年金を受け取る時期を遅らせれば、受け取る年金が増えて、老後の生活が楽になる。これが「繰り下げ受給」の効果です。年金制度に対する不安が叫ばれる中で、繰り下げ受給を希望する人が増えているといいます。

60歳を過ぎても働くことが求められる社会

「人生100年時代」という言葉を聞く機会が増えました。さまざまな立場の人がこの言葉を使い、そこにはさまざまな思惑が見え隠れしますが、すべてに共通しているのは「日本人の長寿命化に合わせて、社会のあり方を変えていく必要がある」という点です。
変化はすでに起きています。たとえば、かつては年金の受給開始年齢は60歳からでしたが、段階的に65歳に引き上げられています。2006年には高年齢者雇用安定法の改正で、60歳以上の高齢者の雇用確保が法律で義務づけられました。企業では定年の年齢を60歳から65歳以上に引き上げているところが、2018年で全体の18%程度とまだ少ないながらも、着実に増えています。
60歳を過ぎても働ける社会、別の言い方をするなら「60歳を過ぎても働くことが求められる社会」が、好むと好まざるにかかわらず近づきつつあります。

年金の繰り下げ受給で、受給額は最大42%増える

もちろん60歳を過ぎても、さらには65歳を過ぎても働くための気力と体力がある方にとっては、自身の生活と社会参加のために働き続けることも選択肢となります。その際にぜひ考えたいのが、年金の繰り下げ受給です。
国民年金と厚生年金は、支給開始時期を1カ月遅らせるごとに、支給額は0.7%ずつ増額されます。たとえば、65歳からちょうど1年後(12カ月後)の66歳に受給を始める場合は、0.7×12=8.4%の増額。5年後であれば0.7×60=42%となり、これが繰り下げ受給による増額の上限となります。

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繰り下げ受給を行った場合、受給期間が長くなればなるほど年金を受け取れる総額は増えます。70歳時点である程度の蓄えがあるのなら、年金を受け取らず70歳近くまで働いて、繰り下げ受給を行った方が有利といえます。
ただ、「人生100年時代」の到来に合わせて、年金制度も変わることが予想されます。政府からは年金受給開始年齢を68歳に引き上げる案や、受給開始年齢を70歳より先にできる案も出ています。法制度のあり方に応じて、自分にとって最もよい年金の受け取り方を選べるよう心がけたいものです。

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