのです。
これはちょっと違うお話ですが、最近、廊下でプロデューサーとちょっと立ち話ぐらいな感じで打ち合わせをしていたら、スタジオの中で番組の収録が始まっていたというドッキリをされました。ディレクターとパーソナリティが示し合わせたようです。こういうことがポンッと出来るのも「ラジオ番組ならではかな?」と勝手に思っています(心臓がバクバクするぐらいビックリしましたが 苦笑)。
これからのラジオの形とは?
こんなことばかり書いていると「なんだか楽しそうなところで仕事をしているなぁ」と思う方もいらっしゃると思いますが、ラジオの世界は今なかなかのピンチを抱えています。予算が少なくなっているという問題です。
昨今、テレビ、ラジオだけでなく、YouTube、TikTokなど色々とメディアが増える中で、テレビの予算削減のお話は聞いたりすることもあると思いますが、ラジオ番組も同様な形です。これはここ最近ではなく、ラジオにとっては10年以上前から抱えている問題で、その解決法のひとつとして番組で予算を作り出す方式が取られているものも結構あります。
例えば、Tシャツやタオルなど番組グッズを作って販売したり、有料のイベントを行って入場料をいただいたり、有料会員の方のみが聞けるコーナーを作ってみたりなど。グッズなどは、ただ単に作って販売するのではなく、番組の中で「グッズを作りたいけど、どうする?」という会議をそのまま流して、リスナーのみなさんから意見をもらいながら、聞いてるみなさんと一緒に楽しむという感じのものが多いです。
こういう動きの副産物ではないですが、ラジオの放送作家である私が、番組テーマの作詞をしたり、番組本の編集をやらせてもらったり、番組発のキャラクターの物語を書かせてもらったり、いろんなことにチャレンジさせてもらっています。
スタッフの1人である私がそのようなものに関わるので、ラジオを聞いている人しかわからないフレーズをちょこっと入れて、リスナーのみなさんと共に「ニヤリッ」としたりと、そんな楽しみの機会をいただいたりしています(ただ、多くの人に買っていただけるものを作らなければならないので、制作中は必死なのですが)。
リスナーのみなさんと共に楽しめるラジオの世界を楽しみつつ、「ラジオが好き!」という人が増えればいいなぁと思っているので、もし良ければ、みなさんもいろんな楽しむメディアのひとつに「ラジオ」を入れていただけると嬉しいです!
次回は脚本家の羽田野直子さんへ、バトンタッチ!
是非聞いてください!
ラジオ番組発信で制作した『魔法少女りるりる』という魔法少女の物語のオーディオブック。構成作家の私、福本岳史が文章を担当。ラジオがきっかけで、1本の短編小説を書かせていただきました! ラジオ番組発信の本気の遊びをお楽しみください。
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。