2年程前に75歳で亡くなった私の父親は、母親と二人暮らしを続けていました。パーキンソンという認知症が進み、食べ物を口にすることができなくなったのが死をもたらした大きな理由です。

実は亡くなる5年ほど前から、食事がなかなか喉に通らないと愚痴をこぼしていました。それでも、本人は認知症を認めたがらなかったからか、歯の具合が悪いせいだと決めつけ、歯医者に通院していました(ちなみに、この時期にわざわざ、高いお金をかけてインプラントまでしていたようです)。
それでも、食事の量は減る一方で、気が付けば65kgの体重が50kgを割り込むまで減ってしまい、どうもおかしいと真剣に考えたというから、のんきなのか我慢強いのか……。

歩くことすらおぼつかない状況で、専門の病院で診察した結果がパーキンソンだったというわけです。格別な治療手段があるわけではなく、症状を和らげる薬が処方されただけでした。

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65歳以上の約5人に1人が要介護認定

食事は食べない。排泄に失敗する。廊下で転ぶ。歩けない。そんな父親と自宅で二人暮らしの母親は知らず知らずに、結構な介護をしていたと思います。その間、父親は介護保険の第1号被保険者として、毎月1万円近い保険料を支払っていたというのも、なんだか滑稽な話です。

結局、父親が介護申請をしたのは、症状が出て2年ほど経った頃です。地域のケアマネジャーさんに相談したところ、“よくこんな状態で、生活でしていましたね”と呆れ顔の様子でした。体重が30kg台になり脳神経科に緊急搬送され、要介護4と認定されました。

その頃には、だいぶ認知能力の低下が進んでいたため、胃へ直接、栄養を送る胃ろうという延命措置を取るべきかどうか、父親本人の判断では無理だと医者から言われました。父親は延命措置を望まなかったようですが、健常な頃に書面にしたためていたわけでもなく、悩んだ母親は、胃ろうにしてくださいと医者に答えました。それから亡くなる2年余りが、ほぼ寝たきりの施設介護となりました。

延命措置の判断は正しかったのか、母親と話をすることはあります。忙しさにかまけ、遠方の実家に帰る機会がほとんどなかった私には、反論する資格はありませんが、もっと以前に介護保険の申請をしていれば、違った生き方、暮らし方が両親にあったようにも思えてきます。

2015年4月時点で、65歳以上の介護保険第1号被保険者数に対する要介護(要支援)認定率は17.9%。約5人に1人といった割合です。数字だけでは実態が見えないのは、個々の状況が異なる介護を語る難しさでもあります。

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