本連載は、日興アセットマネジメントの研修機関「日興AMファンドアカデミー」による、銀行や証券会社などで働く投資信託の販売担当者に向けたセミナー講義の内容を採録したものです。
〈記事提供:日興アセットマネジメント

1000万円も、実は大したことがない?

さて、この表を見てください。私が60歳になった時の話としてイメージしてもらえますか。こんな感じです。

1%でまわしながら、20年間毎月引き出していくと……

1%の1カ月複利で運用しながら毎月月末に取り崩す計算。表示される結果は何らかの商品の運用成果などを約束するものではありません。また、手数料・税金等は考慮していません。

60歳で定年し退職金で住宅ローンを完済。手元にはそれまでの貯蓄と合わせて1,000万円ある。これは大事なお金だから増やそうなんて考えてはダメ。減らなきゃいい、減らなきゃ。したがって安全な銀行預貯金に置いておく。その上で毎月、銀行の店頭に行ってその1,000万円から定額を引き出していく。年金のプラスアルファということですね。さてその場合、いったい毎月どれくらい取り崩していけるのか。そういう表です。

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1,000万円のところを見ると「4.6万円」とあります。つまり4万6千円ずつ毎月引き出していくと、20年後にその口座の残高はゼロになるということです。ちなみに将来の預貯金金利なんて分かりませんから、とりあえず年利1%でまわしながらって計算にしておきました。
さて、この4.6万円ってどう思いますか?意外と少ないもんですね。いざ使うとなると、お金って意外と簡単に減ってしまうんですね。そう思いませんか。

取り崩し始めると、
お金は意外と簡単に減ってしまう。

もし本当に年金がダメになっていたら、この4.6万円で生活しなければなりません。私の計画では、住宅ローンは完済しているはずなので住むところの心配はないわけですが、4.6万円じゃ厳しすぎます。
でもこれって、結構ありそうなシナリオだと思うんですよね。自分が働き盛りの時は子どもにお金がかかる時期でもあって、なかなか貯金もできなければ住宅ローンの繰上げ返済も進まない。子どもが育ってホッと一息ついた時には、給料が上がらない年代になっていて、何よりリタイアまでにたくさん貯め込むための時間が残っていない、と。

リタイアになり、でも本当に1,000万円しかなく、そして皆が心配しているように年金がダメになってしまっているなら、この表のようになるってことです。もし年金が思ったより大丈夫だったとしても、孫に小遣いもあげられやしません。年に一度の奥さんとの海外旅行なんて絶対無理そうです。

本当に「減らなきゃいいのよ、減らなきゃ」なのか?

じゃあ3,000万円くらいあったら違いますかね。
銀行の人に聞いてみると、「お宅に3,000万円の定期預金があるでしょ。それでいいのよ、減らなきゃいいんだから。投信なんて変なもの勧めないで!」という方も少なくないそうです。3,000万円の定期預金をずっと延長してるだなんて、どれだけお金持ちなのよって思いますが、そういうお客様って意外といるんですかね。

でも、その大金の3,000万円があればもう安泰で、減りさえしなければ本当にいいのか、というと私は大いに疑問です。さっきの表で3,000万円のところを見ると、月13.8万円とあります。万が一いつか3,000万円を取り崩さねばならない事態になった時、どれだけ安心感があるかという観点からは、残念ながら「毎月13.8万円×20年間」では不十分ではないでしょうか。もちろん13.8万円は小さな金額ではないけれど、少なくとも「これで安泰!年金なんか無くても大丈夫!」と強がるには少ない金額ですよね。

「人生100年時代」なんて言われるようになった私たちにとって、リタイア後の「取り崩し原資」として考えた場合の3,000万円は、決して十分な金額でないことに気付きます。しかもですよ、将来の13.8万円が今と同じだけの価値があるかどうかっていうのも気になりませんか。そう、物価上昇、いわゆるインフレの話です。安倍首相になって以降、にわかに話題になり始めたインフレ。安倍さんたちが言ってるのは、年率2%ずつ物価が上がるインフレ状態を目指す、そうした「経済が温まっている状態」を目指すぞ、ってことですよね。なかなか上手く行ってないようですけど。

景気が良くなるのは結構なことですが、モノの値段が上がるのはいいことばかりではないとも言えます。だって今年ならこの13.8万円でテレビが買えるのに、将来は13.8万円じゃテレビの「台」しか買えないかもしれないってことですよね、極端に言えば。

将来同じモノが買えない可能性 = インフレリスク

第5回 若い世代にとっての資産運用への心構え
第3回 預貯金と投資信託の根本的な違い

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